鳩山首相の国民に期待する安全保障意識は他力本願

2010-05-14 08:43:14 | Weblog

 次の衆議院選挙で政権党を決めることとして、それまで国の政治を不安定とする衆参ねじれは阻止されるべき

 今朝5月14日5時と7時のNHKニュースで、アメリカ軍普天間基地移設の日本側提案を議論する日米実務者協議(5月12日)がワシントンで行われたと報じていた。このことに関連して鳩山首相が「国民が、安全保障を自らや地域の問題として発想していただくことは大事なことだと」といったことを言っていた。

 国民に「発想していただく」という受身の姿勢が引っかかった。自らの言葉で“発想する”ようリードする能動的姿勢こそが鳩山首相は一国の政治指導者として欠かすことのできない必要事項のように思えた。

 詳しく知るためにNHKの記事を検索した。《普天間移設 来週も米側と協議》NHK/10年5月14日 4時58分)

 日本側の提案は既に多くのマスコミを通じて広く報道されている。名護市のキャンプシュワブ沿岸部を埋め立てる現行案を、埋め立ては鳩山首相自らが「辺野古の海を埋め立てることは、自然への冒涜だと強く感じている。あそこに立ったら、埋め立てられたらたまったもんじゃないと誰もが思う。現行案を受け入れるような話になってはならない」と強固な自然保護意識から現行案を拒絶、埋め立てる代わりに杭を打ち込んでその上に滑走路を敷設する、「自然への冒涜」とならない現行案一部修正の「杭打ち桟橋方式」案とヘリコプター部隊の部隊と訓練の一部を徳之島及び全国の自衛隊基地に移す案を含めた政府案を実務者協議で提示。

 対してアメリカ側は、〈杭打ち方式は、滑走路と海面の間に空間ができるため、テロ攻撃の対象になりやすく、埋め立て方式と比べても、環境への影響は大きく変わらないなどとして慎重な考えを示し、具体的な工期や、滑走路の耐用年数など、さらに詳しいデータを提供するよう求め〉、妥結に至らなかったという。

 この「桟橋方式」は「テロ攻撃の対象になりやす」いことと環境への影響という欠点だけではなく、「asahi.com」記事――《普天間問題、日米実務者協議が終了 日本側、桟橋案提示》(2010年5月13日11時0分)によると、「波が滑走路にかかる可能性の難点」もアメリカ側が挙げていたと伝えている。この難点に対して、〈日本側は「杭」を一定以上の高さにして滑走路を載せる方法などで波の影響を抑えることができるとし、理解を求めた模様だ。 〉と伝えている。

 〈「杭」を一定以上の高さ〉とすれば、工事費が高くなることについては何も書いていない。

 また上記「NHK」記事が伝えている、米側が「杭打ち桟橋方式」を〈埋め立て方式と比べても、環境への影響は大きく変わらない〉としている点について、環境NGO「WWFジャパン」が発表した「杭打ち桟橋方式」に反対する声明の中でも環境への悪影響を訴えている。

 《“くい打ちは環境に悪影響”》NHK/10年5月13日 4時45分)

 声明によると、〈浅瀬にある海草の生息地やサンゴ礁が、くい打ち工事による海底のかく乱や構造物に光を遮られて光合成ができなくなることで壊滅的な悪影響を受け〉、〈こうした海草を食べているジュゴンの絶滅を早めるおそれがあるうえ、周辺のサンゴ礁などにも次第に悪影響を及ぼす可能性がある〉としている。

 さらに、〈鹿児島県徳之島に基地機能の一部を移す案についても、空港の北側にあるサンゴ礁や干潟に飛来する渡り鳥などの生物への影響は避けられ〉ず、〈数多くの固有種をはぐくんできた沖縄など琉球列島に新たな基地を建設することは、生態系の破壊に直結する可能性が高く、固有種の絶滅の原因になりかねない〉と悪影響を挙げている。

 これが事実だとすると、「あそこに立ったら、埋め立てられたらたまったもんじゃないと誰もが思う」「自然への冒涜」である埋め立てを避けた杭打ちが依然として埋め立てと変わらない「自然への冒涜」に当たるという「自然への冒涜」の連続性を打ち立てることとなり、鳩山首相の「自然への冒涜」は意味を失う。

