野田首相がアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議で訪問中のロシア・ウラジオストクでプーチン大統領と日本時間9月8日正午過ぎから30分間余り会談。
会談内容は日本側発表によるから、批判を受けそうな都合の悪い情報は隠蔽し、都合のいい情報のみを公開した場合、真相は藪の中ということも起こり得る。
例えば最近の例では今年6月18日(2012年)メキシコで開催の20カ国・地域(G20)首脳会議の際、野田首相とプーチン露大統領が初の日露首脳会談を行った後、日本側は領土問題の交渉を再活性化させることで一致したと発表、野田首相の外交成果としたが、実際には両者共、「領土交渉の再活性化」という言葉を使っていなかったことが判明している。
その時の「NHK NEWS WEB」記事(2011年6月19日 7時5分)が紹介している両者の発言。
プーチン「双方が受け入れ可能な解決策で決着させ、終止符を打ちたい」
野田首相「解決しなければならない問題だ。これまでの諸合意、諸文書、法と正義の原則に照らして、実質的な協議を始めたい。『始め』の号令をかけたい」
プーチン大統領は領土問題に「終止符を打ちたい」と言っているが、「双方が受け入れ可能な解決策」とは日露両国の国益にとっては二律背反をなすゆえに、国益が一致しない終止符ということになって、果たして実現可能なのだろうか。
また、野田首相の「『始め』の号令をかけたい」は願望を述べた発言であって、「領土交渉の再活性化」を両者の合意のもと、宣言した発言ではない。
要するに「領土交渉の再活性化」なる舞台設定は野田首相の外交得点を上げるためのお膳立てに過ぎなかったということなのだろう。
では、今回の野田・プーチン首脳会談内容を見てみる。《北方領土問題 12月に首脳会談へ》(NHK NEWS WEB/2012年9月8日 16時41分)
先ず経済関係について。
プーチン大統領「日ロ両国の貿易は拡大している。経済関係の強化のために、もう一歩、踏み出したい」
野田首相「ロシアがアジア太平洋地域に関心を高く持つようになったことを歓迎している」
私自身はロシアの言う領土交渉はロシアが日本からの経済協力の取り付けと経済関係のより強固な密接化を通したロシアの経済発展を目的としてバラ撒いている撒き餌に過ぎないのではないのかと疑っている。
少なくとも現状は北方四島をロシアの領土としたまま、ロシアが望む方向に進んでいる。
この状況に於けるロシアにとっての有利な点は露日の経済関係が密接化する程、経済的な相互依存関係も密接化し、政治とは無関係に後退不可能となるということである。
後退した場合、両国の経済に深刻なダメージを与えることになる。特に日本はロシアの原油や天然ガス等のエネルギーに依存することになるだろうから、深刻度は強まることになる。
この露日の経済的相互依存関係の極度の密接化による経済関係の後退不可能性とは、北方四島の帰属といった政治問題とは別に相手国の経済に対して相互に生殺与奪の権を握ることになるということでもあるはずだ。
このことがブレーキとなって、北方四島の政治問題には手をつけることができなくなる可能性も生じる。
いわば日本は北方四島問題が解決しないからといって、ロシアの経済から撤退することは不可能となる。
ロシアが望むことであり、ロシアの狙い目はそこにある、最善の状況ということではないだろうか。
だとすると、ロシア側は冷徹な計算に基づいた対日外交を展開していることになる。
領土問題について。
野田首相(メドベージェフ首相の今年7月3日の国後島訪問念頭に)「協力を進めるためには、国民感情への配慮が必要だ。
最終的に領土問題を解決する必要性を確認し、静かで建設的な環境の下で、双方受け入れ可能な解決策を見つけるべく、首脳、外相、次官級で実質的議論を進めていきたい。年内12月をメドに、ロシアへの訪問を調整している」
プーチン大統領「世論を刺激せず、静かな雰囲気の下で解決していきたい。野田総理大臣のロシア訪問を歓迎したい」
記事解説。〈両首脳は、北方領土問題の解決に向けて、ことし秋に次官級の協議を行うとともに、12月をメドに野田総理大臣がロシアを訪問して、改めて首脳会談を行うことで一致し〉たと言う。
その夜、記者会見に臨んだ。
野田首相「プーチン大統領とは2回目の会談だったが、中身の濃い議論ができた。オホーツク海でのカニの密漁対策などで実質的な進展もあった。
領土問題については、静かな環境でしっかり議論していこうと、改めて合意することができたので、外務事務次官、外務大臣などの協議を経て、最終的には、また大統領と直接、じっくりと議論して、お互いに納得のできる最終的な解決案を見い出していきたい」
野田首相は「中身の濃い議論ができた」と自らの外交を評価し、「カニの密漁対策」や「領土問題」を成果の対象としている。
プーチン大統領の方は、多分、露日の「経済関係の強化」のみに成果の対象を置こうとしているはずだ。
この見方が間違っていないとしたら、野田首相側から言うと、同床異夢と言うことになりかねない。
野田首相自身も、「双方受け入れ可能な解決策」に言及している。一国のリーダーであり、「決める政治」を標榜としている以上、どのような解決策があるのか、頭に創造していなければならない。
何かあるはずだと漠然とした思いで「双方受け入れ可能な解決策」を言っているわけではあるまい。
記事は次のように結んでいる。〈ロシアは、領土交渉を継続する姿勢を示しつつ、日本の自動車メーカーの誘致や、原油と天然ガスの輸出を増やすなど、日本との経済協力を進めて、立ち遅れたロシア極東の底上げにつなげたい考えです。〉――
非常に示唆的な結びとなっている。
プーチン大統領の「世論を刺激せず」の発言は、野田首相のメドベージェフ首相国後島訪問を念頭に置いた、「協力を進めるためには、国民感情への配慮が必要だ」に応じた言葉でもあるはずだが、国民感情や世論は何も日本国民だけのものではない。ロシア国民の感情や世論も計算に入れた「世論を刺激せず」であろう。
問題はどちらの世論に重点を置いているかだが、断るまでもなく、それぞれが自国の世論に重点を置くことを責任としているはずである。
北方領土問題に関してロシア国民の世論を刺激する材料は北方四島の返還を措いて他にないはずだ。北方四島返還に関わるロシア国民の世論調査を見てみる。《ロシア 領土返還反対が90%》(NHK/2011年2月19日 6時5分)
ロシア民間調査機関「レバダ・センター」の2月11日~13日、ロシア全土1600人対象、18日公表の調査だそうだ。
北方領土の日本への返還について
「賛成」―― 4%
「反対」――90%
「反対」の推移
ソビエト崩壊直前の20年前の調査――67%
愛国主義的な傾向が強まった2002年以降――80%台
記事はこの傾向を、〈ロシアでは、今月7日の「北方領土の日」に、菅総理大臣がメドベージェフ大統領の国後島訪問について「許し難い暴挙だ」と述べたことや、東京のロシア大使館前で右翼団体によってロシアの国旗が落書きされたことが大きく伝えられ、こうした動きに対する反発の表れではないかとみられています。〉と解説しているが、何よりもロシア国民が大国としての自信を通り戻していることが背景にあるはずだ。
プーチン大統領は90%か、変化があったとしても90%前後の北方四島返還反対のロシア世論に対して「世論を刺激せず」の配慮を何よりも示さなければならない。
日本の世論に対する配慮のみだと考えるとしたら、甘い考えとしか言いようがない。
当然、プーチン大統領が自身の政治的な地位の保全をも含めた利害からロシア国民の世論に配慮した場合、北方四島返還とは逆の方向に行動を取らざるを得ないことになる。
このように疑いを進めていくと、野田首相の「中身の濃い議論ができた」はプーチン外交の冷徹さと比較して厳しい目、冷徹さを欠いた大甘の自己評価に見えてくる。
厚生労働省の2013年度予算は2012年度当初予算比2・9%増の30兆266億円で、初めて30兆円を超える概算要求額となったという。
どのような内容か、《30兆円の大台突破 医療イノベーションに411億円 厚労省平成25年度概算要求》(MSN産経/2012.9.5 10:28)から見てみる。
1 医療・環境等3分野対象の予算上乗せ要求が認められている特別重点・重点枠での要求計1088
億円計上。
人工多能性幹細胞(iPS細胞)を用いた創薬の研究支援など「医療イノベーション」の推進に41
1億円計上
再生医療実用化、革新的医薬品開発を世界に先駆けて行う医療イノベーション推進が柱で、臨床
研究中核病院を新規7カ所整備、がんや難病治療法の開発支援等を盛り込む。
2 保育所待機児童解消に4612億円計上(2012年度当初予算比7・2%増)
受入れ児童数約7万人拡大
保育ママ、1万人から1万3千人へと拡大
延長保育58万人から60万2千人へと拡大
病児・病後児保育を延べ143万7千人から延べ171万8千人へと拡大
