鳩山も平野も「負担軽減」を移設の伝家の宝刀としているが、沖縄にとっては迷惑な刀でしかない

2010-05-25 04:58:00 | Weblog

 鳩山首相も平野官房長官も、米軍普天間飛行場の県内移設の正当化口実に何かと言うと、「負担軽減」、「負担軽減」と言って、それが沖縄の利益を叶えさせる伝家の宝刀であるかのように「負担軽減」を振り回しているが、前日のブログでも、〈選挙中に言っていた「国外、最低でも県外」のゼロに向けた「負担軽減」から見た場合、「軽減」が逆にゼロから計った方が近い後退形を取っている。〉と書いたように、二人が言っている「負担軽減」が沖縄にとって沖縄の利益に適う「負担軽減」ではないことに留意できていない。

 いわば政府からしたら県内移設を基準とした「負担軽減」を頭に置いているのに対して、沖縄からしたら、県外移設を基準とした「負担軽減」を念頭に置いていて、そのミスマッチに気づかずに「負担軽減」をさも有難いおまじないであるかのように振り回している。

 逆説めくが、政府の県内移設を基準とした「負担軽減」は沖縄から見た場合、県外移設の「負担軽減」と比較したとき、必ずしも沖縄の利益とはならない「負担軽減」だと言うことである。

 その基準を誘い込んだのは鳩山首相の「国外、最低でも県外」なのは断るまでもない。鳩山首相にしても平野官房長官にしても、今後とも「負担軽減」を振り回していくことになるだろう。負担軽減を図るんだから、それでいいじゃないかと、「負担軽減」=沖縄の利益とばかりに押し付けがましい態度さえ見せながらである。

 二人の「負担軽減」発言を拾ってみる。

 《首相 社民党に理解求める》NHK/10年5月24日 21時5分)

 〈社民党が名護市辺野古への移設に反発を強めていることについて〉――

 鳩山首相「3党の合意に反しているわけではない。3党合意では、沖縄の負担軽減を申し上げており、8か月間、できるかぎり負担軽減をしたいと努力してきた。これからもさまざま図っていきたい。これは、福島党首にも、しっかり申し上げなければならない」

 鳩山首相が選挙中に言っていたのは「国外、最低でも県外」の「負担軽減」だったのである。そのことに反して県内移設の「負担軽減」を得々と言っている。沖縄にとっては「最低でも県外」移設でなければ、「負担軽減」ではないことに気づかないから、このような発言となる。

 鳩山首相「移設先の検討に時間がかかったことや、国民に不信感を与えたことは、正直におわびしなくてはならない。現行案に戻る話ではなく、環境への配慮や住民の安全、それにアメリカ軍の運用上の問題が満たされるものを見いだしていった結果、辺野古周辺となった」

 「最低でも県外」を求めている沖縄住民にとって、理解不能・意味不明の発言であろう。シュワブ沿岸部としたことが「現行案に戻る話」ではないとしても、自民党政権が現行案とした辺野古への回帰と取られることを避けたいと拘っているのは鳩山首相一人だけで、沖縄からしたら、県内であることに何ら変わらない。

 いわば鳩山首相が「現行案に戻る話」ではないと大きな問題としていることと、沖縄が大きな問題としていることの決定的な違いをこの発言に見ることができる。

 〈移設先との合意よりも、日米合意を優先しているとの指摘が出ていることについて〉――

 鳩山首相「私どもの思いは同時に伝えてきており、決して日米先行ではない。沖縄の仲井真知事を中心に、私どもとしての考えは随時伝えてきた」

 ところが仲井真知事は23日の沖縄県庁での鳩山・仲井真会談で次のように言っている。

 仲井真県知事「私ども、総理が5月4日にお見えいただいて、そのときに普天間の飛行場の件が一部県内の負担といいますか、残るだろうというような趣旨のご発言を、私は直接はうかがってなかったんですが、報道その他でお聞きをいたしました」

 (《【首相・沖縄県知事会談詳報】(上)「言葉守れず、お詫び申し上げる」》MSN産経/2010.5.23 18:42)

