明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
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私の幸せを支えているもの
松尾芭蕉
/
2020-08-05
芭蕉庵の制作にあたり、既に一体収蔵されている立像の高さを、芭蕉記念館に問い合わせている。すべてカンに頼って制作しているので、自分の作品のサイズは知らない。アイデアスケッチの類いを一切描かない私も芭蕉庵のおおよそのスケッチを描いた。身長158センチ前後、と設定し、人形の立像に合わせてサイズが決まるだろう。 父は工学部を出て、サラリーマン時代、船のイカリの設計をやっていた。ところが私はというと、誰かが笑わせようと画策したかのように、父とは何もかも正反対の人間になってしまった。算数など、こんなつまらない物が大人になって必要になるはずがない、と思っていた。小学1年のある日、計算が出来た人から廊下に出て答え合わせをする。という授業で一度だけ一番で廊下に出た。これが私の人生における数学上のハイライトであった。まだ加と減しかなく、乗除はなかった。何しろハイライトであるから木造校舎の匂いとともに鮮明に覚えている。 人形制作は、まず頭部を作り、それに合わせて身体を作る。ジャズ、ブルースシリーズの頃は、頭部の次に、それに合わせてまず楽器を作ったが、すべてカンに頼っていたために、ウエス・モンゴメリーに、オクターブ奏法をさせるはずが、ギターが大きすぎて、背後に立て掛けることしかできなかった。そう思うと、グランドピアノ作った時も万事その調子で、制作に数字が登場するのは始めてかもしれない。作るのが、かっての違う建造物だから仕方がないだろう。だがしかし、私に人並みな計算能力があったとしよう。100パーセント制作を続けては来られなかったであろう。そう考えると、私の笑顔は、計算能力の欠如が支えている、といっても過言ではない。いや笑顔どころか私の幸せを支えているのは、といっても良い。
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