北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

名古屋鉄道社史(1960) 念願の一冊を古書店で入手!

2010-01-02 23:56:19 | 北大路機関特別企画

◆師走に入手したこの一冊

 古書店散策は、その昔は比較的安価に専門書を入手するため、昨今は神川彦松先生の著書を探すための一つのライフワークです。

Img_2134  そうした中で、十年来探していた一冊、というものとであったりすることは非常にうれしいもの。京都の古書店街は、いまや百万遍の古書店街が壊滅状態で、寺町も少なく、専ら神保町や鶴舞の古書店街の方が掘り出し物があるというのが実情、探している本は、京都でも掘り出すことができるのですが、東京う、名古屋の方が多いようにも。

Img_4332  師走にそうした散策の途上であったのは、1960年の名古屋鉄道社史。十数年前に一度だけ、貸していただいたことがあり、内容は、“新鋭電車の完成予想図”として今は無きパノラマカーの想像図が掲載されているほど、古い一冊。当時の主力特急は5500系で、フィルム時代に撮影したのみの車両、掲載されている電車は基本的に全て過去の車両である。

Img_2158  名古屋鉄道百年史と比べれば、草創期の都市間高速鉄道と地域密着市電統合の歴史、災害や戦争を乗り越えての躍進と、なるほど1960年の社史はドラマに満ちており、読みごたえのある一冊だ。実は、十年ほど前に、一度だけ古書店でこの一冊を見つけたのだが、当時としてはあまりに高く入手できず、永遠に入手出来ないかと思いきや、偶然入手できたのが今回、これだから古書店めぐりはやめられない。

Img_5035  5500系特急が見開きに掲載されている。1955年に登場した5500系は、日本最初の冷房付通勤車両として知られ、特急料金不要の特急車両体系に近代化の一歩を刻んだ歴史的車両である。片側2扉クロスシートで、通称タンコロ、名鉄の主力特急として活躍したが、21世紀の今日、全て廃車となってしまっている。

Img_5047  1960年にこの名古屋鉄道社史が刊行された時点では、このように7000系パノラマカーは新鋭電車として完成を待たれている状況。当然、5500系に続く名鉄の主力特急としての地位を約束された電車で、この車両も、今日では保管されている車両を例外として全て解体されてしまったのは寂しい限りである。

Img_5042  阪神大震災から間もなく十五年であるが、この名古屋鉄道社史は、太平洋戦争終戦十五年の年に刊行されたもので、戦争と鉄道、という視点から詳しく掲載されている。百年史では、企業説明のような無難なものであるが、空襲による会社施設車両人員への被害を前に物資不足、輸送需要の増大へ応えた様子が淡々と記されている。

Img_5040  鉄道は、戦時以外にも災害という難敵を前に社会秩序の象徴として、また公共交通の維持という義務を担っている。濃尾大震災や伊勢湾台風というような、東海地方を襲った幾多の災害の記録も盛り込まれており、名古屋鉄道を通しての東海地方年代記という視点からも、興味深い史料として仕上がっている。

Img_5036  名古屋鉄道は、合併を繰り返して今日の規模となっている。あの名古屋本線も、名古屋と岐阜を結んだ名岐鉄道、そして名古屋と豊橋を結んだ愛知電鉄が合併して誕生したものであり、多くの地方鉄道がどのように誕生したのか、愛知馬車鉄道を筆頭に其々の路線を記しているのもうれしい。

Img_5044  5000系電車。1000系の足回りを流用した現在の5000系と異なり、急行型としてデビューしたのが先代の5000系、いわゆる湘南型とよばれる車体形状を有する車両だ。明治村に走っている路面電車からはじまり、順調に高性能車を導入してゆく歴史、そしてともに発展する都市圏を、通常の市史とは異なる視点から俯瞰できる一冊だ。

HARUNA

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

コメント (2)
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