NHK世調 内閣支持率21%(NHK/10年5月10日 19時45分)
●鳩山内閣を「支持する」 ――21%(前月比-11ポイント)
「支持しない」――68%(前月比-12ポイント)
●普天間基地県外移設全面断念について
「大いに評価する」 ――3%
「ある程度評価する」 ――21%
「あまり評価しない」 ――35%
「まったく評価しない」――34%
●移設断念の理由に「抑止力」を挙げたことについて
「大いに納得できる」 ――4%
「ある程度納得できる」 ――29%
「あまり納得できない」 ――30%
「まったく納得できない」 ――30%
●鳩山総理大臣が5月末までに決着できなかった場合に退陣すべきと思うか
「退陣すべきだ」 ――40%
「退陣する必要はない」――22%
「どちらともいえない」――34%
マスコミ各社が今日5月11日のインターネット早朝版で一斉に普天間移設問題の「5月末決着」を事実上断念したと報じている。これは昨日10日午後の記者会見で述べた発言を根拠としているが、10日朝の関係閣僚会議に先立ったぶら下がりで発言した中で既に「5月末決着」の軌道修正を自ら図るゴマカシを塗り込めて、「5月決着」としていたことの“結論”を巧妙に回避している。
10日朝の記者会見での発言を「NHK」記事――《首相 5月末までに必ず方向を》(10年5月10日 10時59分)動画から見てみる。
鳩山首相「あの、5月末というのは、私は、国民のみなさんに申し上げておりますから、これで行こうと、いう方向をね、必ず出したいと。閣僚会議は、当然のことながら、まあ、みんなで今日までの状況を、きちんと確認をすると、いうことでありまして、それは最終的な方向というものを、みんなでつくり上げていく努力の、その一環であると、いうことは間違いありません」
「5月末」という言葉は4月21日の記者会見でも使っている。平野官房長官が徳之島の3町長に会談を申し入れて断られたときの発言である。
鳩山首相「必ず、5月末までには、五月晴れにしなければならない」(NHK記事)
まさしく「5月末決着」を意味する「五月晴れ」という言葉であろう。一点の曇りもない“結論”ということでなければならない。
「国民のみなさんに申し上げて」きた「5月末決着」とは、「決着」という言葉自体が「結論・結果が出ること。物事の決まりがつくこと」(『大辞林』三省堂)を言うのだから、移転先地元と連立政府と米国の三者間で移転する基地の規模・機能、場所等で相互に受入れ可能の結論に至ることを言うはずだが、それを「これで行こうという方向」にすり替えるゴマカシを塗り込めている。
このようなゴマカシを可能としているのは名護市辺野古米軍キャンプ・シュワブ沿岸部埋め立ての現行案を杭打ち方式に替える修正案と鹿児島県徳之島へのヘリコプター部隊一部移転案を軸とした普天間移設の「方向」を政府が既に打ち出しているからだろう。
それを以て「国民のみなさんに申し上げて」きた「5月末決着」とし、今後地元の合意取り付けと米国の承認に時間をかけるとすることもできるわけである。あるいは連立政権内で反対している社民党党首福島瑞穂と国民新党亀井静香の納得に努力すると。
要するに「方向」の打ち出しは“決着”以前の段階であるにも関わらず、“決着”をそれ以前の段階である方向性の打ち出しに替えて、鳩山首相は自ら責任回避、辞任回避に持っていこうとするゴマカシを塗りこめたというわけである。
マスコミ各社は「5月末決着」の断念を伝えると同時に鳩山首相の責任を問う論調を掲げているが、首相がそれを如何に凌いで責任回避、辞任回避に持っていけるかにかかっている。責任回避、辞任回避を絶対条件としなかった場合、辞任し誰が次の首相になろうと、衆院を解散して民意を問わずに政権を維持したなら、自民党政権時に民意を問わずに首相の首のすげ替えで政権をたらい回しにしていると批判したことの言動不一致を突かれて、次のゴマカシの塗り込めが必要となり、ますます国民離れが生じて支持率を下げることになることが予想されるからだ。
