――民主党に衆・参両院過半数のチャンスを与えよう――
陸山会での政治資金規正法違反(虚偽記載)容疑で告発を受けた小沢民主党幹事長を東京地検特捜部が嫌疑不十分で不起訴したことについて検察審査会が4月末に「起訴相当」とする議決を行ったものの、東京地検は再捜査して5月21日に再び不起訴とした。3日後の24日の定例記者会見で、鳩山首相が昨夏の衆議院選挙で普天間移設問題に関して訴えていた「国外、最低でも県外」は党の公約ではなく、自分自身の発言と否定したことに関して、自身の見解を述べている。
《小沢氏会見の要旨 「代表発言と党の公約は同じ」》(MSN産経/2010.5.24 22:11)
--辺野古移設案だが
「政策の決定は総理大臣で、私は過程も結論も一切聞いておらず、論評する立場でない」
--検察が不起訴にした
「当日(21日)にコメントを出した通りでございます」
--政倫審に出席するか
「政倫審には出るとか出ないとか一度もしゃべったことはない。報道が先行しただけだ。別に拒んでいるわけでもないし自然体だ」
--普天間問題で社民党が連立離脱しないよう調整に動くか
「社民党の党首が内閣の意思決定には当然参加しているだろう。まあ、正式な意思決定をしたのか分からないが、社民党のことまで、私がとやかく言う立場ではない」
--普天間移設で、鳩山由紀夫首相は昨夏の衆院選の際、党代表として「最低でも県外」と言ったが
「代表(の発言)と党の公約は、一般論でいえば同じようなことだろうと思っている。ただ、直接聞いてないので。なんて言ったかはあんた方(報道)からの伝聞でしかないですけれども」
小沢幹事長が「代表(の発言)と党の公約は、一般論でいえば同じようなことだろうと思っている」と発言したことについて記者から問われて、鳩山首相は5月24日の首相官邸記者会見で次のように答えている。
《「3党合意に反しているわけではない」24日の鳩山首相》(asahi.com/2010年5月24日22時20分) (一部抜粋)
【普天間問題・日米合意先行か】
――日米関係を優先させて大筋で同意した後に沖縄に伝えるという方法について、手順が違うのではないかとか、日米合意の地元への押しつけではないかという批判が出ているがどう考えるか。
「これは、日米まだ、最終的な合意には至っておりません。そういう中で、沖縄の仲井真(なかいま)知事をはじめ、関係者の方々と対談をして、会談をしてまいりました。わたくしどもの思いを、ある意味で同時にお伝えしてきております。決して日米先行ということではありません。また様々、沖縄の皆さま方、知事を中心にわたくしどもとしての考え方は随時申し上げてまいりました」
【普天間問題・辺野古は不可能という発言】
――1カ月前の(自民党の)谷垣総裁との党首討論で、辺野古への移設は実現不可能だという発言をしているが、1カ月で考えが変わったのか。そして普天間基地の返還が遅れることが懸念されるが、この8カ月間の迷走は何だったと考えるか。
「8カ月間、様々、この普天間の移設先に関して、40カ所以上検討してまいりました。時間がかかったことは国民の皆さんにまたいろいろと不信感をお与えしたと思います。そのことは正直にまたおわびを申し上げなければならないと思います。で、現行案に戻るという話ではありません。あの、わたくしが申し上げたのは、現行案としての辺野古は、これは無理だと。その意味でさらに環境に配慮する、その前に当然、住民の皆さんの安全というものを考えなきゃなりませんが、米軍の運用上の問題も含めて、それが満たされるというものを見いだしていく中で、最終的に辺野古周辺という状況になったということでございます」
【普天間問題・社民党の説得】
――社民党の福島党首が今日、3党の政策合意に反していると発言。これからどう内閣の意思疎通を図っていくつもりか。
「はい。これは福島党首には恐縮ですが、3党の合意に反しているわけではありません。3党合意の中には、当然沖縄の負担軽減ということは申し上げております。したがってわたくしはこの8カ月間、沖縄の皆さま方のこれまでのご苦労を考えたときに、できる限り負担軽減をしたいということで努力をしてまいりました。したがって、この辺野古への移設ということと共に、沖縄の負担軽減というものを様々はかってまいりたいと、これからも思っております。で、その意味で政策の合意に反しているということではないと。これは福島党首にもしっかりと申し上げなければならないと思っています」
(秘書官「最後1問にしてください」)
【普天間問題・代表時代の発言】
――小沢幹事長が定例会見で「代表の発言と党の公約は同じ」と。どう考えるか。
「はい、公約というものの意味をいろいろとおとりになることはあり得ると思います。従って代表としての言葉の重さというものは、私も理解をしています。それだけに、自分の発言したこと、という重さを感じながら、できる限り、それに沿うようにと努力をして参りました。なかなかその意に沿わないということもあったことも、率直に認めなければならないと、反省しています」
「現行案としての辺野古は、これは無理だと」。だから、「現行案に戻るという話ではありません」。「最終的に辺野古周辺という状況になった」に過ぎない。
しかし現行案を土台とし、現行案に乗っかって、滑走路建設は環境型だ、訓練の一部は県外に持っていくといった色づけを施そうとしているだけのことだから、現行案を基本にしていることに変わりはないはずだが、それを「現行案に戻るという話ではありません」と言っている。「最終的に辺野古周辺という状況になった」と言っている。
現行案を基本にしているからこそ、現行案を最善だとしていたアメリカの合意を得ることができたはずである。
要するに他の場所を見つけることができなかったに過ぎない。見つけることができなかったことを「現行案に戻るという話ではありません」、「最終的に辺野古周辺という状況になった」と誤魔化している。
「国外、最低でも県外」の結末、正体が「最終的に辺野古周辺という状況」となったという事実が、そのことまで含めて何よりもゴマカシであることを証明している。
しかも鳩山首相はその結末、正体に何ら痛みも痒みも感じていないらしい。
小沢幹事長が言った、「代表(の発言)と党の公約は、一般論でいえば同じようなことだろうと思っている」とは、言った本人が気づいているかどうかは分からないが、代表の発言は「党の公約」と同等の責任を伴う、あるいは同等の責任を負うということへの言及であろう。
当然のことで、例え言った本人が気づいていなくても、発言は同等の責任を伴う、あるいは同等の責任を負うという意味まで含んでいなければならない。
首相が言っているように、「公約というものの意味」の取り方、解釈の問題で終わらせていい小沢発言では決してない。
例え「同じ」でなくても、代表個人としての発言は党公約に準じた責任を伴うはずである。
ここで言う責任とは一旦口にしたことを果たす責任のことなのは断るまでもない。党公約ではなくても、党代表として口にした以上、党代表として果たさなければならない責任を負ったということである。そして果たすことができなければ、次に果たせなかったことの責任に関係してくる。
「国外、最低でも県外」を果たすことができなかったのである。「現行案に戻るという話ではありません」とか、「最終的に辺野古周辺という状況になった」などと言っている場合ではない。
「反省しています」という責任の取り方ではいつまで経っても政治の世界にゴマカシを通用させることになる。