橋下徹日本維新の会共同代表が3月30日の党大会で今夏の参院選挙では自公与党の過半数阻止に動くが、安倍政権には協力すると、矛盾した挨拶を行ったようだ。
私自身の解釈だと、どうしてもそうなる。
橋下徹「安倍政権のいいところは応援するが、今の自民党はやはり既得権だ。既得権の打破と統治機構を変える体制維新で、新しい国づくりを進めるのが、維新の会の党是で、参議院選挙で自民・公明両党の過半数を阻止できるかどうかが、体制維新の分水れいだ」(NHK NEWS WEB)
「安倍政権のいいところは応援する」と、是々非々主義の対応をするかのように言っているが、後半の発言からすると、全面応援=全面協力ということになる。
「今の自民党はやはり既得権だ」と言っている意味は、自民党は何事も直接的に国民の利益となる既得権とするのではなく、自分たちの利益のために既得権化させていて、「既得権」で成り立っている既得権政党だということであろう。
結果、自民党は自分たちの利益を介在させた上で国民の利益を次に図る二段階方式の利益構造を取っているということになる。
簡単に言うと、政治の果実は先ず自分に、残りは国民にという搾取を既得権化させた構造だと表現できる。
予算の配分でも、予算をつけた事業でも、あるいは様々な法律からも自分たちのための何らかの既得権をつくり出して、自分たちの利益とする。
勿論、政治家だけで搾取を既得権化できるわけではない。官僚や業界にも利益のお裾分けをして、集団で既得権構造を固めていき、鬼に金棒の盤石とする。
このようなことを以って、政官財癒着と言われてきたはずだ。
例えば業界の利益となる法律を最初からの目的として官僚と共に制定、業界の利益をつくり出して、業界から政治献金や選挙の時の票、あるいは一番うまい汁としてワイロの形で等々、何らかの見返りを得て、自分たちの利益とするという遣り方で既得権化の共同世界をつくり出す。
本来の使途から外れた予算の流用も、官僚の利益のためだけではなく、政治家や業界が絡んでいるケースもあるはずだ。
当然、橋下徹が「今の自民党はやはり既得権だ」と言っていることは自民党は政官財癒着の、何でも既得権化してしまう政治世界に未だ仁王立ちしていると解釈しなければならない。
何しろ戦後ほぼ一貫した一党独裁体制の過程で盤石化した既得権の世界なのだから、それが未だ崩れていないということなら、その世界に仁王立ちしていると表現しても、決して大袈裟な表現ではないはずだ。
現在の中央集権体制も長年の自民党政権が維持・堅牢化してきて、既得権の一つとして利用している国家構造であろう。
橋下は一方で、「安倍政権のいいところは応援する」と是々非々主義を掲げているが、その是々非々主義が安倍政権の延命に手を貸すことになった場合、ただでさえ内閣支持率が高く、自民党単独でも長期政権が予想されるのだから、安倍政権延命に手を貸すことになる確率も高いはずで、そうなったときの橋下徹が力添えしたその延命が参院選自公過半数阻止とは逆の力となって働かない保証はなく、働いた場合、イコール自民党の既得権化の世界の延命に手を貸す矛盾が生じる確率も高いと見なければならない。
いわば「安倍政権のいいところは応援する」ということは既得権体質保持の自民党の補完勢力となることの宣言ともなる。
橋下徹の上記挨拶を常識的に解釈すると、こういった答にしかならないはずだ。
挨拶の矛盾を解くためには「安倍政権のいいところは応援する」の是々非々主義を貫き通して、自民党の既得権体質に目をつぶるか、自民党の既得権体質を完全に潰すために安倍政権と徹底的に戦うか、いずれかの道を選択しなければならないはずで、いずれかの選択によって日本維新の会共同体表としての態度に決着がつくことになる。
もし前者を選択するとしたら、日本維新の会が掲げる体制変革のスローガン、中央集権体制打破のスローガンとの整合性が完全なまでに崩れることになる。
いわば後者を選択することによってのみ、自らが掲げるスローガンとの整合性を守ることができる。
安倍政権と徹底的に戦うという選択が「安倍政権のいいところ」を無視することになるジレンマは、例え安倍政権の評価すべき政策であっても、それ以上に国民の利益となる政策を創造することによって解決し得るはずだ。
そのような政策の創造があって初めて、体制変革のスローガン、中央集権体制打破のスローガンが生きてくるし、掲げる資格を得る。
すべての言動からの矛盾の排除が可能となる。
日本維新の会が掲げる憲法改正にしても、例え自民党と協力することになったとしても、安倍政権よりも内容ある憲法改正草案を国民に示すことによって、選挙で有権者の支持をより多く獲得できるはずだし、そのことが自民党の既得権打破の流れにつながっていくはずだ。
だが、「安倍政権のいいところは応援する」と、さも潔いことを言っているかのような装いを発言に纏わせているが、その是々非々主義が結果として自民党の補完勢力となって、自民党の既得権体質維持に手を貸す確率が高くなり、このことが参院選挙で安倍政権の延命に直結していく自民党の議席獲得に貢献する動きとなる可能性が予想されるはずだが、いわば過半数阻止の可能性を限りなく低くすることになるにも関わらず、そういった認識はなく、一方で「参議院選挙で自民・公明両党の過半数を阻止できるかどうかが、体制維新の分水れいだ」と可能性低い矛盾を平気で言うどっちつかずを実際には演じているのである。
橋下徹は今後共自身を有利に生かすために自らが掲げる主義・主張に関係なく、カメレオンのように節度・節操をその時々で巧妙に変えていくだろうし、例え変えたとしても言葉ではそうとは悟らせない、逆にさも素晴らしいことを訴えているかのような言葉の装いを巧まずに駆使していくに違いない。