中国艦船や監視船の尖閣諸島周辺の領海侵入が収まらない。昨日の4月16日(2013年)も、午前9時頃から海上保安庁巡視船の警告にも関わらず領海侵入を強行している。
今年に入っては延べ18日の領海侵入だとマスコミは伝えている。
外務省は在中国大使館に電話で「尖閣諸島は日本の固有の領土だ」と抗議。
中国側「中国の固有の領土であり、抗議は受け入れられない。抗議の内容は本国に伝える」
ときには在日中国大使を外務省に呼びつけて直接抗議する。
勿論、答は「中国の固有の領土であり、抗議は受け入れられない。抗議の内容は本国に伝える」と一点張りに違いない。
この繰返しである。
この繰返しにもう一つ、首相官邸の危機管理センターに設置してある「情報連絡室」を中国艦船や中国機の領海侵入や領空侵入を受けるたびに「官邸対策室」に切り替える繰返しが加わる。
但し今回の領海侵入に関しては切り替えたことを伝えている記事は見当たらなかった。
だが、午前9時頃から午後6時頃までの約9時間の領海侵入である。今までの例からして切り替えなかったとは考えられない。
このような繰返しを許しているということは安倍政権に打つ手を持たないことの証明としかならない。
但しこの打つ手を持たない状況は安倍晋三の国会での断言と矛盾する。
3月7日の午前中の衆院予算員会で萩生田光一自民党議員の質問に対して次のように答弁している。
安倍晋三「前の政権では、過度に軋轢を恐れるあまり、領土・領海・領空を犯す行為に対して、当然行うべき警戒・警備の手法に極度の縛りがかけられていた。相手方に誤ったメッセージを送ることになり、不測の事態を招く結果になると判断したので、安倍内閣が発足した直後から、前の政権の方針を根本から見直し、冷静かつ毅然とした対応を行う方針を示した」(NHK NEWS WEB)
「安倍内閣が発足した直後から」と断って、「前の政権の方針を根本から見直し、冷静かつ毅然とした対応を行う方針を示した」と断言している。
だが、現実を見る限り、安倍晋三が口で言っているようには有効な対応とはなっていない。
この矛盾を把えて、「口先だけ」と批判してブログにも書いたが、今回は違ったアプローチで矛盾を突いてみたいと思う。
第2次安倍内閣は2012年12月26日に発足している。その5日後の12月31日午後1時半頃、中国の海洋監視船2隻が相次いで領海に侵入している。
海上保安庁の巡視船が無線で領海外への退去を求めると、海洋監視船側は「釣魚島及び付属の島々は昔から中国固有の領土だ」(asahi.com)と応答。
これも同じことの繰返しとなっている一つなのだろう。
「安倍内閣が発足した直後から」の「冷静かつ毅然とした対応」とは、無線で領海外退去を求め、中国側が自国領土だと応答して、暫く領海に居座り、海上保安庁の直ちにという時間ではなく、自分たちが決めた時間に領海を出て行く、毎度お馴染みとなっているその時々の結末を既定事実とするということなのだろうか。
年が明けた2013年1月7日午前11時頃、合わせて4隻の中国海洋監視船が相次いで領海に侵入、政府は「情報連絡室」を「官邸対策室」に切り替えて情報収集と警戒に当たった。
斎木昭隆外務審議官が翌8日、安倍政権発足後初めてとなる中国の程永華駐日大使の外務省呼び出しを行い、厳重抗議。
程永華駐日大使「釣魚島(尖閣諸島の中国名)は中国領。抗議は受け入れられない」(MSN産経)
そして12日後の1月19日午前9時過ぎ、中国の海洋監視船3隻が相次いで日本の領海に今年2回目となる侵入。
19日午前9時に「情報連絡室」を「官邸対策室」に切り替え、情報収集と警戒に当たる。
勿論海上保安庁巡視船は無線で領海外への即刻退去を求めただろうし、外務省は駐日中国大使を呼びつけるか、電話するかで抗議を伝えただろうし、相手は決まり文句となっている「釣魚島は中国領。抗議は受け入れられない。抗議の内容は本国に伝える」という言葉を形式的に伝えたに違いない。
