野中広務が暴露した国益とは名ばかり、党利党略の使途を担った裏金類の官房機密費

2010-05-06 08:05:34 | Weblog

 次の衆議院選挙で政権党を決めることとして、それまで国の政治を不安定とする衆参ねじれは阻止されるべき
 
 【裏金】「取引や交渉をうまく運ぶために表立たないで相手に渡す金銭」(『大辞林』三省堂)

  あのウソつき名人が顔に現れている平野官房長官が2009年11月19日の記者会見で、鳩山内閣発足の9月16日以降、2回にわたり計1億2000万円の官房機密費を内閣府に請求、受け取っていると公表している。《“官房機密費 1億円余請求”》 NHK/09年11月19日 12時20分)

 平野「私の名前で、ことし9月と10月に官房機密費をあわせて1億2000万円を請求したことは事実だ。使いみちについては、必要があれば支出することになるが、私が責任を持って適切に判断している」

 「私が責任を持って適切に判断している」と言っているが、信用できない人間が言っていることだから、“適切な判断”がどのくらい“適切”なのか、限りなく信用できない。

 言っている言葉通りなら、使途が決まっているわけではないのに1億2000万円を用意したことになる。いわば9月と10月に続けて請求して合わせて1億2000万円を受け取り、内閣発足以来2ヶ月が経過しているにも関わらず11月19日現在何ら支出せずに手元に置いている。わざわざ断るまでもなく、「必要があれば支出することになるが」とは、支出の必要がなかったということだからだ。

 鳩山内閣が9月16日に発足して2週間程残ったその9月の間と翌月の10月に合計して1億2000万円もの大金を官房機密費として請求、受領し、2ヶ月経過後も手付かずのままにしている。

 緊急の必要に備えているのだと言われればそれまでだが、何も支出していないとはかなり疑わしい。未支出が事実だとしても、1億2000万円という金額に相当する備えは、何と何と何にといった具合に頭に描いていたはずだ。必要に応じてではなく、必要に備えて預金を下ろすなり資金を用意する場合は、誰にしたって必要と考えた用途に対応した金額を弾き出すはずだからだ。月5万円で生活している者が次月の生活資金に備えて預金を下ろす場合、10万も下ろすはずはない。

 用途を頭に描き、必要だろうと弾き出して請求、受領した合計が1億2000万円。それを、「使いみちについては、必要があれば支出することになる」と後付のこととしているのはやはりどことなく胡散臭い。支出したと言えば、では、何に使ったのかと追及されることになるから、それを避ける目的の「必要があれば支出することになるが」の可能性も疑えないことはない

 平野は支出した場合の公表の有無を問われて、次のように答えている。

 平野「先方があることであり、適切な情報提供を受けることができなくなれば、政府の活動に障害が出て国益を損なうおそれがあるので、慎重に対応したい。総理大臣官邸や政府の運営を、1年を通じてしっかり見たうえで、公表すべきかどうかを含めて対応する。不透明だと言われるかもしれないが、シビアな判断を求められるという認識の下で対応したい」

 要するに官房機密費の支出目的は「国益」を目的とした情報収集だとしている。公表した場合、「適切な情報提供を受けることができなくな」って「政府の活動に障害が出」るケースも生まれ、「国益を損なうおそれ」が生じるから、公表は「慎重に対応したい」

 ところが、自民党でかつてドンと言われた、現在は議員を引退している84歳の野中広務が都内で記者団に暴露した官房機密費の使途はとても“国益”を目的としているとは言い難い、それから離れた程度の低い使途となっている。

 《野中広務氏「官房機密費、毎月5千万~7千万円使った」》 asahi.com/2010年4月30日21時42分)

 小渕内閣で1998年から99年にかけて官房長官を務めていたときの経験だという。

 野中広務「毎月5千万~7千万円くらいは使っていた」

 この金額は平野官房長官が9月と10月の2ヶ月間で合わせて請求、受領した1億2000万円の月平均額になぜかほぼ符合する。

 支出の内訳は、〈首相の部屋に月1千万円、野党工作などのため自民党の国会対策委員長に月500万円、参院幹事長にも月500万円程度を渡していたほか、評論家や当時の野党議員らにも配っていた〉と野中広務の話を元に記事は書いている。

 野中「前の官房長官から引き継いだノートに、政治評論家も含め、ここにはこれだけ持って行けと書いてあった。持って行って断られたのは、田原総一朗さん1人」

 無節操に誰とでも話を合わせ、簡単にヨイショする田原総一郎が断ったとは意外である。喉から手が出かかかっていながら、いいところを見せようとジッと我慢したのかもしれない。それにカネに不自由しているわけではないだろうから。

 野中「政治家から評論家になった人が、『家を新築したから3千万円、祝いをくれ』と小渕(恵三)総理に電話してきたこともあった。野党議員に多かったが、『北朝鮮に行くからあいさつに行きたい』というのもあった。やはり(官房機密費を渡して)おかねばという人と、こんな悪い癖がついているのは絶対ダメだと断った人もいる」

 記事が、〈与野党問わず、何かにつけて機密費を無心されたこともあった〉こととして書いた野中の暴露発言である。

 新築祝いに3千万円を要求できる家の建築費は3千万円を遥かに上回る金額でなければ、要求できまい。また、いくら3千万円が新築祝いにふさわしい金額であったとしても、新築祝いにと要求されるとは官房機密費も足許を見られたものである。官房機密費がその程度の使い途(つかいみち)にしかされていないという認識が双方にあったからこそ請求できたのだろう。まさしく“国益”に見事に適う要求だったとも言える。
 