3 生活保護受給者や社会的孤立者への支援策に142億円計上
就労支援や家計相談を行う総合相談窓口のモデル事業実施。
現金給付」が原則の生活保護の住宅扶助費は自治体が家賃を直接大家に納入、住居を提供する
代理納付の積極的活用への予算も要求
等々であるらしい。
問題は、「世界に先駆けて行う」と謳った「医療イノベーション推進」事業である。
果たして医薬品に関して、あるいは新薬創出に関して、現実に「世界に先駆けて」いる状況にあるのだろうか。
確かに日本は世界第3位の「オリジン新薬数」を数える新薬創出国となっている。だが、2008年新薬創出第1の米国の49に対して日本は12である。第2位イギリスの16に対しても4の差をつけられている。
「ピカ新(特許を伴うピカピカの新薬)」の開発には10年100億円以上の時間と費用が掛かると言わているそうだが、4の差はそれぞれの開発年数と開発資金を足し算すると、40年・400億円の差と言うこともできる。
4の差でも決して小さくはないはずで、アメリカに対する45の差は圧倒的で、まさに足元にも及ばない状況にある。
インターネットで調べた医薬品の貿易収支を見てみる。
医薬品輸出額
2005年34億ドル――2011年45億ドル(1.3倍増)
医薬品輸入額
2005年83億ドル――2011年216億ドル(2.6倍増)
貿易収支
2005年49億ドル赤字――2011年171億ドル(3.5倍マイナス増)
医薬品の最大輸入国はドイツで、アメリカは第2位となっているが、ガン細胞だけを狙い撃ちにする分子標的薬は2000年以降、日本発のガン分子標的治療薬は創出されていないそうで、圧倒的に外国産ということらしい。
以上見てきた新薬創出に関わる諸々の創造性欠如はスーパーコンピュター「京」が補ってくれるわけではあるまい。コンピューターは計算を早くするが、基本的には開発や発明、経営に関わる人間の創造性の代用をするわけではない。
こういった日本医薬品状況にあるにも関わらず、「世界に先駆けて行う」と謳って、「医療イノベーション推進」事業に411億円を、その全てを再生医療実用化や革新的医薬品開発等にかけるわけではないだろうが、計上している。
「世界に先駆けて行う」と謳いながら、そうはなっていない現状を急激に変革するだけの力を持っていない日本の実力を素直に考えた場合、世界に先駆けるといった実力不相応の思い上がった考えに取り憑かれるのではなく、世界と共に医療イノベーションに取り組む姿勢に方向転換した方が懸命ではないだろうか。
例えば世界の大学・研究機関・ベンチャー企業に共同研究を提案・募集する。だからと言って、日本国内に共同研究の拠点施設を設けるのではなく、各拠点と対等の関係でテレビ会議システム等を活用して、随時会議や研究報告等を行う。
このメリットは改めて言うまでもなく、開発期間の短縮・開発資金の軽減ばかりか、ガンその他の難病を抱える患者により早い時間に朗報をもたらす機会となるはずである。
さらに日本人研究者に外国人頭脳と交わり、その考え方・発想・創造性等々を学ぶ体験機会となって、何らかの好ましい影響を与えるはずである。
研究・開発の国別タテ割り状況を排除、世界をステージとしてこそ、貧しい発展途上国の5歳以下の子供1000人当たりの 死亡率200(5人に1人の死亡)を早急に改善させる力ともなり得るのではないだろうか。
こういった発想は日本の国益とならず、実威力が伴わなくても、やはり「世界に先駆けて行う」と謳って、大金の予算をかけ、「医療イノベーション推進」事業の推進に邁進するのが日本の国益ということなのだろうか。
細野環境相が民主党代表選に出馬するのかしないのか。2012年9月7日03時05分発信の「YOMIURI ONLINE」は「細野氏、党代表選出馬の意向を首相に伝達へ」と題して記事を伝えているが、ほぼ同時間の2012年9月7日3時3分発信の「asahi.com」は「細野氏、出馬見送る意向 民主代表選 原発対策を優先」と題した記事となっている。
いずれか、今日中に判明することだろうが、細野氏にしても野田首相にしても次期民主党代表となる資格があるだろうか。
先ず細野氏の資格から見てみる。
細野氏は福島原発以後、首相補佐官兼政府・東電統合本部事務局長を務めていた。放射能被害から住民の生命を守る危機管理も重要な役目としていた。2011年5月2日の記者会見が細野氏の危機管理意識を見事炙り出していて、危機管理の適格性を物語ることになっている。
《政府・東京電力統合対策室合同記者会見》
細野補佐官「私自身この(SPEEDIの)5,000 件のシミュレーションが存在をしていたことを知りませんでしたし、またデータそのものについては見たことがございませんでした。
結果として、間違った情報を国民の皆さんにお伝えをしてしまったことに関しては、心よりおわびを申し上げたいと思います。その上で、更に御説明を申し上げますと、昨日夜そうしたデータがあるという報告を受けましたので、これは即時国民の皆さんにお知らせをすべきだろうと考えまして、本日こうして皆さんに報告をさせていただいているということでございます」
SPEEDIのデータの存在を見たことも聞いたこともないと言っている。そしてデータの未公表の理由を次に発言している。
細野補佐官「この5,000 件の中には様々なシミュレーションが含まれているわけでありますが、そうしたことを全て公開することによって、社会全体にパニックが起こることを懸念したというのが実態であります」
公表によって、「社会全体にパニックが起こることを懸念した」
懸念するにはSPEEDIのデータが「社会全体にパニックが起こる」ことが予想される程の放射能物質の拡散予測値を示していたことを知っていなければならない。
だが、細野氏はSPEEDIのデータの存在を見たことも聞いたこともないと逆のことを言っている。
如何なる情報の公表にしても、それが社会に与える影響を予測するにはその情報の内容を知っていなければならない。
内容を知らずして、情報公開した場合の社会に与える影響は予測不可能である。
もし細野氏がSPEEDIのデータの存在を見たことも聞いたこともないと言っていることが事実としたら、SPEEDIのデータ内容を知らないままに、その公表が「社会全体にパニックが起こる」と懸念したことになる。
発言自体の矛盾に気づかない合理的判断能力の欠如さえ示している。
細野氏は次いで、未公表を弁解している。
細野補佐官「ただ、私が改めて今日皆さんに申し上げたいことは、日本の国民というのは非常に冷静な国民でございまして、仮にそれが大変厳しい情報であっても、きちっとそれを皆さんに御説明をし、理解を求めればパニックを起こすことはないと考えております。従いまして、ここまで公表が遅くなったことにつきましては、本部の事務局長として心よりおわびを申し上げたいと思いますし、これからこうしたシミュレーションをした場合には、即時公開をして、国民の皆さんにもそれをしっかりと評価をしていただくことを約束申し上げたいと思います」――
日本の国民は冷静な国民で、正確な情報公開を手段とすればパニックを起こすことはないという認識を最初に持ってきて、初めて危機管理となる。
だが、最初に持ってくることはなかった。最初に持ってきたのは、「全て公開することによって、社会全体にパニックが起こる」という懸念であり、その結果の情報隠蔽であった。
情報隠蔽をしておきながら、日本の国民はパニックを起こすことはない冷静な国民だなどと後になってから言うのは取ってつけた後付けの口実に過ぎないことの証明としかならない。
この手順の間違いは危機管理能力の欠如そのものをも証明することになる。結果として住民は放射性物質の拡散方向とは知らずに北西方向に避難することになり、徒に放射能を浴びることとなった。
要するに日本国民はパニックを起こさない国民だと取ってつけることによって、SPEEDIの取り扱いに関わる政府の危機管理無能力の責任逃れを謀ったに過ぎない。
細野氏の発言自体が危機管理意識を全く欠いた発言となっているということである。
SPEEDIの公表によってパニックを予想したなら、そのパニックを可能な限り制御する方法を模索し、実行することも危機管理である。
例えば未公表のまま、放射能拡散方向である北西方向への住民避難の回避を図ることだってできたはずだ。
だが、公表もしなかった、北西方向への住民避難の回避も図らなかった。
どこに危機管理を見い出したらいいのだろうか。
住民の生命に対する危機管理能力を欠いた政治家が民主党代表としての資格を果たして有するのだろうか。
次に野田首相の民主党代表の資格。
野田首相は自らの政策とした消費税増税は衆院任期4年後の2014年以降だから、消費税増税は衆院任期の4年間は行わないとした2009年民主党総選挙マニフェストには違反しないとしてきた。
だが、消費税増税保安が成立した日の記者会見で次のように発言している。
