野田政権下、東日本大震災復興財源確保を目的として2012年4月から2年間、国家公務員給与の平均7・8%カットが決定した。民主党から自民党へと政権交代後、今年に入って2013年1月、安倍政権は地方公務員給与を平均で7・8%カットの国家公務員に準じて引き下げるよう自治体に要請した。
但し地方から反発が上がった。そこで安倍政権は地方公務員給与カット分に相当する24年度比3921億円減額の改正地方交付税法を3月29日(2013年)成立させ、対抗した。
地方自治体は他の予算を減額しないことには地方公務員の給与を現状通りに維持できないことになるが、他の予算減額に行政サービス予算が含まれていて、地方公務員給与現状維持では今度は自治体住民が黙ってはいまい。
情け容赦もない兵糧攻めといったところである。
だが、この強制的な地方公務員給与カットはアベノミクスが柱としている、いわゆる景気回復の好循環と論理矛盾していないだろうか。
元々安倍晋三は頭が粗雑に出来上がっていて、単細胞、欠陥認識能力を自らの資質としていて、論理矛盾を歴史認識に於いても、教育観に於いても当たり前の風景としているから、今更驚きもしない。
小沢一郎「生活の党」代表も大阪市で記者団に安倍晋三の憲法観の論理矛盾を皮肉っている。《「安倍さん、論理的矛盾じゃないか」生活・小沢氏》((asahi.com/2013年4月13日0時23分)
記事には日付は書いていないが、大阪市で記者団に話した発言となっていて、記事発信日時が「4月13日0時23分」だから、4月13日の午前中と思われる。
小沢一郎「生活の党」代表「日本維新の会の党綱領は、占領時代に占領軍が絶対平和を押しつけた憲法だから変える、と。安倍(晋三首相)さんもね、同じような趣旨のことを従来から話していますね。
前の安倍政権のとき、私は党首討論で『独立していない占領時代に米国から押しつけられた。日本国民の自由な意思で作ったのではない。だから憲法改正だということは、現在の日本国憲法を否定するんですね』と聞いたら、安倍さんは『いや、良いところは残すんだ』という答弁をしたんだよ。
良いところを残すんだったら、占領軍から押しつけられたからけしからんという論理ではない。押しつけられたものでも良いところは残すんでしょ。ちょっと論理的に矛盾するんじゃないか」――
このことはいくら安倍晋三が占領軍がつくった憲法だと言おうと、当時の戦前旧体制の血を受け継いだ戦後政府内の日本人に日本国憲法のような民主的な憲法を作る力、あるいは精神を持っていなかったことからの占領軍憲法だと当ブログ記事に書いた。
アベノミクスと称せられる景気回復策は大胆な金融緩和によって円安と株高を招き、その双方が輸出拡大や企業業績改善に繋がって、雇用改善・賃金上昇へと発展して、それを受けて消費者の消費が拡大していく。消費拡大は物価高のインフレを招くが、その物価高がさらに企業業績を上向かせて従業員の雇用改善と賃金上昇へと還流してしていき、企業の業績改善と雇用改善・賃金上昇、さらに消費拡大が相互循環しながら一体的に雪ダルマ式に膨らんでいき、日本の経済は拡大、税収も増えるというシナリオを描いている。
安倍晋三は黒田東彦新日銀総裁が大胆な金融緩和策を打ち出す前に自身の金融緩和策を発表しただけで頑固な難病と化していた円高が大きく円安に振れ、株高を招いた市場の激変ぶりに、「結果を出しているんです」と誇らかに自身の金融政策と結果責任の正しさを自賛していたが、この自賛は同時にアベノミクスがシナリとしている好循環そのもののシナリオ通りの結果を約束した自賛ともなる。
好循環がシナリオ通りの結果を得ずに円安と株高止まりでは、「結果を出しているんです」の言葉自体もそうだが、言っているところの好循環自体が論理矛盾を来すことになる。
「結果を出しているんです」と発言した以上、シナリオに書いた起承転結どおりに結果をすべて出して初めて論理的整合性を得ることができる。
いわば安倍晋三はアベノミクスによって民間被雇用者の賃金上昇を確約の一つとした。
政府も日銀もインフレによる物価目標を2%に置き、達成期限を2年としているが、だとすると、アベノミクス“好循環”効果による見るべき賃金上昇は1年以内乃至2年以内実現の責任を負っていることになる。
賃金は景気回復による企業業績改善に伴って順次上昇していく形を取るからだ。そうでなければ、アベノミクス“好循環”効果の一つである雇用改善も伴わないことになる。
もし賃金上昇が1年以内乃至2年以内に順次上昇していかなければ、逆に円安による日常生活品の輸入物価高が中低所得層を襲うことになり、シナリオ通りのアベノミクス“好循環”効果をウソとすることになる。
ウソとしないためには円安による日常生活品の輸入物価高以上の賃金上昇を例え少し遅れでも実現しなければならないのだから、この点からもアベノミクスは円安との競争で賃金上昇の1年以内乃至2年以内の順次実現の確実な責任を負ったことになる。
このことを言い換えるなら、アベノミクスは賃金上昇を夜が来れば、朝を迎えるように既定事実としたシナリオだと言うことができる。
そうでなければ、アベノミクスなるシナリオは成り立たない。
もし民間企業被雇用者の賃金上昇の1年以内乃至2年以内順次実現を既定事実としたアベノミクス“好循環”のシナリオであるなら、国家公務員と地方公務員の給与が平均で月額5万円程の差があり、地方公務員と民間企業の給与が月額約10万円程の差があるそうだが、地方公務員の給与カットをここで行わなくても、据え置いた状態に置けば、1年以内乃至2年以内に民間被雇用者の給与が追いつくことになって、地方公務員給与を超えたとしても、地方公務員がそれまで余分に得ていた分が民間企業と比較してプラスマイナスゼロになるまで、給与引き上げを押さえていれば、バランスは取れるはずだ。
しかも国家公務員の7.8%給与カットは2年間の暫定措置で、2年後に元に戻る。いわばこの2年間の問題であるなら、アベノミクスの2年間でカバーできないことはあるまいし、カバーすればいいことではないか。
アベノミクスの好循環の話を聞いていると、賃金上昇にそれ程の勢いがなければ、円安の物価高に負けることになって、やはりアベノミクスは成り立たないことになる。
地方公務員と国家公務員の給与の差額も民間企業の給与が国家公務員の給与を超えたところで併せて引き上げてバランスを取れば、ゆくゆくは三者共に平均化することができる。
だが、安倍政権地方公務員給与カット分に相当する24年度比3921億円減額の改正地方交付税法を成立させてまで、地方公務員の給与カットに拘っている。
このことはアベノミクス“好循環”効果の一つである民間企業賃金上昇の確約に対する、まさに逆行そのものの地方公務員給与カットの論理矛盾を現しているはずだ。