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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

海上自衛隊 平成21年度特別輸送訓練・対潜特別訓練実施中

2010-01-28 23:00:15 | 防衛・安全保障

◆日米合同:1月26日~28日・2月2日

 海上自衛隊は、現在、九州沖と東海・四国沖の海域で日米合同の洋上訓練を実施中です。海上自衛隊HPに実施情報がありましたので、本日はこちらを紹介。

Img_7973  平成21年度特別輸送訓練は、日米の輸送艦・揚陸艦との間での協同訓練を行い、連携要領を演練して、両用戦能力の向上を目指す訓練です。行われているのは1月26日から本日28日までで、明日29日が予備日に指定されているとのこと。演習海域は九州西方で、訓練統制官は、第一輸送隊司令佐々木俊也1佐と米海軍揚陸艦艦長。海上自衛隊からは輸送艦おおすみ、くにさき、が参加、米海軍からは艦名が発表されていないのですが揚陸艦一隻が参加。LCACの運用訓練や戦術行動、艦艇相互研修が行われ、輸送特別訓練は今回で五回目とのこと。

Img_5928  海上自衛隊HPに記載されていたのは以上です。海上自衛隊の輸送艦といえば、1998年に、満載排水量14000㌧の、おおすみ、が就役するまでは4000㌧で、そのまま接岸する、みうら型輸送艦までで、日米の合同訓練を行うには能力的に問題がありました。おおすみ型三隻が整備され、最近はエアクッション揚陸艇LCACを運用するようになり、かなり陸上から離れた海域で、つまり陸上からの揚陸艦に対する反撃が想定できないほどの位置から運用することができるようになったのですけれども、今日、その位置づけは変化しつつあるようです。

Img_7849  そういいますのも、近年、米海軍では陸上から本格的な反撃が予想できるような上陸任務の可能性が減少していることから、LCACについて、その位置づけを見直しつつあるそうで、しかし、より大型のエアクッション揚陸艇を開発する構想や、水陸両用装甲車AAV-7の後継に、より高性能で調達価格も大きいEAVを開発していることもありまして、いったい米海軍が今後、どのように両用作戦を実施してゆくか海上自衛隊としても関心事となることでしょう。これらの展望、訓練や指揮官交歓を通じて得られるものは非常に多いのではないでしょうか。

Img_7709  同時に日米で、対潜特別訓練が実施中です。対潜特別訓練は、1月26日から2月2日まで、東海地方沖から四国沖までの海域で実施されています。この訓練は、昭和32年から実施されていて、今回で118回を迎えるとのこと、一年間に数回行われていることになります。訓練統裁官には、海上自衛隊からは潜水艦隊司令官である永田美喜夫海将が、米海軍からは第七潜水艦群司令のマイケルJコナー(Michael J. Connor)海軍少将が当たっており、対潜戦の訓練を実施している、とのことです。

Img_7895  参加部隊は、海上自衛隊から、護衛艦7隻、潜水艦5隻、訓練支援艦1隻、航空機20機。米海軍からは潜水艦1隻が参加しています。海上自衛隊HPに公開されている情報は以上です。護衛艦7隻、となるとかなりの規模ですが、日米併せての潜水艦は6隻、うち一隻は米海軍ですから原子力潜水艦、ということになるのでしょう。それにしても、対潜戦の訓練ということですから、米海軍はもう少し駆逐艦などを訓練へ参加させてもいいのでは、と思う次第、米中関係を考えれば、日本の高性能なディーゼル潜水艦との訓練は非常に有意義では、といえるからです。

Img_7721  海上自衛隊の潜水艦について、騒音が大きいのでは、という誤解があります。これは、潜水艦の水中放音の一覧表で、もっとも大きい一隻に、海上自衛隊の、うずしお型潜水艦の名前が挙げられていたからなのですが、うずしお型潜水艦のガタピシ音は当時、海上自衛隊部内でも問題とされ、米海軍からも指摘されていました。シャフト部分に起因するようなのですが、ゆうしお型、はるしお型、おやしお型、そうりゅう型を型式が新しくなる一方、一覧表には、うずしお型以外の潜水艦が載せられないことに起因している一つの誤解で、最近の潜水艦では顕著なガタピシ音の話は幸い出てきません。

Img_5836  日本は原子力潜水艦を運用していないのですが、米海軍の潜水艦は全て原子力潜水艦です。発電機で逐電してバッテリーにより運用される通常動力潜水艦は、航続距離に限界があり、一方で原子炉から事実上無限の動力を得られる原子力潜水艦は航続距離が実質的に無限大です。しかし、原子力潜水艦は、行動中も原子炉から動力を得る必要があるので、内部のギアなどは常に動いたままの状態となっています、ここから少なくない音が漏れる、そして航空機や水上艦から、この音で発見される訳です。

Img_7706  他方で、通常動力潜水艦はバッテリーを用いている期間、かなり静かに行動することができるという利点があります。そして、中国海軍は、この種のディーゼル潜水艦を保有していて、近年までは戦時中のUボートをコピーしたソ連製の潜水艦を複製改良したものを建造していたのですが、ロシア製の高性能通常動力潜水艦の導入などを進めています。中国製潜水艦の国産技術も進歩はしていまして、米海軍は少なからず警戒しているのですよね。そういう意味から、対潜特別訓練は、もう少し米海軍が参加しても、と思いました次第。他方で、海上自衛隊は、米海軍が原子力潜水艦を参加させてくれるということで、原子力潜水艦を目標とした訓練ができますので、この点、得るものは大きい訓練といえますね。

HARUNA

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コメント (2)
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