野田首相「消費税を引き上げるということ、国民の皆様に御負担をお願いするということは、2009年の総選挙で私ども民主党は勝利をさせていただきましたけれども、そのときのマニフェストには明記してございません。記載しておりませんでした。このことについては、深く国民の皆様にこの機会を利用してお詫びをさせていただきたいと思います」
マフェストに書いてない消費税増税法を成立させたことの謝罪はマニフェスト違反であったことを認めたということであろう。
要するにこれまでのマニフェスト違反ではないという発言は強弁に過ぎなかった。
この強弁と謝罪の使い分けは、今後共、必要に応じて強弁と謝罪を使い分ける可能性を証明している。
だが、何よりもマニフェストは国民との契約である。また、マニフェストは国民との契約であると価値づけ、そのような強い認識を持ってこそ、いずれの政党も心して政策の構築に取り掛かることになる。
あるいは政権担当に向けた心構えをつくることができる。
国民との契約意識のないマニフェストでは選挙を戦う資格もなければ、当然、政権を担当する資格も失うことになる。
マニフェストに書いた政策で、できないものがあったなら、国民に説明して謝罪すればいいという考えは国民との契約でなければならないとするマニフェスト意識からすると、甘い認識としか言いようがない。
国民との契約であるという後退できない場所に自分たちを追い込んでこそ、しっかりとした決める政治が実行できるはずだ。
だが、野田首相は、野党時代、「マニフェスト、イギリスで始まりました。ルールがあるんです。書いてあることは命懸けで実行する。書いてないことはやらないんです。それがルールです」と言いながら、自ら国民との契約を破った。
契約破棄を免れるためには、増税前に衆議院を解散し、マニフェストに新たに消費税増税を掲げてから総選挙を戦い、増税を果たすべきだった。
国民との契約を破る政治家に果たして民主党の代表を務める資格があるだろうか。
政府が尖閣諸島を国有化に向けて地権者と約20億5千万円の購入で合意したと9月5日、マスコミが伝えている。
東京都が尖閣諸島の土地資産価値調査の上陸許可申請書を政府に提出したのは8月17日。
石原都知事は政府の不許可を見通してのことなのだろう、8月24日の記者会見で次のように発言している。
石原都知事「10月にも再調査を実施します。私も行きます。逮捕されるなら、それで結構ですけど」(YOMIURI ONLINE)
不許可でも逮捕を覚悟で強行上陸し、調査を決行するとしている。
この3日後の8月27日午後、政府は上陸不許可の回答を東京都に回答。
東京都は政府の上陸不許可をものとせず、調査続行の意志表示のためだと思うが、取り敢えず海上からの調査を9月2日に決行。チャーターした約2500トンの民間海難救助船を母船として、小型船やゴムボートで沿岸まで接近、海水の採取や水深の測定を行ったという。
東京都が上陸申請理由の主たる一つとした土地資産価値算定の実地調査は上陸を欠かすことはできない。
だが、政府が東京都に対して上陸不許可を回答した8月27日から9日後の9月5日に政府が地権者と20億5千万円の土地購入で合意したとマスコミが伝えた。
この間、政府が尖閣諸島に上陸して、土地資産価値算定の実地調査を行ったという情報はマスコミのどの社も伝えていない。
この20億5千万円の土地購入金額の算定は何を根拠に計算されたものだろうか。
当然、根拠の正当性を地権者と購入契約前に国民に対して説明責任を負うはずだ。
この20億5千万円の算定に関する憶測記事がある。《【尖閣国有化】地権者の負債が売却の原因か》(MSN産経/2012.9.6 01:29)
石原都知事(はこれまでの定例会見の発言として)「地権者には親族が失敗したりして、借財もあるんでしょうが、どういう財政事情か知りませんが、石原さんになら売ってよいとおっしゃっていただいた」
〈関係者や登記簿によると、ある金融機関は地権者の不動産に極度額20億円以上の根抵当を設定。負債が売却の原因になった可能性もうかがえる。〉・・・・・
関係者「必要な金があり、議会を通すという都の手続きは待てないということか。政府は地権者が必要な金額を調べ、その額を提示したのだろう。20億円ではなく、20億5千万円という額が物語っている」――
もしこの情報が憶測ではなく、事実であり、政府の算定根拠が借金の肩代わりであったとしても、その方法を直ちに不明朗・不当だと断じることはできない。
20億5千万円で借金の肩代わりする形で尖閣諸島の土地を購入、国有化によって、その金額をものとしない日本国家及び日本国民に寄与する利益は何か、国益上のメリットを提示して、国民に納得を得るという条件付きで借金肩代わりの土地購入額算定の正当性を得ることができるはずだ。
当然、金額算定の経緯は勿論のこと、国益上のメリットを国民に説明し、納得を得る責任を負うことになる。
だが、国民に対して一切の説明がないままに進められ、金額が決められた。
このことこそが不明朗であり、不当だと言わざるを得ない。
政府は東京都の上陸許可申請を尖閣諸島の賃借目的とした、「島の平穏かつ安定的な維持管理」が損なわれる恐れがあるとして不許可にしたそうだが、それが中国を刺激しないための「平穏かつ安定的な維持管理」であるなら、政府が「尖閣諸島は歴史的にも国際法上も日本固有の領土である」と常日頃から言っていることと、あるいは「尖閣諸島に領土問題は存在しない」と言っていることと矛盾するお題目となる。
いわば東京都が尖閣諸島を所有すると中国との関係がこじれる恐れが出る、中国との関係を平穏無事に維持することが国有化の目的であり、中国との平穏無事な関係を以って国益上のメリットだとするなら、政治の無能・無策を20億5千万円で穴埋めするようなものだろう。
関係のこじれを生じさせないためだけの日本固有の領土など、意味をなさない。
日本でタレントとして広い分野で活躍しているハーバード出のアメリカ人、パトリック・ハーランこと芸名パックンがインタビューに応えて日本の教育と文化について一言づつ述べている紹介記事がある。
《【転機 話しましょう】(74)タレント パトリック・ハーランさん いろんな挑戦が好機呼ぶ ローン返済のため来日、相方や伴侶に巡り合う》(MSN産経/2012.9.1 07:00 )
パックンが8月10日(2012年)日本テレビ放送「ネプ&イモトの世界番付」で日本の教育について述べた核心的な一言を、8月28日(2012年)当ブログ記事――《野田首相の竹島・尖閣日本固有領土学校教育は自律性排除の短絡的全体主義発想 - 『ニッポン情報解読』by手代木恕之》で取り上げた。
上記「MSN産経」記事の発言と関連しているゆえに、予めブログの一言を再度掲載してみる。
パックン(ハーバード卒)「アメリカはやっぱり自分の考えていることをうまく表現しなければいけない。アメリカの試験はそういうのがメインですよ。色々なことを知っているのじゃなくて、あなたはどう思っているのか。
これができると、後々凄い有利になるんですよ。日本の教育はたしかにデータは一杯習得するんだけど、自己主張ができない、交渉ができない、議論ができない。
だから、日本はいつも外交で圧倒されちゃうんですよ」
番組解説がこのことの結果が世界に於ける日本の存在感の希薄性、日本の首相の外交舞台での影の薄さを招いているといったことを言っていた。
「色々なことを知る」知識の集積は主として記憶力で事足りる。だが、「どう思うか・どう考えるか」の自己主張術・議論能力は記憶力のみでは事足りず、断るまでもなく思考能力の分野に入る。
自身の思考能力を介在させない、他者から与えられた知識・情報を記憶力のみに頼って行う自己主張・議論は他人の知識・情報の受け売りで終わり、当然、そこに自己を表現させることも、自己表現が可能とする自己の存在性を証明することもできない。
自分が自分であるという自己を表現するには「どう思うか・どう考えるか」の自身に独自な思い・考えを表現する思考能力こそが必要条件になるということなのだろう。
このことが自己の存在感を高め、それが一国の首相の場合は国の存在感につながっていくということであるはずだ。
だが、そうなっていない。その原因は日本の学校教育自体が「どう思うか・どう考えるか」の思考プロセスを置いていないからなのは言を俟(ま)たない。
学校教師が与える知識・情報は生徒の思考作用を介在させることで初めて、教師の知識・情報を拡大・変化、もしくは新規発想へ転換可能とすることができるが、思考プロセスを介在させていないために単に記憶作用のみの受容となって、単なる知識・情報(データ)の暗記で終わり、知識・情報の拡大・変化、もしくは新規発想への転換は望みにくくなる。
要するにパックンが言っていることは、「日本の教育はたしかにデータは一杯習得する」暗記教育に過ぎないとの指摘であるはずだ。
では、パックンが日本の教育と文化についてインタビューにどう答えているか。
日本の教育に関する一言は「ネプ&イモトの世界番付」での発言とほぼ共通している。
――日本で子育てしていますが、日本と米国の教育の違いは?