勿論、首相退陣と同時に民意を問う解散・総選挙のプロセスを踏むならいいが、現在の国民離れの状態で総選挙する勇気を持てるかである。
ゴマカシは“決着”を「これで行こうという方向」へのすり替えばかりではない。「5月末決着」を「国民のみなさんに申し上げて」きたと言っているが、「国外、最低でも県外」も「国民のみなさんに申し上げて」きた約束である。それを党の公約ではない、党代表としての私自身の発言だと言って、「国民のみなさんに申し上げて」きたことをいともあっさりと反故にしたゴマカシの前科がある。
その前科を無視し、尚且つ“決着”を「これで行こうという方向」にすり替えて、「国民のみなさんに申し上げて」きた確約だとすることができる神経はさすが政治家だけのことはあると思わせる。
午後の記者会見では次のように発言している。《首相“合意の定義変えてない”》(NHK/10年5月10日 19時45分)
鳩山首相「沖縄のみなさん、それから、移転先に関わりのあるみなさん、さらには、アメリカの、方々、ま、そして、連立与党ですか、連立政権。こういったみなさんが、分かったと、この方向で行こうじゃないかと、いうことで、エー、纏まると、それを合意と、私は呼んだわけでありますけれども、その合意が得られるような、状況をつくると、言うことでありまして、定義を変えているわけではありません」――
午前中の記者会見では、「これで行こうという方向」を打ち出すことを「5月決着」として、「5月決着」が無理になったことを間接的に表明したが、午後は、地元、連立政権・米国の三者が、「分かったと、この方向で行こうじゃないかと纏まる」ことを「合意と私は呼んだ」が、「その合意が得られるような状況をつくる」ことを以ってして、「5月末決着」としている。
いわば、「合意」という“結論”に至ることを以ってして「5月末決着」とするのではなく、その一歩手前の段階の「合意が得られるような状況をつくる」ことが「5月末決着」だとゴマカシを塗り込めて、言葉は違えても、「5月末決着」の断念を同じく間接的に伝えている。
勿論、本人は断念したとは思っていないだろう。あくまでも上記段階に至ることを以ってして「5月末決着」だとゴマカシを塗り込めているからだ。
但し第三者が公平に見た場合、実体的な「5月決着」に見えないから、マスコミは一斉に“断念”と把え、その責任を問う声を上げた。
発言がゴマカシから出発しているから、発言の最後までゴマカシに支配される。動画に加えられていなかったが、移設先の自治体との交渉について次のように発言している。
鳩山「『根回し』というような手法よりも、誠心誠意、正面から対話を通じて理解を求めていきたい。『根回し下手だ』と言われるかもしれないが、言われても構わない。今までのように密室で談合的に決めて、国民にわからないように丸めていくという発想を、新政権は、できるだけとらないという立場を明確にしており、私としても、その思い、その立場で頑張っていく」――
自分は「今までのように密室で談合的に決めて、国民にわからないように丸めていくという発想」には立っていないからと自己を正当化させているが、「国外、最低でも県外」と言って沖縄県民に期待を抱かせ、それを党公約ではない、自分の発言だと裏切って県内移設の修正案に走った態度、あるいは掲げていた沖縄の負担軽減を散々言ってきた「国外、最低でも県外」を絶対条件として解消するのではなく、一部県外移設の不完全な条件で解消を誤魔化そうとする態度、さらにそのゴマカシの解消を背負わされる形で何の相談もなく徳之島が移設先とされたことが問題であって、「根回し」とか「根回し」ではないということではなく、問題をすり替えるさらなるゴマカシの塗り込めしか発言には見えない。
要するに、「『根回し下手だ』と言われるかもしれないが」と体裁のいいゴマカシを言っているに過ぎない。
首相が責任回避・辞任回避のゴマカシを働くから、閣僚も連携プレーのゴマカシを働かざるを得なくなり、内閣揃ってのゴマカシのオンパレードとなる。
