演技集団、シス・カンパニー公演。
安部公房の戯曲原作をドラマ脚本「俺のスカート、どこ行った?」の加藤拓也が演出した。
加藤は1993年生まれ。演出・脚本家で若手注目株の人物である。
独り暮らしの男の部屋に、ある日、見も知らぬ9人の家族がやってくる。彼らは親しげで笑
みを浮かべ、戸惑う男を気にすることもなく、
あっという間に部屋を占拠していく。
わけがわからない男は警察に連絡するが、被害が出ていないのだから何もできないといい、
婚約者に話すと知らない年ごろの女性もいて、
男の言うことが信じられないという。
さらに、弁護士にも相談するが自分も2ヶ月前からそういう状況にあり、最近はその状況
に慣れてきて〝そういうものなのだ〟と、逆に説得されてしまう。
仕事も辞めることになり、お金もなく、追い詰められていく男。
男の行く末はどうなってしまうのか?
戯曲のもとになっている短編小説「闖入者」に改訂版の戯曲も合わせて今回の上演作品と
なっている。「闖入者」は、ラジオドラマ、テレビドラマ化を経て「友達」というタイト
ルに変わり、67年に青年座で初演された。
昨年からのコロナ禍で、外に出られず家で1人の状況の人も多かったと思われる。誰かが
いれば、と思いながらもどこまで他人に家で受け入れられるのか。善意と悪意の境目は
どこなのか?
ユーモアと恐怖が交差する。長女と次女の対比もあり、そこに怖さを抱える。最後は衝撃
的だ。
安部公房スタジオ出身の浅野和之が祖母(祖父ではない)、父と母は山崎一とキムラ緑子。
長男を林遣都、次男は岩男海史、三男に大窪人衛。長女を富山えり子、次女は有村架純、
末娘に伊原六花。
男を演じるのは青年座出身の鈴木浩介。婚約者を西尾まり。弁護士は内藤裕志、警官は長
友郁真と手塚祐介、管理人を鷲尾真知子が演じる。ベテランの舞台俳優とテレビでお馴染
みの人気俳優が混じり、古典的で普遍的な物語がどう反応しているかが見物となる。
スピーディーに話が進みながらも、なんで今この題材?と思うがしかし、パンフレットを
読んで、観劇後に家族や友達の定義についていろいろ考えた作品。
9月3日から26日まで新国立劇場小劇場で行われたあと、10月2日から10日まで大
阪のサンケイホールブリーゼブリーゼでの公演だった。