1月19日午前、海洋監視船3隻が日本の領海に侵入。「情報連絡室」を「官邸対策室」に切り替え、情報収集と警戒。
1月21日朝、海洋監視船3隻が相次いで日本の領海に侵入。
1月30日午前、海洋監視船3隻が日本の領海に今年に入って4回目となる侵入。「情報連絡室」を「官邸対策室」に切り替え、情報収集と警戒。
記事には書いてなくても、海上保安庁の無線での領海外への退去要請と中国側の決まりきった対応、外務省の中国大使館に対する厳重抗議と抗議に対する中国大使館側の同じく決まりきった対応は付き物として登場しているはずだ。
2月4日午前、中国海洋監視船2隻が日本の領海に侵入。海上保安庁巡視船による領海外退去の警告。領海内での航行は14時間にも及び、去年9月に政府が尖閣諸島を国有化して以降、最長の記録達成。
この最長の記録達成にしても、安倍晋三が言う野田前政権とは異なる「安倍内閣が発足した直後から」の「冷静かつ毅然とした対応」の成果に違いない。
どう考えても、「冷静かつ毅然とした対応」があったからこその最長の記録としか思えない。
2月15日午前、中国海洋監視船3隻が日本の領海に侵入。海上保安庁巡視船による領海外退去の警告。「情報連絡室」を「官邸対策室」への切り替え。
「どこまでも続くよ――」の線路みたいだ。
中国国家海洋局(2月15日)「海洋監視船3隻は釣魚島(沖縄県・尖閣諸島の中国名)の中国領海内で航行を続けている」(MSN産経)
この2月15日、政府は中国海軍艦船による自衛隊護衛艦等に対する火器管制レーダー照射の証拠開示を「日本の情報収集能力を明かすことになる」からと見送る方針を打ち出している。
この証拠開示見送りは中国の照射事実否定に一定の手助けを与えるものとなったに違いない。
2月18日午前、中国海洋監視船3隻が日本の領海に侵入。海上保安庁巡視船による領海外退去の警告。「情報連絡室」を「官邸対策室」へと切り替え。
2月21日午後、中国漁業監視船1隻が領海侵入。以下、同文。
2月23日午後4時50分頃、中国漁業監視船1隻が領海に侵入。政府が昨年9月に尖閣諸島を国有化して以降、29回目。
2月24日午前、中国漁業監視船1隻が領海に侵入。今年では10回目。
同2月24日午後、中国海洋監視船3隻が領海に侵入。
2月28日朝、中国海洋監視船3隻が領海に侵入。
3月6日午前、中国漁業監視船1隻が領海に侵入。「情報連絡室」を「官邸対策室」へと切り替え。
同3月6日午後、国海洋監視船3隻が領海に侵入。既に「情報連絡室」から「官邸対策室」へと切り替えていたから、再度切り替える手間が省けたに違いない。
この翌日の3月7日に国会で安倍晋三は「安倍内閣が発足した直後から、前の政権の方針を根本から見直し、冷静かつ毅然とした対応を行う方針を示した」と宣言した。
どこが「冷静かつ毅然とした対応」なのか分からない。「冷静かつ毅然とした対応」が中国側の領海侵入に対してどう実効性を持たせているのか、見えてこない。
3月12日午前、中国海洋監視船3隻が領海侵入。
3月18日午後6時半頃、中国の海洋監視船3隻領海侵入。「情報連絡室」から「官邸対策室」へと切り替え。
4月1日午後1時半頃、中国海洋監視船3隻領海侵入。海上保安庁巡視船による領海外退去の警告。「情報連絡室」を「官邸対策室」へと切り替え。尖閣諸島国有化以降、延べ36日。
4月9日午前、中国海洋監視船3隻領海侵入。海上保安庁巡視船による領海外退去の警告。「情報連絡室」を「官邸対策室」へと切り替え。今年に入って9日間、国有化後36回目。
そして冒頭に挙げた4月16日の海洋監視船3隻の領海侵入である。
安倍晋三が手を打っているはずの「安倍内閣が発足した直後から、前の政権の方針を根本から見直し、冷静かつ毅然とした対応」に相呼応して現れているはずの尖閣諸島周辺と首相官邸を舞台とした、明らかに儀式化している同じ繰返しの場面であるはずである。
中国艦船の接続水域航行は数知れない。
安倍晋三の国会での断言の実効性がどの程度のものか、わざわざ言葉を尽くさなくても、誰の目にも明らかである。