北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

航空自衛隊F-X 米:対抗する次世代機はロシア2016年・中国2021年に配備と分析

2010-01-11 22:42:50 | 先端軍事テクノロジー

◆第四世代機の近代化でも対応可能と考えるのだけれども・・・

 本日の話題は、F-Xについて。F-35が有望、というようにアメリカ側からの働き掛けがあり、共同開発を持ちかける話が続き、後に日本仕様の部品を生産すれば早期に調達できる、という話が出ている中のお話。

Img_9540  航空自衛隊は、高い制空戦能力を発揮するステルス戦闘機F-22の導入をかなり以前から構想していた。制空権、という言葉は相手側に一機でも戦闘機の稼働数があれば部分的に喪失する可能性があることから、絶対航空優勢、という言葉が使われるようになっているのだけれども、F-15は相手の勢力圏に乗り込んで航空優勢を獲得できるという意味から制空戦闘機、という呼称を意気込みとともに名乗っている。他方、F-22は、飛行しているだけで他の敵対航空機の飛行を許さない状況を構築し、絶対航空優勢を維持する、つまり事実上の制空権を獲得できる、という意気込みから、一歩進んで航空支配戦闘機、という言葉を冠されたF-22。しかし、F-22は機体のステルス形状や、共同交戦能力はもちろん電子偵察能力すらも備えたレーダーと火器管制システムなど、機密性が非常に高く、アメリカ側が日本にはライセンス生産はもちろん、国内で組み立てるノックダウン生産も、更には直輸入にあたる有償軍事供与も不可能であるとしたうえで、生産終了か、スペックダウンした輸出型を開発するのか、という議論が続いている。ここで、アメリカが日本に提案したのは、開発中の統合打撃戦闘機F-35である。エンジンが一基の単発機でありながら、史上最強の出力重量比を有するエンジンを搭載し、ステルス機としての機体形状を有するほか、対地攻撃能力では空対空戦闘を第一に設計されたF-22とは比較にならない能力を有する。ただし、まだ開発が完了していない、という大きな問題点を抱えているのだが。

Img_9470  こうした中で、共同通信の記事を引用・・・ロシアは16年、中国は21年以降 次世代戦闘機配備で米分析:主要国が激しい開発競争を繰り広げる次世代(第5世代)戦闘機の実戦配備時期について、ロシアは2016年、中国は21年以降になると米当局が分析、日本政府に伝えていたことが10日、分かった。日米関係筋が明らかにした。中ロの次世代機開発は軍事機密のベールに覆われており、配備時期に関する米政府の具体的情報が明らかになったのは初めて。第5世代戦闘機はレーダーに捕捉されにくい高度のステルス性と超音速巡航能力を兼ね備えた最新鋭機。米国は第5世代機のうち、F22を既に配備しており、中ロに対する戦略優位が続くことになる。日本は航空自衛隊の次期主力戦闘機(FX)選定をめぐり、中ロをにらみ早期の第5世代機導入を目指しているが、両国の配備になお6年以上を要するとの情報が示されたことで、導入計画に影響も出そうだ。米側が機密に属する情報を日本に伝えた背景には、直ちにF22を導入しなくても日本の防衛に大きな支障は出ないとの立場を示し、F22の導入断念を促す狙いもあったとみられる。2010/01/10 16:50   【共同通信】

Img_9902_1  F-35とは直接関係のない記事なのだけれども、指摘したいところとしては“中ロの次世代機開発は軍事機密のベールに覆われており、配備時期に関する米政府の具体的情報が明らかになったのは初めて”という部分について、とりあえず、報道に載っているということは、そこまで機密性が高くは無いのではないか、という事、この見積もりはいつごろに提示されたのかが明らかではないので、何とも言えないという事、そもそもロシアの次世代機はもう少し早い時期に開発されるという見通しがあったのだが、何故伸びているのか、ということ、更には、この情報が伝える第五世代戦闘機というものの定義はどのよなものなのか、“レーダーに捕捉されにくい高度のステルス性と超音速巡航能力を兼ね備えた最新鋭機”とされているのだが、高度のステルス性というものは、どの程度なのか、F-22のレーダーにF-22はどのように映るのか、という話ではないのだけれども、F/A-18Eなどは設計にかなりステルス性が配慮されている、高度なステルス性がどの程度なのかが未知数であるということと、もうひとつは超音速巡航という言葉であるが、F-22の超音速巡航能力はアフターバーナーを焚くことができる時間がF-22は限られているからの、ミリタリーパワーでの超音速飛行能力を有しているのであり、長時間飛行することができるわけでもないし、F-35には超音速巡航能力はアフターバーナーを使用した場合のことを意味する、超音速巡航の定義がちょっと不明確だ。あたかもF-15Jの近代化改修やF/A-18E,F-15Eというような既存機でた対応できないような機体を示すのか、ということが、やや疑問に思えてくるのだが、背景にあることを幾つか考えてみたい次第。