《“政府案集約も1つの決着”》(NHK/10年5月10日 13時10分)
平野「鳩山総理大臣は、この問題について、今月末に政治的に何らか決着しなければならないと言ってきている。決着のしかたはいろいろあると思うし、『こういう姿が決着だ』ということを言う立場ではないが、何らかの先送り論みたいな話にはすべきではない。今月末のありようについては、総理の判断の下、閣僚の間でしっかり決めていく。・・・・沖縄の負担を削減するということで、包括的なケースやパッケージ論などいろいろあると思う。それをどういうふうにまとめることが今月末の判断になるのかを最終的に検討していく」――
「決着のしかたはいろいろある」と、「決着」を一つに決めないことによって免罪を謀ろうとするゴマカシを言葉に塗り込めている。要するにどのような「決着」であっても、これも「5月末決着」の一つだとするすり抜けが可能となる。共に責任回避・辞任回避を絶対条件としたいだろうから、鳩山首相が言っている「決着」の形が前以て共同謀議してつくり上げた「決着」の可能性も出てくる。
巧妙狡猾としか言いようがないが、言い抜けと取られることを恐れて、「決着のしかたはいろいろある」と言っておきながら、「『こういう姿が決着だ』ということを言う立場ではないが、何らかの先送り論みたいな話にはすべきではない」と、前後相矛盾することを平気で口にするゴマカシまで働いている。
鳩山首相自体が「5月末決着」を言葉通り、地元・連立政権・米国の三者合意に基づいた結論の成立としていないのだから、当然、「決着」は先送りされることになる。平野官房長官にしても、三者合意に基づいた結論の成立を言わずに、「決着のしかたはいろいろある」を免罪符にしようとしているのだから、「何らかの先送り論みたいな話にはすべきではない」はゴマカシでしかない。
この平野長官のゴマカシは鳩山首相の進退について述べた発言にも塗り込められている。
平野「総理大臣の進退については、常にそのことを考えながら政治を行っている。あらゆる政治課題について、身を粉にして政治を進めるということだ。普天間基地の移設問題に限らないものであり、この問題で進退うんぬんということではない」
「進退」は「普天間基地の移設問題に限らない」ということは、すべての政策遂行に進退がかかっているということであろう。そして、「総理大臣の進退については、常にそのことを考えながら政治を行っている」とするなら、普天間問題でも責任を果たせなかったなら、当然、「進退うんぬん」しなければ、言っていることに破綻が生じる。だが、「この問題で進退うんぬんということではない」と、普天間問題に限って進退がかかっていないことだとゴマカシを塗り込めている。陰険なところのある平野官房長官らしい。
前原国交相にしても、鳩山首相の責任回避・辞任回避に添うゴマカシ発言を行っている。衆議院の特別委員会での発言だそうだ。
《“今月末以降も移設先と協議”》(NHK/10年5月10日 19時45分)
前原「鳩山総理大臣から政府としての正式な考えは示されていない。その環境整備に向けて議論しているところだ。・・・・基本的には5月末までの決着だが、そのときの地元の合意をどのように定義づけるかだ。地元の理解を得るための不断の努力は5月を超えてもやっていかなければならない」――
平野官房長官の「決着のしかたはいろいろある」と同じゴマカシの塗り込めとなっている。「地元の合意をどのように定義づけるか」によって、「決着」が決まってくると、「定義づけ」次第だとしているからだ。
責任回避・辞任回避に添う「定義づけ」となるのは目に見えている。
また、「地元の理解を得るための不断の努力は5月を超えてもやっていかなければならない」はごく当たり前のことを当たり前に表面的に言ったに過ぎない。日米のロードマップで決めた普天間移設期限の2014年が迫っている。何らかの決着が必要であるし、途中で投げ出していい問題ではない。ゴマカシを塗り込めるだけでは問題解決とはいかないということである。