 野中は暴露理由を次のように話している。

 野中「私ももう年。いつあの世に行くか分からんから。やっぱり国民の税金だから、改めて議論して欲しいと思った」

 記事は最後にこう解説している。〈鳩山政権では、平野博文官房長官が官房機密費の金額を公表しているが、その使途は明らかにしていない。野中氏は「機密費自体をなくした方がいい」と提案した。(蔭西晴子) 〉――

 かく野中広務が暴露したこのような官房機密費の使途が平野官房長官が言っている「国益」を目的とした情報収集に合致しているのだろうか。元々政治三流国と名誉ある称号を頂いている日本の政治態様なのだから、上記これらの使い道が“国益”に相当する政治行為だったとこじつけることができないことはない。

 多分、平野官房長官は民主党は自民党とは違うと言うだろうが、鳩山内閣発足翌日9月17日に記者会見で平野官房長官は記者から官房機密費について問われて次のように正直に答えていることからすると、とてものこと、どう逆立ちをしても自民党とは違うとは言えなくなる。

 平野「そんなのあるんですか。全く承知していません」

 官房機密費が国会対策や野党対策に使われていることが公然の秘密となっていて、色々と問題が生じていたことと1993年から1999年まで外務省要人外国訪問支援室長を務めていた松尾克俊が10億近い官房機密費を流用して4頭の競馬馬の購入やマンション購入に流用していた事件を受けて民主党は2001年7月に『機密費の使用に係る文書の作成、公表等に関する法律案』、略称(機密費流用防止法案)を提出、廃案となっている。

 それを国民の僕(しもべ)平野某は正直に「そんなのあるんですか。全く承知していません」と言える。平野が「民主党は自民党とは違う」と言ったとしても、その正直さから見て、果してそのとおりだと言えるだろうか。

 野中が機密費の使途の一つに首相の部屋に月1千万円と挙げているが、高市早苗自民党衆議員の「首相夫人が『麻生太郎前首相が入った風呂には入りたくない』という理由で、内閣官房報償費(官房機密費)から約1千万円支出して風呂場の改修工事が行われた」の事実関係の真偽を問う質問書に対して、鳩山内閣は今年2010年2月23日に 鳩山首相夫妻が首相公邸入居にかかった経費は、内装補修約218万円、就寝用の和室の床改修などで約195万円、洗濯乾燥機2台の購入などで約61万円、計474万円、「内閣官房共通費」の「各所修繕」「首相官邸業務庁費」からの支出で、「浴槽の清掃が行われた事実はあるが、『公邸の風呂場改修工事』の事実はない」とする答弁書を閣議決定している。(《首相公邸への入居費用474万円 「風呂場の改修なし」》asahi.com/2010年2月23日13時53分)

 ところが、平野官房長官は3月11日になって、474万円ではなく、+「点検・清掃・クリーニング費」281万円の合計694万円だと訂正している。474万円+281万円=694万円を成立させるために洗濯乾燥機2台の購入等の約61万円を抜かしたらしい。首相辞任の際は個人用として持って帰るということで自費支払いにまわしたということなのだろうか。

 《首相、公邸の「点検・清掃・クリーニング」に281万円》asahi.com/2010年3月11日23時11分)

 この訂正は、〈鳩山氏以前の自民党の3首相については「清掃費」なども合算して公表していた。〉からだという。3首相の〈入居費の総額は、安倍晋三元首相は222万円、福田康夫元首相は282万円、麻生太郎前首相は382万円。〉だと記事は書いている。

 このような慣例に反して鳩山首相の入居に「清掃費」を抜かしたことの説明を平野は次のように話している。

 平野「(鳩山氏の費用については)工事費についていくらかという質問主意書だったから、その部分の数字を(答弁書で)答えた」

 どのような工事であっても、特に住居となると、清掃は工事の最後に行われる欠かすことのできない、工事に付帯した最重要の工程である。当然、工事費に付帯して支払われる。これは常識であろう。

 平野某がこれを常識としていなかったとしても、入居に必要とした経費として公金から支払われたことに変わりはないのだから、工事費に合算を当たり前のこととしなければならなかったはずだ。

 それを「工事費についていくらかという質問主意書だったから、その部分の数字を(答弁書で)答えた」とする。安倍晋三元首相222万円、福田康夫元首相282万円、麻生太郎前首相382万円と比較して鳩山首相の694万円が突出していることから、少しでも低く見せるための「清掃費」削除のゴマカシだったと取られても仕方はあるまい。

 洗濯乾燥機2台の購入等の約61万円を後になって計算に加えることをやめたのも、同じ趣旨のゴマカシと見ることができないわけではない。合計したら、麻生前首相の約2倍の1千万円に近い759万にもなる。

 否応もなしにゴマカシが至るところから臭い立つ。

 さらに民主党政権になって約8ヶ月。ほぼ半世紀続いた自民党一党支配で見慣れた「政治とカネ」の風景のみならず、公約違反、女性スキャンダル、その他の風景がたった8ヶ月しか経っていない民主党政権に於いても直ちに再演、繰返されている濃厚な近似性からしても、官房機密費の使途に関しては自民党とは違うと言われても、あるいは「使いみちについては、必要があれば支出することになるが、私が責任を持って適切に判断している」と言われたとしても、平野みたいに正直に信じることはできないだろう。

 政治の世界では多くのことが“国益”の名の元、いい加減なことが行われてきたに違いない。そして今現在も行われていることだろう。

 このような思いは政治不信から発し、新たな政治不信を増殖させていく。このことに平野官房長官は力となっている。

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