午後はずっと図書館。横の高校生が何かを覚えるためであろう、ノートに鉛筆でもなく、机を爪でやたらと叩くので注意してあげた。ここは深川というごく狭い土地である、お前はそういう狭い所に暮らしているのだ、今のうちに覚えておけ。 夜になりT千穂。時間が早いのでカウンターにはまだKさんだけ。今日は早く帰るという。そういっていつもいくところまでいくのだが、ダメージがいまだ癒えていない様子である。それで良いのだ。 Kさんの小学生時代、お母さんと唯一写っている写真を受け取る。酔っ払って23針縫うことになったお母さんの命日。土葬を掘り起こした生の遺骨と一緒に汚い布に包まれ、皺くちゃになっていたのをYちゃんが私物の沢田研二だったかの写真を外して、プラスチックのケースにいれてくれたはずが、ケースはないし、さらにビリビリ。なにやってんだよ!といっても何も覚えていない。 このお母さんの顔の部分が欠けてしまった写真に、別の顔のカットを合成してあげようと思ったのに、これではさすがの私も、三島由紀夫をジェット戦闘機に乗せるくらい難しい。女将さんにセロテープを借りて、裏から貼っていると、視界の隅に、Kさんが女性からのメールをチェックしているのが目に入る。『貴様ァ』。あんたがカラオケで『無縁坂』を歌おうとして、まったく同じ状況だったと、出だしの“母がまだ若い頃 僕の手を引いて この坂を登る度いつもため息をついた ”までしか歌えないで泣くものだから、この唯一の写真を生かしてあげようと思ったのに,,,。ようし判った。あんたがそういう了見なら、完成した写真をまえに、カラオケで『無縁坂』をフルコーラス歌ってもらうからな!
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