GetUpEnglish

日常よく使われる英語表現を毎日紹介します。毎日日本時間の午前9時までに更新します。英文執筆・翻訳・構成・管理:上杉隼人

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毎日更新! GetUpEnglish Updates Every Day! Since April 1, 2006 (c) 2006-2024 Uesugi Hayato(上杉隼人)

The Sea I Want to Go Before I Die

2020-12-05 08:09:46 | S

  岸本佐知子さんの翻訳もエッセイ集も大体買って読んでいるが、新しいエッセイ集『死ぬまでに行きたい海』が刊行されたので、早速書店で購入、楽しく拝読している。

 この人の文章はここでも紹介した。

 https://blog.goo.ne.jp/getupenglish/e/86bd6c367f4b700312123c1626d5e0fb

 岸本佐知子のエッセイは日常の何気ない出来事を取り上げながら、随所に事実と妄想と笑いが巧みに織り交ぜられ、気がついたら岸本ワールドに連れ去られてしまい、もう戻ることはできない。だが、岸本が訳す小説と同じで、時折現実感を強く感じさせるもの悲しさを見せられることがあって、気持ちが和む。

 今回もそんなキシモト・ワールドが存分に楽しめるものとなっている。

この本についてはいろんな人がいろんなところで楽しいことを言うだろうし、わたしもみなさんの楽しい感想や書評を見るのが楽しみだが、本日のGetUpEnglishはキシモト・ワールドを英語にしたらどうなるか考えてみたい。

 今回も『MONKEY NEW WRITING FROM JAPAN VLUME 1 2020収録のTed Goossen訳「三崎」を見てみよう。

「三崎」は岸本さんたちが「飲み合宿」に出かける話だが、以下の部分がそうだ。

 去年、酒合宿は開かれなかった。特に理由があるわけではなかった。なんとなくこのまま終わるのかもしれなかった。それともまた何事もなかったかのように復活するのかもしれなかった。酒でつながった私たちだから、どんなふうになってもいいし、ならなくてもいい。

Our drinking excursion was canceled last year. There was no particular reason. Perhaps we’ve reached the end of the line. Or. perhaps we’ll pick it up again later.  Since our common bond is drinking, it’ll be fine if we continue it and fine if we don’t.

  日本語と同じくらいすごくわかりやすく訳されている。

 end of the line(行き詰まり、終わり)はぜひ覚えておきたい。次のように使われる。

○Practical Example

 This business has come to the end of the line.

 この業界はもう行き詰まっている。

 our common bond is drinkingというのはすてきな表現だ。酒は悪いものではない。飲めなくなるとよくわかる。

 どれかの年、夜、散歩に出たら流れ星がたくさん流れた、「あ、流れた!」「あ、また!」と何度も声が上がり、でも私はそのたびによそ見をしていたり酒を飲んでいたりして見逃した。でも最後にやっと一つだけ見えた。すごく大きく、長く尾をひいて消えた。何か願い事をしたのか、しなかったのか、酔っぱらってそれどころではなかったのか、思い出せない。

One year(I can’t recall exactly when), we were out for a stroll on a night when there were lots of shooting stars, “There’s one!” “There’s another!” People exclaimed, but I missed them all. I guess I was looking elsewhere or was just too smashed.  Finally, at the end, I saw one.  A really big one, with a long tail. Did I make a wish or not, or was I too drunk to even try?  I can’t remember.

 岸本さんの楽しいエッセイを英語教師がどっとつまらなくしてしまうのは恐縮だが、このsmashedは俗語で「べろべろに酔った」の意味で使われる。

 状況によっては「 《麻薬で》ラリった」の意味でも用いられる。

 信頼厚きUrban DictionaryにはAxel Roseのこの発言が用例として示されている。

 https://www.urbandictionary.com/define.php?term=smashed

 "A lot of people up here are getting really fucking smashed. I've seen like four people carried out in front of me and the show just fuckin' started" - Axl Rose

 もうおわかりかと思うが、岸本さんのエッセイは、つまらない英語教師の英語の講釈を聞くより、ひたすら楽しく読むのがいちばんだ。

『死ぬまでに行きたい海』(最後にうるさい英語教師がもうひとつだけ、これを英語にすれば、The Sea I Want to Go Before I Dieと今のGo Toを意識した言い方にできる)をぜひお楽しみいただきたい。 

 

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