夢千代日記

SHIMAちゃんの徒然日記・雑記

『息もできない』(韓国)

2011年01月29日 17時03分30秒 | Weblog
 冒頭から、タイトルどおりの“息もできない”場面だ。まさに息苦しい。そして、痛くて重い。
 韓国では、社会での学歴優位が著しい。日本以上の学歴社会だ。俳優は、大学で演技を学び、演出を志す者は、大学で演出を学ぶ。そんな環境が一般的というのは既に知られたところ。だが、この作品の脚本・監督・主演を務めたヤン・イクチュンは、そんなエリート教育を受けた人ではない。この物語は、彼が社会的に置かれた環境に基づいて描かれたもの。ヤン・イクチュンは、いわば、映画界の異端的存在だ。過去の自分と家族の関係。この事実と向き合わなければ、この先、彼は生きていけないと感じ、家を売って製作した。それが、結果的に韓国の社会が抱える問題を突きつけた。
 これも韓国映画の偽りない形。
 サンフンの父は、妻に暴力をふるい、それが原因でサンフンは母を亡くしていた。今は、借金を取り立てるチンピラのような生活をしている。全ての感情を暴力でしか表すことができない。
 サンフンは、あることから女子高生のヨニと出会う。ヨニは、母はすでに亡くして、戦争の体験で精神を患った父の面倒を見ながら高校に通っていた。弟は遊び呆けてばかりで手をやいていた。愛することを知らない男と、愛に飢えている女。そんな二人は、不器用ながらも心を通わせていく。
 だが、暴力は新たな暴力を生んでしまい…。
 この映画は去年の公開前から気になっていたが、観る機会を逸していた。去年のうちに鑑賞していれば、“マイベスト10”に入れていただろう。この濃厚な内容は、言葉にできない。心も体も痛くなるので、元気のあるときに観るのがオススメ。
(シネマート心斎橋にて2月4日までアンコール上映)

『僕と妻の1778の物語』

2011年01月29日 00時27分25秒 | Weblog
 ガンのため、余命1年と宣告された妻と、愛する妻の死に直面した夫。夫は、妻にできることを考え、たどり着いた答えとは…。『ねらわれた学園』などで知られるSF作家、眉村卓夫妻の実話に基づいた物語。
 SF作家牧村朔太郎の妻・節子は、妊娠したと思い病院に行くが、大腸ガンであることがわかる。余命は1年。思ってもいない医師からの宣告に、朔太郎は頭が真っ白に。
 しかし、「人は笑うと免疫力が上がる」という医師の言葉を信じて、1日1編の短編小説を毎日妻に送り続けることにする。
 真面目で不器用なSF作家・朔太郎には草なぎ剛。そんな夫を支える妻・節子には、竹内結子。節子の担当医には大杉漣。
監督をつとめるのはドラマ『僕の生きる道』シリーズの星護。ドラマのテイストそのままなので、ファンだった人にはお楽しみ。テレビ局絡みの作品はとっつき易くて、映画館に足を運び易い。美しい映像と独特の世界観が物語りの柱。
 しかし一方で“この作品は映画?テレビ?わざわざ映画にしなくても…”と思うこともある。この作品は、大仰ではない“いい話”。秀作。なのに、何かが足らないと感じるかも。思いは、人それぞれに違うだろうがスッキリしないのはなぜだろう。テレビドラマの世界観を踏襲していてことと、キャストに意外性がないからかもしれない。また、“第1778話”は、もちろん注目なのだけれど、ファンタジーすぎるかも。
 エンドロールは良い。本を読んでいるようでもあり、邦画の名残惜しさを感じる。朔太郎が節子に書く小説の実写部分は楽しむしかない。