Img_8282  まず、次世代機が配備、これも試作機か、量産機を示すのかということが出来るのだけれども、“国の配備になお6年以上を要するとの情報が示された”ということ、六年程度ある、この情報は、F-22が不要、ということなのだけれども、六年あるのだからそのころにはF-35は完成しているだろうからF-35の計画に参加してほしい、という意味にとることは出来る。自動的にF-4を後最低でも六年、後継機が決定しないまま推移する、ということになってしまうのだが、この問題がどのように解決するべきなのか、という事。もちろん、F-35の開発に参加し、優先顧客以上の立場にて参加すれば、アメリカはF-35の調達計画を下方修正しているばかりなのだし、イギリスもF-35の調達を見直す可能性を示唆している中で、教育訓練体系や整備補給体系に無理を掛けるという前提のもとで、一気にF-4後継機所要の機体を導入することも出来るだろう。しかし、基本設計はF-104よりも古いF-4を、2010年代後半まで運用するということ、少しこの案には無理があるようにも思えてくる次第。しかし、六年はあるのだから、F-Xは、とりあえず無難な機体を、という流れも一考の余地はある。F-15EやF/A-18Eを導入してしまうと、ライセンス生産を行った場合、F-4EJ改の後継所要である二個飛行隊だけではライセンス生産に伴う生産設備整備の投資を回収することは出来ず、しかも、二個飛行隊だけ異なる機体を要撃機体系に組み込むことは運用体系を混乱させてしまう要素にもなる。

Img_2393  戦闘機生産基盤に関する懇談会では、F-2生産終了後の戦闘機国産技術が非常に危険な状態に曝されてしまう事を指摘しており、先端技術実証機を開発して国産戦闘機の開発技術への基礎研究の成果を示したとしても、基盤となる部品供給技術が失われてしまってはナンセンスである訳で、六年あるのならば、と日本としてはF-2支援戦闘機の生産延長を提示して、アメリカ生産部品の生産基盤引き受けによる日本国内調達を図るか、何らかの方法でF-4の後継機にF-2を充当し、六年以内に第四世代戦闘機で第五世代戦闘機への対処を構想するべきでは、と考える次第。なにしろ、F-4EJ改であっても、第四世代機の脅威に対して航空自衛隊は対処してきたわけであるので、第四世代機であるF-15や同世代機であっても、と考えれば幾分視野は明快になる。一方で、六年しかない、と考えるのならば繰り返し、F-22の輸出型を開発するようアメリカに働きかける事も必要なのではないか、と考える次第。個人的には、F-35が相応のかたちで完成した後で、導入を模索するという視点、更にはそれまでの期間、二個飛行隊所要だけで次のF-XとなるF-15J後継機に第五世代機を充てる見通しならばF-2の増産を、第五世代機の本格配備が開始されるまでに、もう少し時間を要するのならば、F-4EJ改とともに、F-15J初期の機体を置き換えるために、F/A-18Eかタイフーンを、F-35の侵攻打撃能力を評価したうえで将来調達することを考えるのならば戦闘爆撃機としての性格を有するF-15Eを、導入しては、と考える次第。他方、最近、新しい動きが無いF-15SE、F-15Eの最大の弱点はステルス性への配慮が無いF-15を単純に戦闘爆撃機としたものであることで、ステルス性を配慮した形状としたF-15SEであれば、この問題は低減される訳であるので、興味は湧いてくる次第。

HARUNA

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