 仲井真知事の報道等を通してしか聞かされていなかったという発言はこれが初めてではなく、何度か言っている。

 〈去年の衆議院選挙で「最低でも県外」と発言していたことについて〉――

 鳩山首相「自分の発言の重さを感じながら、できるかぎり、それに沿うように努力してきた。意に沿わないことがあったことも率直に認めなければならないと反省している」

 「最低でも県外」の「負担軽減」を振りかざしたのである。いわば普天間移設に関しては負担ゼロを約束した。それができなかったのだから、県内移設で「負担軽減」を言うべきではない。「県外」から県内へ変えることによって、ゼロから逆のプラスへ負担を転じたのである。そこから何がしかの負担軽減を図ったとしても、沖縄県民から見た場合、大きな負担が残ることに変わりはない。

 勿論、鳩山首相は札幌市の民主党の会合に公邸からのテレビ中継で、「沖縄の皆様にもこれからもしばらくご負担をお願いせざるを得ない状況だ」と挨拶しているし(《普天間移設:シュワブ沿岸、日米合意 工法は9月に先送り》毎日jp/2010年5月23日 2時43分)、他の機会にも同じ趣旨のことを発言しているが、「国外、最低でも県外」の違約によって生じせしめることとなる「負担」である以上、いわば自分で撒いた種(=「負担」)を自分で刈り取る(=軽減する)独り相撲の「負担軽減」なのだから、自分の愚かさに鞭打って事に当たるべきを、「8か月間、できるかぎり負担軽減をしたいと努力してきた。これからもさまざま図っていきたい」と言っていることからも分かるように、県内移設の「負担軽減」を以ってして、それが沖縄の利益であり、移設問題での自らの任務であるかのように正当化を図ろうとしているのみである。

 平野官房長官も鳩山首相と同じく、県内移設での「負担軽減」を以ってして、それが自分たちの正当な任務であり、沖縄の利益だとしている。

 《官房長官 政権合意に反しない》NHK//10年5月24日 14時8分)

 平野「沖縄の負担軽減が、実質の成果として上がれば地元の理解は得られると思うし、この6か月の間でぎくしゃく進めてきたことが、沖縄県民にとってもプラスになる結論を導きたい」

 確かNHKテレビでは、「負担軽減とならなければ、了としない」とか言っていた。

 平野にしても、沖縄住民が「最低でも県外」の「負担軽減」(=負担ゼロ)を「実質の成果」として求めていることに気づかずに、県内移設での「負担軽減」を「実質の成果」と看做している。この鈍感さは呆れるばかりである。

 少なくともそのことを認識して交渉に当たるべきを、認識すらしていない。

 〈社民党が、今回の対応に反発を強めていることについて〉――

 平野「連立政権だから、鳩山総理大臣の思いを理解してもらうべく、ていねいに説明をする。あらゆる場面を通じてお願いをしなければならない。・・・・われわれとしては、連立を組む際の3党合意に基づいて、基地問題にも対応してきたつもりだ。重要なテーマであることは否定しないが、連立政権を発足させた際の構成要件には入っていない」

 繰返しになるが、沖縄が求めている「実質の成果」、沖縄の利益とは普天間基地機能の「国外、最低でも県外」であって、このことは4月35日の9万人の県民が結集した4・25県民大会や5月15日の本土復帰38周年平和集会、その他の集会・大会で主張されていたことであり、あるいは名護市長選挙で民意で示されたことであって、沖縄が求めている「実質の成果」、沖縄の利益に反して「国外、最低でも県外」の約束を破って県内移設にシフトした。例え訓練の一部を県外に持っていっていったとしても、滑走路を環境型工法で建設しようと、それは「負担の軽減」ではなく、負担ゼロからプラスとなる逆行を強いることでしかない。

 この認識がないから、平野官房長官は「沖縄の負担軽減が、実質の成果として上がれば」とか、「沖縄県民にとってもプラスになる結論」だといったことが言える。あるいは、「負担軽減」を沖縄の利益だとして振り回すことができる。

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