パックン「日本の教育は、言われたことを忠実に行う要素を重視していると思います。平均的に高い知識レベルの人を育てられる一方、米国に比べて議論の機会が少なく、自分の考えを発信する力が身につかない問題があると感じます」
――日本文化の好きなところは?
パックン「調和を大切にする『和の精神』は大好き。ただ、若い人にはもっとハングリー精神もほしいですね。他人を蹴落とさずに個人の向上心も強い新しい形の社会を作ってほしいです」
パックンは「暗記教育」という言葉を直接的には使っていないが、「日本の教育は、言われたことを忠実に行う要素を重視していると思います」という言葉遣いで、間接的に日本の教育が暗記教育だと、その構造を指摘している。
まさに教師が伝える知識・情報を児童・生徒が自分たちの思考能力を介在させずに丸のまま受け止めて(暗記して)自身の知識・情報とする暗記構造の忠実性を指している、「言われたことを忠実に行う」の指摘であろう。
授業で教師が教える知識・情報を忠実に暗記しておけば、テストの設問に困ることなく答えることができ、高い点のテスト結果を得ることができる。
勿論、この忠実性は日本人が思考様式・行動様式としている権威主義から発している。ここで言う権威主義とは上が下を従わせ、下が上に従う上下の関係力学で殆どすべてを律する日本人の相互的な存在性を言う。
この上下関係が人間関係に於ける相互の自律性(自立性)を阻んでいる。
このような権威主義性が学校教育にも反映されて、教師が発信する知識・情報を発信する形のままに児童・生徒が自分たちの知識・情報とする暗記教育となって現れている。
知識・情報の点で、児童・生徒が他律性に頼って、自律(自立)できていない姿を取っていると言い替えることもできる。
このような暗記教育は、教師と児童・生徒間の知識・情報の授受の場に「どう思うか・どう考えるか」の思考プロセスを省略していることによって可能となる。
いわば暗記教育に於いて忠実性と思考性は相反する価値観をなす。
「どう思うか・どう考えるか」、児童・生徒が自分なりの思考性を身に着けて初めて、知識・情報の点で他律性を離れて自律(自立)可能の姿を取ることができる。
日本の学校教育が暗記教育を構造としている以上、「平均的に高い知識レベルの人を育てられる」と言っている、「高い知識」にしても、自身の思考能力を介在させない、他者から与えられ、暗記した、思考的に自律(自立)していない他律性の「高い知識」ということになる。
自身の思考能力を介在させない、他者から与えられ、暗記した「高い知識」を思考原理・行動原理としているからこそ、マニュアル人間が存在することになる。
マニュアルに従わなければ、思考も行動も満足にできないというのは、そこに「どう思うか・どう考えるか」の自身の自律(自立)した思考性を介在させることができない代わりに、マニュアルが指示している考え方・行動の仕方を他律的に自らの忠実な思考原理・行動原理とするということであって、当然、そこには手本とするマニュアルに忠実に従う権威主義性を働かせていることになる。
よく言われる前例主義についても、同じことが言える。権威主義性を思考力学・行動力学としているからこそ、前例主義が成り立つ。
いくら「高い知識」を身に着けていても、他者から与えられ、暗記した他律的知識であるからこそ、「自分の考えを発信する力が身につかない」ということが起こる。
「自分の考えを発信する力」は他者から与えられた借り着の知識・情報ではなく、自律(自立)した思考能力を得て初めて可能となるということである。
パックンは日本の文化について、「調和を大切にする『和の精神』は大好き」と言って、価値観を置いているが、日本人は上は下を従わせ、下は上に従う権威主義を思考原理・行動原理としているのである。当然、その「和の精神」とは、上下の人間関係力学に影響を受けた「和」であるはずである。
いわば日本の「和」は下に位置する者が上に位置する者に対して忠実に従うことによって成り立つ。
この顕著な現れが下の地方が上の中央に従う中央集権であり、企業やその他の組織に於ける上司・部下の上下関係であり、学校や部活、あるいは芸能界に於ける先輩・後輩の関係であろう。
あるいは学歴の上下で人間を上下に価値づける学歴主義を挙げることができる。
日本人には白人コンプレックスがある。白人をより優秀だと価値づけ、日本人を下に置いた権威主義性からの心理現象であるのは断るまでもない。
多分、パックンは周囲の日本人が白人コンプレックスから彼を上に置いて大事にする人間関係の調和を「和の精神」の発揮だと勘違いしているのではないだろうか。
相互に自律(自立)し、そのような存在として認め合う、対等な相互性を持った「和の精神」であるなら、権威主義性を思考原理とすることもなく、行動原理とすることもないはずだ。
学校教育は教師と児童・生徒が相互に意見を言い、相互に知識・情報を発信し合うこととなり、暗記教育を構造とすることもないだろう。
部下が上司にペコペコと頭を下げることもないし、地方役人が中央の役人を上に置いて、中央集権体制とする国の統治の形を取ることもないだろう。
「和の精神」は悪くすると、ときに慣れ合いの精神となって現れる。下の者が上の者に慣れ合って平和を保つ慣れ合いである。
あるいは上の者が自身の無能と無責任を隠すために下の者に慣れ合う形を取る場合もある。
どちらも自律(自立)的な場所にまで自己存在を進めることができずに他律的存在で終わっているからこその慣れ合いの形を取った「和の精神」ということなのだろう。
「和の精神」が上が下を従わせ、下が上に従う、自律(自立)とは無縁の上下関係から発している精神性であるからこそ、権威主義に駆られて下の者に位置する者が上の位置を目指す向上心はあっても、「新しい形の社会」を目指す向上心はなかなか生まれない。
「新しい形の社会」とは、相互に自律(自立)した存在性と思考性・行動性を備えて活動する社会でなければならない。
だが、そういった社会を目指すどころか、上が下を従わせ、下が上に従う上下の人間関係で律した権威主義性を存在原理とした、あるいは活動原理とした旧態依然の社会に浸ったまま満足している。
結果として、外国人よりも劣る「自己主張ができない、交渉ができない、議論ができない」日本人的存在性を引きずることになっている。
記事は最後にパックンの経歴を次のように紹介している。
〈Patrick Harlan〉 1970年、米コロラド州出身。米ハーバード大比較宗教学部卒。同大卒業後の平成5年に来日し、福井市の英会話学校で講師として勤務しながら、アマチュア劇団で俳優として活躍。俳優活動を本格化させるために上京し、エキストラなどの仕事をしていた9年に吉田真さんとお笑いコンビ「パックンマックン」を結成した。NHKEテレ「テレビで基礎英語」、TBSラジオ「パックンマックン・海保知里の英語にThank you!」などに出演し、英会話などの本も手がける。
石原伸晃自民党幹事長が9月2日、鹿児島市で講演。《石原伸晃氏、総裁選に意欲「谷垣氏を支えるために政治をやってきたのではない」》(MSN産経/2012.9.2 17:35)
石原伸晃「私は谷垣総裁を支えてきたが、谷垣氏を支えるために政治をやってきたのではない。日本を何とかしなければならないとの思いでやってきた」
石原幹事長は一旦は谷垣総裁の再選支持を表明していた。しかし町村氏や石破氏、安倍晋三元首相の立候補の動きが谷垣再選待望の広がりとは逆方向の党内情勢と見て、自身も総裁選に名を連ねないことには総裁の位置につけているアピールとはならないと思ったのか、状況に応じては9月26日の自民党総裁選にチャンスをかける意欲が湧いてきたのかもしれない。
当然、総裁選立候補の意欲を湧かせた時点で谷垣再選支持撤回の合理的な説明が必要になる。結果として、上記発言のように婉曲的な言い回しの谷垣再選支持撤回と同時に同じく婉曲的な言い回しの総裁選立候補意欲表明となったに違いない。
