2007年秋。
夫の転勤で息子とアメリカに住む長女・麻里(竹内結子)と一人暮らしをしている次女・芙美(蒼井優)のところに、今度の父・昇平(山崎努)の70歳の誕生日には必ず帰省するようにと母・曜子(松原智恵子)から連絡が入る。
昔のように、誕生日会をするが、娘たちは父親の異変に気づく。記憶が曖昧になっていき、徘徊をするようになって行く父親。
中学校校長も務めた厳格な父の変化にに戸惑いながらも、できる限り寄り添っていく。
そして、とうとうある決断をするときがやってきて…。
竹内結子と蒼井優という姉妹の関係がいい。離れて暮らしているのに、関わる方法ができすぎの姉妹ではあるが、忌憚なく話せる距離で軽くケンカができる仲。
認知症になって、3本の傘を持って遊園地に行く父親の行動には意味がある。この時の山崎努の存在感は特筆ものである。
認知症である父に相談したり、愚痴をこぼす娘たち。ただ聞いてくれる。この心強さは、後期高齢の母を持つ姉妹には「わかるわー」の心境であるはずだ。
ほのぼのするだけ、悲しいだけを描いている映画ではない。リアルな今の、これからの日本の生活を見ているようである。身につまされる。
エンドロールに最初に流れるのは蒼井優。カフェ経営が夢である女性を演じる。セリフを言っているのに、セリフでない気がするのが、この女優の凄さと感じる。
原作は中島京子の同名小説。監督は『湯を沸かすほどの熱い愛』で絶大な評価を受けた中野量太。アメリカでは、認知症のことを〝長いお別れ〟とも言うとのこと。
徐々にお別れの時が近づいていくこと、心の準備をしておいてくださいと言われているようだ。