福島県南相馬市の実在する映画館を舞台に、映画館存続に奔走する女性の姿を描いた作品である。タナダユキ監督のオリジナル
脚本で高畑充希が主演をつとめる。
福島中央テレビ開局50周年記念作品として2020年10月に放送された同タイトルドラマの前日譚となる。
100年近く、地元住民のための思い出となってきた映画館・朝日座。シネコンの出現という時代の波に逆らえず、支配人の森田保造
(柳家喬太郎)は閉館を決意。一斗缶の火に35ミリフィルムを入れ始めたころ、茂木莉子(高畑充希)と名乗る女性が東京からやっ
て来る。なぜ、大事なフィルムを焼くのか莉子は問い詰め、自分が朝日座を立て直すと言う。
恩師・田中(大久保佳代子)との約束を守りたい、そう話す莉子は映画館を存続させるためにあらゆるアイデアを出していくが…。
高畑充希は、インタビューなどで大久保佳代子さん史上最高の大久保佳代子と語っているが、本当にそのとおり大久保佳代子がと
ても良い。失礼ながら、地味目の雰囲気が一般人(教師)を演じる上で邪魔をすることがなく、語りかけられる言葉もあたたかい。
演じている風を吹かさないため、自然に耳に届く。
そして、やはり話題となる町の〝名画座〟のこと。映画のデジタル化とシネコンの波、さらにネット配信という潮流。次々とやっ
てくる便利なものに、〝名画座〟は姿を消していっている。フィルムが回る音
(フィルム映画のしくみについて大久保さん演
じる教師が主人公に説明する場面あり)、画面切り替え部分で右上端に差し込む光(何がいいたいかわかるかな?)と、フィルム
映画には特徴がある。〝名画座〟が町から無くなるのを寂しく思うのは、もう時代についていけないだけなのかもしれないが。
閉館して使われなくなったフィルムはどこへ行くのだろう??この映画のシーンのように、燃やされてしまう運命なのだろうか。
もったいないな、と思う。
冒頭からの伏線は最後に回収される。笑って、ほっこりして、ほろりともして、大がかりな仕掛けが全くない内容なのに気持ちが動く。
こんな映画が好きな人は好きかと思う。
莉子が語る本名と映画のタイトルがリンクする。
常連客に吉行和子、不動産屋の岡本には甲本雅裕。他に、光石研、竹原ピストルなどが出演している。