だが、婉曲的なのはいいが、合理的な説明とはなっていない。
石原幹事長は「政治をやってきた」のは「日本を何とかしなければならないとの思い」からだと言っている。
その一方で、「谷垣総裁を支えてきた」
ということは、谷垣総裁が日本を何とかしてくれると思って、谷垣総裁を支えてきたことになる。
でなければ、「日本を何とかしなければならないとの思いでやってきた」ことと「谷垣総裁を支えてきた」ことが論理矛盾をきたす。
谷垣総裁が日本を何とかするだけの能力のない政治家だったが、「谷垣総裁を支えてきた」では整合性を全く失う。谷垣総裁と共に「日本を何とかしなければならないとの思い」で党幹事長という重要な役職をこなしてきたはずで、単に名前のアピールのために党幹事長職を引き受けていたとしたら、「日本を何とかしなければならないとの思い」は奇麗事でしかなく、ウソになる。
いわば、石原伸晃にとって谷垣総裁を支えることが日本を何とかする自らの政治であり、そうでなければならないはずだ。
にも関わらず、「谷垣氏を支えるために政治をやってきたのではない」と自らの論理矛盾に気づかずに小賢しげに堂々と口にする。
この頭の程度、鈍な合理性で果たして一党の総裁が務まるのだろうか。総裁の器とはとても見えないし、当然、日本の首相の器でもないということになる。
何れにしても、ここに来て谷垣総裁を支えることができなくなったということは、谷垣総裁を介してではなく、自身が表舞台に立って自らの手で日本を何とかしようと思い立ったということであろう。このことも、そうでなければならない。
このような心理の軌跡を描いたということは谷垣総裁が日本を何とかする器ではなかったと気づいたということでなければならない。
少なくとも石原伸晃自身程には日本を何とかする器でなないと見做した。
しかし谷垣総裁が日本を何とかする器ではないのは最初から分かっていたことである。
例えば野田内閣支持率が低く、民主党の支持率も自民党支持率を下回っていて、自民党が政権に復帰するチャンスの政治状況到来となっていた。だとしたら、「社会保障と税の一体改革」が消費税増税率は民主党と同じ10%であっても、社会保障制度改革の中身は全然違うのだから、一体改革という、その一体性の点で賛成できないと、当初は消費増税法案否決・解散総選挙の構えを基本姿勢としていた公明党の協力を得て参院で否決すれば、簡単に解散を得ることができたはずだが、消費税増税という面倒なことは民主党政権で片付けてしまおうとよからぬ色気を出したのだろう、与野党協議に乗ったものの、解散を条件とした3党合意でも解散させることができず、谷垣・野田会談で早期解散を要求、「近いうちに信を問う」という当てにもならない言質を取っただけで、「近いうちに」がいつのことか確約と程遠い約束となり、「国民の生活が第一」以下の野党参院提出の、議会制民主主義の点から3党合意反対、消費税増税反対の問責決議に自民党が賛成するという自己否定までやらかす戦術の間違いを犯したのは解散を焦る余りの軽挙妄動としか言いようがない。
谷垣総裁は政治家としてこの程度の戦術家であった。
問題は、「谷垣総裁を支えてきた」と言えば聞こえはいいが、石原幹事長が党幹事長として谷垣総裁の戦術に付き合い、共同演出してきたということである。
要するに政治家の器という点で、似た者同士ということではないか。
この点からも自民党総裁の器ではないし、一国の首相の器ではとても程遠いということになる。
何はともあれ、石原幹事長が、「日本を何とかしなければならないとの思いで」政治を「やってきた」ことと、幹事長として「谷垣総裁を支えてきた」ことが、「谷垣氏を支えるために政治をやってきたのではない」こととどうつながるのか、合理的な整合性を持った自身による意味づけを国民に対する説明として求められる。
9月2日(2012年)のNHK「日曜討論」で「国民の生活が第一」の小沢代表が岡田副総理や谷垣総裁等、各党の代表と各別個に出演、司会者の「政治はどう動くか」の問に答えていた。
小沢代表の場合、日程の都合で「日曜討論」のスタジオで8月31日に収録したものだそうだ。
全発言を文字化してみた。
司会「終盤国会の問題からお聞きしたいと思うんですが、先ず野田総理大臣に対する問責決議を参議院で可決をされました。どのように見ていますか」
小沢代表「まあ、我々は衆議員で先ずは強行採決、3党合意なるものの中でですね、その時点で問責を既にずうっと出しておったんですね。
しかし、あのー、自公が先ず消費税に賛成するということになりまして、その後、ここには僕は理解できないんですが、大増税に賛成しておいて、問責とか不信任とか、全く不可解なんですけれども、いずれしろ、私共は自民党からそういう話があったんで、それは既に我々は消費税増税反対ということで、問責決議を既に出していると。
まあ、我々のこの問責決議に同調するならば、それはそれでどうぞと、いうことに最終的になって、それで我々の消費増税はけしからんと、民自公の3党の談合はけしからんという意味での問責決議案を可決したということで、えー、私共としては我々の主張が通ったというふうに思っています」
司会「そうした取り組み方と関連するんですが、まあ、通常国会全体を振り返ってという点ですね、『国民の生活が第一』、民主党を離党して新しい政党をつくった。
えー、存在感、発揮できたとお考えですか」
小沢代表「我々の主張はですね、勿論国会の場で、えー、色々議論し、理解されることが、あの、大事なことは勿論ですけども、一番大事なのは、それは国民の皆さんに届いているのか、理解されているのか。あのー、一番の問題であって、私たちとしてはこの3年前のマニフェストに全くなかった、そして先ずはムダを省くこと、色んな改革を断行すること、ということであって、消費税はその後だと、我々の主張が全く覆されちゃって、それで消費税一本槍になってしまったと。
それは国民のみんなに対する背信行為になると、ウソをついたことになる。
これは認められないということで、非常に、あの、明快な、筋道の通った、あの、主張ですので、国民の皆さんにもお分かり頂けたんじゃないかと思っています」
司会「その消費税増税の方は反対したけど、成立したと。まあ、これからこの問題、どう対応していくんですか」
小沢代表「我々としては、あの、依然として消費税増税をすべきではないと。税と社会保障の一体改革と銘打ってますけれども、(軽く笑いながら)社会保障はどこかに行ったのか、全く見えなくなってしまって、増税一本槍になってますから、今日(こんにち)の経済状況、日本の経済状況、世界的な経済状況を見ても、大増税すべきでないと、いう要素もあります。
ですから、今度来るべき総選挙で我々はこの増税分の消費税増税は、あー、反対すると。そのための力を国民の皆さんに与えてくださいと、いうことを訴えたいと思っています」
司会「それとこの通常国会、通院の可能性があるが、衆議員の選挙制度の改革の問題と赤字国債発行法案などがありますが、端的に言って、これはどう対応、処理すればいいと、お考えですか」
小沢代表「あの、問責決議が、あの、可決されましたので、えー、総理自身が参議院の審議に参加することは不可能に事実上なっています。
いわゆる政府提案のものについては非常に実態としては困難な状況になったと思います。
議員提案については、若干要素が違うと思っています。けれども、それも与党や自民党も、どう考えているのかっちゅうことは結果として、影響されると思いますね」
司会「そうした問題も含めて、これから秋の政治、どういうふうに動く傾向かどうかという点で、話を進めていきたいと思います。
で、こちらに政治日程を書いてありますが(フリップを示す)、主なものを、最も有権者の方、関心がるのは野田総理大臣が言う、『近いうちに信を問う』、衆議院の解散・総選挙の時期、小沢代表はどの時期だというふうに考えますか」
2012年9月 8日 国会会期末
21日 民主党代表選
26日 自民党総裁選
10月~11月 臨時国会招集?