 このことへの答を見つけるとしたら、「杭打ち桟橋方式」は決して「自然への冒涜」にはならないと信念しているということなのだろう。「国外、最低でも県外」にしても、「5月末決着」にしても、当てにはならない鳩山首相の信念ではあるが。

 いずれにしても政府案は妥結に至らず、持ち帰って、〈来週、東京で改めて協議を行うなど、引き続き粘り強く交渉していく方針〉だという。

 日米合意に向けたこういった動きと併せて、鳩山首相は13日首相官邸で全国知事会会長の麻生福岡県知事と会談、政府案に協力を求め、全国知事会議を今月27日に開催することで調整しているとのこと。

 全国知事会議を開催したとしても、大勢としては総論賛成、各論反対で推移するように思えるが、橋下大阪府知事が関西へ受入れる姿勢を示している。《橋下知事「基地移設で優先順位高いのは関西」》YOMIURI ONLINE/2010年5月13日(木)21:43)

 橋下知事(13日の発言)「受け入れの優先順位が高いのは、米軍基地のない地域。一番高いのは関西だ。政府から要請があれば、関西で回答を出さないといけない。」

 「おねだり集団だった知事会が、国と対等な関係になれるかの試金石。(沖縄以外の地域で受け入れるという)回答を出さなきゃ、知事会は解散だ」

 〈橋下知事はこれまでも、沖縄の負担を全国で分かち合うべきだとして、負担軽減策を全国知事会の場で協議するよう主張〉してきたと記事は書いている。〈地元・関西空港への一部機能の移転に関しても、「国から提案があれば、議論は拒否しない」などと発言していた。〉

 「関西空港への一部機能の移転」などとケチ臭いことは言わず、日本のハブ空港は羽田空港か成田空港、いずれかに特化させて、政策も投資も一極集中化させ、関西空港を米軍と自衛隊の全面基地化とすれば、鳩山首相が言っていた「普天間の危険除去、沖縄の負担軽減」、さらに一旦は党の公約ではない、自分自身の発言だと口実を設けてポイ捨てした「国外、最低でも県外」の約束を拾ってちゃんとあとに戻すことができる。

 ワシントンでの日米実務者協議と全国知事会の開催等に関して首相は13日夜に記者団に次のように発言している。引っかかった箇所である。

 鳩山首相「国民のみなさんが安全保障を、自らの問題として、あるいは地域の問題として、発想していただけると、いただくことは私は大事なことだと、思っています。知事の皆様方、からですね、始めて、地域のみな様さん方にご負担をお願いすると、いうことを、これから真剣に取り組んでまいりたいと――」

 知事に対しては「皆様方」、地域に対しては「みなさん方」、差をつけているじゃないか。

 「発想していただける」、あるいは「(発想して)いただく」などと、国の安全保障を地域それぞれが担う、あるいは国民がそれぞれに担う意識を持つことへの期待を地域次第、国民次第に置く、あるいは安全保障の決定権を地域や国民の側に置く他力本願な受身の姿勢を持つのではなく、ジョン・F・ケネディ大統領が1961年1月20日の大統領就任演説で、アメリカ人はみなアクティブ・シチズン(活動的市民)である必要を語り、「祖国があなたに何をしてくれるかを尋ねてはなりません、あなたが祖国のために何をできるか考えて欲しい」(Wikipedia)と全国民に向けて訴えかけたように、あるいは代々のアメリカ大統領がラジオ・テレビ演説を恒例としていて、重要政策について直接国民に語りかけるように、鳩山首相も記者会見という形ではなく、テレビで全国民に向けて普天間の移設問題、日本の安全保障の問題、世界の平和維持の問題について直接語りかけて、地域、国民が主体的に「発想」するようリードするリーダーシップを発揮すべきではないだろうか。発揮することによって安全保障の決定権を自らの側に置くことができる。

 それが一国の政治ではないだろうか。

 そのようにリードするだけのリーダーシップ、あるいは創造的な言葉を備えていないというなら、早々に退散すべきである。

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