何年か前から英語のテスト問題を書く仕事もしている。最初はネイティブ・スピーカーの著者の仕事を手伝っていたのだが、まずは日本人のわたしが書いて、それを直してもらうのが効果的な分業体制であると思うようになった。
英検、TOEIC L&R, TOIC SW, TOEFL iBT, IELTS, TEAPなど、あらゆる試験を定期的に受けている。どれも非常によくできた試験だ。
たとえば、TOEIC L&Rの試験は、英語を論理的に読む、翻訳する上でも大変役に立つ。
On Friday, April 14, the city hall’s electricity is scheduled to be shut down at 8 A. M and restored at 5 P.M. The building (131-------) for the day. During the power outrage, the emergency lighting system will be upgrade. (132---------), all circuit panels will be replaced to bring them into compliance with current safely codes.
Part 6の問題、それもこのセクションでいちばんやさしい問題だが、構文判断力、語彙力をとらえるうえで、よくできている。
- (A) has closed
(B) closing
(C) will close
(D)was closing
- (A) in that case
(B) Regularly
(C) Rather than
(D) Specifically
131は問題なく(C) will closeを選べばいいが、132は前の文の
During the power outrage, the emergency lighting system will be upgrade. (停電のあいだ、緊急照明システムがアップグレードされます)
を一読で理解したうえで、
all circuit panels will be replaced to bring them into compliance with current safety codes.(すべての分電盤は現在の安全基準に従って交換されます)
とあわせて、 (D) Specifically(特に)を選ばなければならない。
(in)compliance with(…に従って[応じて])[英和大]は、動詞comply withとあわせて覚えておこう。GetUpEnglishで2008-08-21に学習した。
https://blog.goo.ne.jp/getupenglish/e/82532970343324c60e42e4788291dfe7
990点満点を取るとなると、これを10秒もかからずに判断しなくてはならないだろう。
英語のテストというのは、書いてみてよくわかるようになったが、ひとつの問題を解くうえで、いくつかの構文や語彙の理解を問う仕掛けを作る必要があり、それがすべて理解できないと正解が出せないようにできている。
よって、受験者もあらゆる方向から語学力を問われるわけだ。
よく翻訳に英検やTOEICなどの試験は必要ないと言う人がいるが、わたしはそうは思わない。どんな試験も受けることで、構文の瞬時の理解、速読力アップ、語彙力増強を含めて英語力の底上げがはかれる。翻訳者はいうまでもなく、トライアルなどで翻訳者の適性を判定する側の者も受ける必要があると思う。
ライティング、スピーキングの試験を受けることももちろん大切だ。この学習をつづけることで、安定したアウトプット能力を身につけるにはリーディング、リスニングのインプットが必要だとわかるはずだから、さらに英語学習に真剣に取り組めると思う。
自分の仕事の質を高めたいと思うのであれば、まずは試験を受けて自分の現在の力をはっきりと見つめて、改善をはかろうとするのが当然ではないだろうか?
わたしの場合は、英日翻訳に加えて、日英翻訳、英文ライティング、インタビュー、インタビューの音声起こしなどの仕事もあるので、あらゆる方面の英語力が必要だ。すべて強化しなくてはならない。
コロナ禍でしばらくテストが受けられなかったが、ふたたび受けられるようになってうれしい。特にTOEFL iBTは自宅でも受けられるからありがたい。
今後も英語の試験を定期的に受けて、さらに英語力(リーディング、リスニング、ライティング、スピーキング)、翻訳力(英日、日英)の向上をはかりたい。
『桐生タイムス』の連載エッセイ「永遠の英語学習者の仕事録」の第1回が同紙2021年4月24日号に掲載されました。
http://kiryutimes.co.jp/announcements/28050/
こちらでPDFがダウンロードできます。
http://kiryutimes.co.jp/uesugi/
第1回目は、『最後のダ・ヴィンチの真実 510億円の「傑作」に群がった欲望』(集英社インターナショナル)について書きました。
2017年11月、クリスティーズの競売において、一枚の絵が日本円にして約510億円の驚愕の値段で落札された。美術史上最高額の値が付けられたこの絵は本当にレオナルド・ダ・ヴィンチのものか? 美術評論家でドキュメンタリー作家である著者ベン・ルイスは大がかりな調査に乗り出し、答えを出す。詳しくは『最後のダ・ヴィンチの真実』をご覧いただきたいが、翻訳にあたってはこれまで経験したことのないいくつもの困難にぶつかった。だが、同時に計り知れないほど多くのことを学ぶことができた。