12月 来年度予算決定
2013年1月 常国会招集
7月 参院議員任期満了
8月 衆院議員任期満了
小沢代表「まあ、野田総理が何と言ったか、密室の話ですから、分かりませんけども、総選挙の時期、ここに書いてあります代表選と総裁選挙、これで誰になるのか、ということでも違うんじゃないでしょうか。
ただ、常識的には予算編成の前にするのか、後にするのか、ということだろうと思いますけどもね。
ただ、あのー、その国会、政府行政とは別にですね、国民の皆さんの気持からすると、もうこんな状況では、そろそろ国民の信を問えと、声が、まあ、強くなってくるんじゃないでしょうかね」
司会「なる程、この秋がですね。そこでこの次の衆議院選挙を睨んで、小沢代表のところ、各地域の地域政党との連携、これを模索をしていると思うんですけども、中でも大阪維新の会、あの、秋には新党を結成する動きが出ています。
で、これについて、維新の会との連携、どういうふうにやっていくんですか」
小沢代表「あのー、今の国民の皆さんの心理は、あー、長い長い自民党政治ではダメだと。自分たちの暮らしは守れないと。
だから、もう思い切って民主党に政権を任せてみようと。
と言うことで、3年前の政権交代になったと思うんですね。
ところが、民主党にやらせてみたけども、約束は守れない。やるのは増税だけ。こんなんじゃダメだと。
ですから、既成政党に対して、民主党、自民党、公明党も含めて、既成政党に対しては拒否反応が非常に強いと思うんです。
と言うことは、そうではない、本当にやってくれそうな、新しいグループ・集団を期待するというのが国民の心理だと思います。
まあ、その一番の受け皿になっているのが、大阪維新の会だと思いますね。
ただ、新しい、我々も含めて、色んなグループがお互いにぶつかり合って、えー、単純にやってても、政権を獲るということにはなりませんので、私は維新と限らずですね、やはりこのまま民主党政権ではダメ、勿論自民党政権に戻してもダメ、という人たちがやはり力を合わせて、国民皆さんの意思を受け止めるようなグループをつくることが大事じゃないかと。
何も一つの党になる必要はないですけども、協力しあうという体制をつくることが大事だと思います」
司会「地域政党を含め、連合――」
小沢代表「そうです、そうです。色んな政党ですね」
司会「で、その中でも維新の会側は幹部の中では、小沢代表の党と連携に慎重な発言を聞きますが、その点はどうなんでしょうか」
小沢代表「それは色々な意見あると思います。ですから、維新の会が自分から単独で政権を取ると、言うんであれば、それはそれでしょうがないですけれども、客観情勢からすると、維新の会であれ、我々であれ、どこであれ、単独で過半数を取って政権を担うと、いうところまでは行っていないと思うんです。
そうしますと、国民の皆さんの思いは、それぞれ競合してぶっつかり合ってじゃなくて、力を合わせて国民のために頑張って下さいよというのが、私は国民の素直な声だと思いますので、私はその趣旨に従って、できる限り協力できるように力をしたいと思います」
司会「後ですね、政治課題についてお聞きしたいと思うんですが、原発ゼロ、消費増税反対、地域主権ですね。この三つを挙げています。端的に言って、このうち一つ代表的にお聞きしたいと思うんですが、消費増税、これについて反対と。法律ですね、それを言った場合、じゃあ――」
小沢代表「増税は廃止です」
司会「ああ、廃止ですね。その場合、じゃあ財源はどうなるのかって、いう、これ具体的に示す必要があると思うんですけど」
小沢代表「よく言い古された話なんですけどね(軽く笑いながら)、財源ないないと言っている人は、政治家もマスコミも評論家も含めて、今までずうっと半世紀以上続けてきた自民党の遣り方、行政の仕組み、それをそのまーんまにした、前提にして喋ってるんですね。
私たちは、その行政の仕組みも何も、予算の編成の遣り方も変えますと言って、国民に訴えて政権を、あの、受けたわけです。私どもは、あー、その民主党本来の主張をこれからも国民の皆さんに訴え、そして具体的に先ず言えば、予算の中で40兆円は、あの、色々な形で政治的な選択、決断のできる対象です。そん中で、あの、 相当なムダ遣いがあります。私――」
司会「40兆円の中で――」
小沢代表「40兆円の中で。ですから私たちは政治的な優先順位をきちんと決めて、ムダを省けば十分財源は出てくると思っています」
司会「最後に一点ですね。衆議院選挙の話に戻ります。小沢さんの新党、何人ぐらいの規模の候補者を擁立したいのか、どうなんでしょうか」
小沢代表「来週には現職の人の予定者を決めたいと思っていますが、その後順次増やして、えー、できれば100人前後、我が党だけで擁立したいと思っています」
司会「ハイ、ありがとうございます」(以上)
小沢代表の言う財源捻出が事実可能かが問題となっていて、疑う向きが非常に多いと思うが、8月31日(2012年)当ブログ記事――《野田首相の問責可決でも「やるべき仕事を静かに粛々と進める」は支持率の高い首相が言うこと - 『ニッポン情報解読』by手代木恕之》に8月27日月曜日朝日テレビ放送「ビートたけしのTVタックル」出演の元経産官僚古賀茂明氏が話す財務省の予算の付け方を取り上げたが、その発言が小沢氏発言の事実証明となる。
改めてここに記載してみる。
古賀茂明大阪市統合本部特別顧問「(財務官僚が予算を)配るときにね、要するに自分たちの力っていうものを見せることが大事なんですよ」
ビートたけし「うちのカアチャンみたいなんだ。(カネを配る手つきをして)トウチャン、いらないんだってことを」
古賀茂明特別顧問「そう。だから、大体予算要求してから、11月ぐらいまでは、『くっだらない予算だな、こんなのゼロだよ』って。
で、12月になって、もう殆どそんとこ決まってるんですけど、一生懸命通ってですね、足繁く通って、『お願いします。お願いします』ってやるじゃないですか」
阿川佐和子(司会者)「財務省に?」
古賀茂明特別顧問「ええ。そうすと、(顎に手を当て、顔を下に向けて考えこむ仕草となり)『うーん、やあ、そこまで言われると』とかね。
それで最後に一寸ずつ、『じゃあ、これだけ付けますよ』って言うと、(感謝で頭を下げる仕草)『ありがとうございます』ってなるじゃないですか。
例えば10億要求してたのを5億で決着するときに、先ず、『ゼロですよ』って言うんですよ。で、『やあ、熱意に負けました、3億です』、『もう一寸頑張ってきます』とか言って、『4億まで取れました』とか言うと、もうみんなありがとうと――」
〈古賀氏が描く財務官僚の予算折衝は単なる金額の駆引きとなっているに過ぎない。値切られる一方であったなら、予算額は減少し、赤字とはならないはずだが、値切られる方も、値切られることを承知していて、この手の予算はどのくらい、別の予算はこのぐらいと値引き額を予想していて、前以て予算額を底上げしている、あるいは水増ししているだろうから、落とし所が決着して、「有り難うございますっ」と深々と頭を下げて大感激の様子を見せたとしても、相手に花を持たせる演技に過ぎず、相手にしても予算は自分が取り仕切っていると思い込んで虚栄心を痛く満足させることができるだろうが、財政再建とは無関係の力学を取って予算額は減少せず、増額一方となり、赤字予算で手当しなければならなくなるといった経緯を踏んでいると解釈しなければ、先進国随一の赤字国という説明がつかない。
要するに事業の必要性と費用対効果、あるいは国民生活に対する利益寄与の面から議論・折衝して予算額を決定づけていく予算編成ではなく、単なる金額交渉に堕している。〉(以上)
予算折衝が事業の必要性を徹底的に議論した中からの算出ではなく、単なる金額の駆引きからの算出となっている以上、ここに無駄が生じないはずはない。
この体たらくなのだから、小沢氏の言っていることの正当性は確信できるはずだ。
9月1日(2012年)「防災の日」、午前7時、東京湾北部を震源とするマグニチュード7.3、最大震度6強の地震が首都圏を中心に広い範囲で発生したとする首都直下地震の発生を想定した、野田政権全閣僚参加の政府防災訓練が実施された。
野田首相自身が関わったどのような訓練内容か、どのような時間的スケジュールだったのか、時事ドットコム「首相動静」(9月1日)と、首相官邸HPの《平成24年度総合防災訓練》(2012年〈平成24年〉9月1日)、その他から見てみる。
午前8時10分~12分 総合防災訓練臨時閣議。(2分間)
13分~33分 総合防災訓練第1回緊急災害対策本部会議。(20分間)
50分~53分 総合防災訓練記者会見。(3分)
午前9時 5分~32分 総合防災訓練第2回緊急災害対策本部会議。(27分)
10分 国会前庭から陸上自衛隊ヘリコプター横浜市中区横浜海上防災基地ヘ
リポート同9時21分着。
24分 海上自衛隊の特務艇「はしだて」乗船、艦内視察。
川端達夫総務相、羽田雄一郎国土交通相、森本敏防衛相、中川防災担
当相同行。
32分 特務艇で同基地発。「9都県市合同防災訓練」の概要説明聴取。
午前10時55分 横浜市西区の合同防災訓練会場着。
黒岩祐治神奈川県知事、林文子横浜市長が出迎え、同訓練を視察。
午前11時35分~38分報道各社のインタビュー。(3分間)
記者「訓練に参加した所感を」
野田首相「東日本大震災の教訓を受け、政府としてもしっかりと対策に万全を期していきたい」
午後0時(正午) 閉会式挨拶。陸自ヘリで官邸帰着。
野田首相の防災訓練に関わる公務は以上である。以上を「異常」と当て字すべきかもしれない。
午前8時13分から33分まで、総合防災訓練第1回緊急災害対策本部会議を20分間、午前9時5分から32分まで、総合防災訓練第2回緊急災害対策本部会議を27分間、それぞれ開催している。
では次に首相官邸HPから、防災訓練に関して尤もらしげに謳った能書きを見てみる。
先ず首都直下地震発生想定後の行動として、次のように記述している。
〈閣僚安否確認の訓練を行うとともに、総理大臣官邸での地震災害応急対策の実施体制の確保等を図る政府本部運営訓練においては、第1回緊急災害対策本部会議を開いた後、野田総理は総理大臣記者会見で、緊急災害対策本部の設置、政府の対処方針の発表、国民への呼びかけを行いました。〉・・・・・
最初に閣僚安否確認の訓練を実施。
次に第1回緊急災害対策本部会議を開催、地震災害応急対策の実施体制の確保等を図る政府本部運営訓練を実施。
要するに人命救助や被災者避難、食糧・衣料・医療、避難場所確保等の生活支援、火災消火、あるいはインフラ復旧等の実施体制を確立し、運用するための各現地対策本部や各被災自治体間の情報共有に基づいた指示・情報収集等を如何に的確・迅速に行なって、政府本部を如何に的確・迅速に運営するかの訓練を行ったということであるはずだ。
これが20分。
午前9時5分から32分まで27分間開催した総合防災訓練第2回緊急災害対策本部会議に関しては、〈第2回緊急災害対策本部会議が開かれ、各省庁業務継続計画に基づく非常時優先業務の立ち上げ状況確認等が行われました。〉の記述となっている。
要するに各省庁から非常時優先業務の立ち上げ状況の報告を受け、確認を行ったということなのだろう。
肝心要なことは午前8時13分から33分まで開催した総合防災訓練第1回緊急災害対策本部会議で実施したはずの人命救助、被災者避難とその後の生活確保(=生命確保)等の地震災害応急対策実施体制の確立とその運用・運営の訓練・シミュレーションであって、この訓練・シミュレーションは各被災自治体や現地対策本部間等の的確・迅速な情報共有・情報発信・情報収集等の相互的情報処理、さらに指揮命令系統の確立と運用が伴って初めて十全な機能を持ち得て、実際の災害時に活用可能となる。
だが、所要時間20分で、果たして以上の訓練・シミュレーションを役に立つ内容で十全に行い得たのだろうか。
この種の訓練とは、明日起きるかもしれないという緊急事態を想定して行うものであり、明日起きても、十分に役立つように万全を期す訓練でなければ、政府としての危機管理とはならないはずだ。
このような必要性は菅前首相が東日本大震災に於ける政府危機管理対応で情報共有や情報発信の不備・遅滞、被災住民支援の遅滞と不手際、指揮命令系統の混乱等を招いていることによって特に重要性と重点化を増しているはずである。
菅前首相が東日本大震災発生2011年3月11日から約4カ月半遡る2010年10月20日・21日に静岡県中部電力浜岡原子力発電所第3号機の原子炉給水系故障により原子炉の冷却機能が喪失、放射性物質が外部に放出される事態想定の、「原子力災害対策特別措置法」に基づいて行われた平成22年度原子力総合防災訓練に参加していながら、東日本大震災発生に際して、同じ「原子力災害対策特別措置法」に基づいて原子力災害対策本部本部長として菅無能に義務づけられている政府原子力災害対策本部設置と原子力緊急事態宣言の発令に、根拠となる法律の確認に手間取り、原子力緊急事態宣言の発令に至っては東電の政府通報から約2時間20分遅れる失態を演じている。
菅の頭から平成22年度原子力総合防災訓練がトンでしまっていたのである。
同じく浜岡原発事故想定の原子力総合防災訓練でSPEEDIを用いて浜岡原発漏出放射性物質の拡散方向と拡散量をシミュレーションしていながら、福島第1原発事故ではその公表が遅れたことに対してSPEEDIの存在を知らなかったと言い、同じ原子力総合防災訓練で首相官邸設置のテレビ会議システムを使用、オフサイトセンター(静岡県浜岡原子力防災センター)を介して浜岡原発、静岡県庁、中部電力本店とリアルタイムの情報交換と情報共有の訓練・シミュレーションを行なっていながら、東日本大震災発生時には活用することを忘れて、回線の維持費が年間計5億~6億円にも関わらず宝の持ち腐れにしたという。
どういった脳ミソなのか、訓練の最重要項目がすべてトンでしまっていた。
原子力総合防災訓練で政府が行うべき各種危機管理の訓練・シミュレーションを体験していながら、実際の場合の初期活動に於いて何ら応用することができなかった。
このような記憶喪失の結果の情報発信と情報共有の失態・混乱であり、被災住民に対する生活支援等の遅滞・不手際であろう。
そのくせ、菅無能は「情報が上がってこない、情報が上がってこない」と周囲に責任をなすりつける一方であった。
当然、「平成24年度総合防災訓練」は菅無能の危機管理対応機能不全を教材として、情報発信・情報共有等の情報処理の最適な在り様、被災住民の生活確保(=生命確保)等に添った各種支援の最適な在り様を重点目標とした訓練・シミュレーションでなければならなかったはずだ。
そのためにはこの訓練の法的根拠となる法律(「大規模地震対策特別措置法」だと思うが)に基づいて、内閣府への地震災害警戒本部の設置、警戒宣言の発令等々、条文の一つ一つをクリアしていく形で訓練・シミュレーションを行うべきで、一つ一つクリアしていくことによって全体的な危機管理を頭に記憶可能として、実際の災害発生時に記憶したその危機管理を生かすという手順を取らなければならない。
このような方法こそが、原子力総合防災訓練を役に立たないものとした菅無能の失態の二の舞を避ける賢明な方法でもあるはずである。
果たして明日起きても万全を期すことができるように訓練の法的根拠となる法律の条文を一つ一つクリアしていく訓練・シミュレーション所要時間20分で足りたと言えるのだろうか。
首都直下地震関係自治体である埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県の各県庁等に設置した政府現地対策本部との情報共有等の情報処理訓練・シミュレーションも含まれるのである。
マグニチュード7.3、最大震度6強の地震の場合、各自治体に於いてどのような被害が想定されるか、想定被害それぞれに対する救援対策、復旧対策、住民対策等々の報告を実際の地震発生時のように忠実に行うことによって、相互の情報連絡体制と的確な情報連絡方法の確認が可能となり、実際の地震発生時に応用可能な的確な情報共有等、あるいは的確な指揮命令等の機能的な危機管理へとつながっていく、
20分間の総合防災訓練第1回緊急災害対策本部会議で十分に実施できたとはとても思えない。
《野田首相“防災対策に万全を期す”》(NHK NEWS WEB/2012年9月1日 13時36分)によると、神奈川県横浜市・九都県市合同防災訓練会場では、破裂した水道管を塞ぎ、水を供給できるようにする応急給水訓練の様子を視察、地震の揺れを体験できる専用の車に子どもたちと一緒に乗って、震度7の揺れを体験、さらに炊き出しのカレーライスを試食したという。
野田首相は記者団に次のように発言している。
野田首相「多くの市民、ボランティアが訓練に参加しているのを見て、確実に防災意識が高まっていると感じた。政府の関係機関の連携を密にすることが重要であり、東日本大震災の教訓を受けて、これからも防災対策に万全を期していきたい」
所要時間20分からすると、口先だけの「政府の関係機関の連携を密にする」相互の情報連絡体制と的確な情報連絡方法の確立・運用の訓練・シミュレーションとしか受け止めることができない。
やるべきことを履き違えている。肝心なことを抜かして、炊き出しのカレーを試食している場合ではない。
――なぜ野田首相は金正恩に親書を手交しないのだろう―― 《2012-8.30 安倍晋三元総理大臣「知りたがり」生出演!》(デイリーモーション動画)
記事題名の「公式的な」の意味は、皆が同じように言っていることを言っているという意味である。
先ず8月29日、大阪市内開催の拉致被害者横田めぐみさん写真展を訪れた後、記者団の質問に答えた橋下大阪市長の“公式的な”発言。
《相手の嫌がることを=北朝鮮の拉致問題で-橋下大阪市長》(時事ドットコム/2012/08/29-19:25)
橋下市長(拉致問題に関する国政レベルの動きについて批判)「日本の国会議員を見ると、お坊ちゃんのきれい事をやっているようだ。
外交交渉には力が必要。そういう力を持っている国々との関係を密接にして、力を背景に交渉しないと物事は動かない」
多くの人間が同様に言っていることを言っているに過ぎない。
そして実際に経済制裁という「力」(=圧力)を背景に交渉しているが、成功していない。
非成功の唯一の理由は誰の目にも明らかであるように中国の存在である。中国が楯となって北朝鮮を守っている。北朝鮮の共産主義一党独裁体制が中国の安全保障上の地政学的カードとなっているからなのは今更説明するまでもない。
安全保障上の地政学的カードとなっている以上、中国は北朝鮮を自国の外交カードとして最大限に利用する。実際にも最大限利用している。
北朝鮮が民主化して韓国に吸収されるかして西欧諸国側に組み込まれた場合、背後の守りとなるロシアは別にして、正面の守りは裸同然の無防備となる。頼りとしていたミャンマーも民主化に走っている。
中国が望むのは北朝鮮が共産主義一党独裁体制を維持した状態で市場原理経済に向かい、中国の経済援助のもと、経済的に自立した万全な体制となることであろう。
そうなることは最終的には中国の財政負担の軽減と中国との連携を盤石とする北朝鮮独裁体制の安定化につながるが、北朝鮮を外交カードとして生かしておくためには核兵器保有の放棄は望まないのではないだろうか。
次に8月30日(2012年)、フジテレビ「知りたがり」に出演した安倍晋三元首相の拉致問題に関わる“公式的な”発言を主なところを拾って見てみる。
内閣官房副長官として小泉元首相と北朝鮮に渡り、5人の拉致被害者の帰国に道筋をつけたこと、5人の帰国を空港に出迎えたとき、横田夫妻が拉致被害者家族会の代表として記録しておくためにビデオカメラを回して5人を撮影した模様を説明。
安倍晋三「そこには横田めぐみさんの姿はなかった。ご両親が自身の手でめぐみさんを抱きしめるまで、私達の使命は終わらない。だが、10年経ってしまった。その使命を果たしていないというのは、申し訳ないと思う。
(拉致解決対策として)金正恩氏にリーダーが代わりましたね。ですから、一つの可能性は生まれてきたと思います」
伊藤利尋メインキャスター「体制が変わった。やはり圧力というのがキーワードになるでしょうか」
安倍晋三「金正恩氏はですね、金正日と何が違うか。それは5人生存、8人死亡と、こういう判断ですね、こういう判断をしたのは金正日ですが、金正恩氏の判断ではないですね。
あれは間違いです、ウソをついていましたと言っても、その判断をしたのは本人ではない。あるいは拉致作戦には金正恩氏は関わっていませんでした。
しかしそうは言っても、お父さんがやっていたことを否定しなければいけない。普通であればですね、(日朝が)普通に対話していたって、これは(5人生存、8人死亡)否定しない。
ですから、今の現状を守ることはできません。こうやって日本が要求している拉致の問題について答を出さなければ、あなたの政権、あなたの国は崩壊しますよ。
そこで思い切って大きな決断をしようという方向に促していく必要がありますね。そのためにはやっぱり圧力しかないんですね」
最後は今までやってきた「圧力」である。
「圧力と対話」と言いながら、「圧力」はアメリカに追随して有言実行できたが、「対話」を引き出す効果策に転換できないままにここまできてしまった。
「こうやって日本が要求している拉致の問題について答を出さなければ、あなたの政権、あなたの国は崩壊しますよ」と言っているが、既に触れたように北朝鮮の政権と国家崩壊の間際まで中国が手をこまねいて座視するわけはない。
そういった気配を感じ取ったっとき、中国は直接北朝鮮の国家経営に乗り出すはずだ。金正恩にしても、最高指導者の地位を維持していたいならの話だが、日本から、「あなたの政権、あなたの国は崩壊しますよ」と言われて、日本に縋るメンツよりも、なりふり構わずに中国に頼るメンツを優先させるのではないだろうか。
勿論、国家機密事項として公としない秘密裏の中国主導となるだろうが、例えその情報が国外に漏れたとしても、表向きは否定し続けるはずだ。
中国としたら、北朝鮮を外交カードとして生き返らせることだけが目的のはずだ。
但し逆に中国が先に民主化した場合、その望みは当面薄いが、北朝鮮は外交カードとしての価値を失うから、北朝鮮は孤立し、経済的な体制崩壊の危機は外に向かって暴発する危険性と裏合わせすることも考えられる。
と言うことは、現在の共産党一党独裁の中国は北朝鮮暴発の抑止力となっている側面も有していることになる。
民主化した中国に対して民主化できない北朝鮮の暴発の危険性は、民主化した中国の強力なリーダーシップのもと、北朝鮮の民主化を願うしかない。
現状に於いて北朝鮮に拉致問題解決を促すには北朝鮮に対して次の約束が必要となるのではないだろうか。
1.体制の保障
2.北朝鮮国家の名誉を守る
3.保有している核兵器の放棄は求めない
4.新規の核開発の凍結
5..拉致の責任及び処罰は求めない
6.拉致被害者には帰国後も北朝鮮で得た情報は口止めする
7.拉致被害者帰国後と共に国交正常化、そして戦争賠償と経済援助を行う
8.北朝鮮が政治的にも経済的にも安定し、政治的にも経済的にも西欧国家に開かれた国となった場
合、政治的にも経済的にも相互依存関係が進んで敵対国家が消滅、核兵器は必要なくなる。
9.必要なくなったと見做した時点で、核兵器の放棄を行う
以上の約束を北朝鮮が受け入れた場合、アメリカが北朝鮮の完全かつ検証可能な核開発計画放棄後に米朝関係の正常化、国交樹立、エネルギー支援、経済的支援等を約束しているが、日本はアメリカと協議し、北朝鮮が経済的・政治的安定後に核開発の放棄を求めるよう政策転換を促し、アメリカが承諾した場合、双方の約束の履行に移るとする。
経済発展によってのみ、為政者の威信と名誉は守られることを伝えるべきだろう。民主国家に於いて経済政策の失敗が指導者の交代を国民に求められる最大の要因となる。
経済発展を果たしたとき、金正日が提唱した故金日成国家主席生誕100年の2012年4月に思想大国・軍事大国・経済大国を実現して、「強盛大国の大門を開く」と国民に約束した国家目標が、生誕100年に間に合わなかったものの、約束を反故とせずに実現可能となるとことを伝える。。
当然、金正恩は指導者としての栄誉を獲得できることになる。
但し思想大国・軍事大国・経済大国のうち、軍事大国は経済発展の支援の代償として国力相応の軍事力を求めなければならない。
実際、国を開くことができれば、国力不相応の軍事力は必要なくなる。
核兵器放棄時、北朝鮮軍が反発を示すかもしれないが、経済発展によって金正恩が国民の支持を得た場合、軍と言えども反対はできないはずだ。
以上の提案が有効と考えるなら、野田首相は以上のことを親書に認(したた)め、説明役の特使に持たせて金正恩に直接手渡しする試みを行なってもいいはずだ。
有効でないというなら、それまでだが。
親書を手渡した当座は拒絶反応を示すかもしれない。例えそうであって、提案は頭に記憶され、現状以上に経済が困窮したとき、中国に依存するよりも、日本の支援によって金正恩自身が自らの手で失地を回復したいという指導者としての虚栄心と功名心に駆られることを期待した場合、日本の提案を真剣に考える可能性は否定できない。
父親金正日の名誉を守ることができるし、金正恩自身の名誉も守ることができるのである。「強盛大国の大門を開く」と国民に約束した国家事業を自分の代で実現できるかもしれないのである。