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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

航空自衛隊次期輸送機C-X、今月(2010年1月)にも初飛行

2010-01-10 20:51:50 | 先端軍事テクノロジー

◆中日新聞が報じたC-X最新動向

 本日、習志野演習場では第一空挺団2010年降下訓練始めが行われたが、参加した航空自衛隊の輸送機はC-130H輸送機2機、C-1輸送機2機であった。他には、ヘリボーンにて展開した一部の車両を除き、基本的に車両は自走して展開したようだ。

Img_2063  もちろん、習志野演習場の面積的な問題から全て空挺降下させる、ということは難しいのだが、一方で、輸送機の数にも限りがあることも事実である。現時点で、航空自衛隊は、入間基地、美保基地、小牧基地に輸送機部隊を展開させ、運用しているが、C-1輸送機が約30機、C-130H輸送機が約15機であり、その空輸能力には限界がある。もちろん、これには政治的な背景があり、輸送機による空輸能力を充実させることができなかった日本の国情を無視するわけにはいかないのだが、国際平和維持活動、国際緊急人道支援任務など、自衛隊の活動範囲がグローバル化する現在、輸送能力の不足は大きな問題として認識されている。こうして現在、これらの長距離飛行任務にも対応できる長い航続距離と搭載能力を有した次期輸送機としてC-Xの開発が進められているのだ。C-1輸送機を代替すると同時にこの次期輸送機は、海上自衛隊が運用するP-3C哨戒機を置き換える次期哨戒機P-Xとも可能な限りの部品共通化を図り、プロジェクトコストを低減させるという意欲的な試みが為されているもので、当初は、全く飛行特性が異なる二機種を開発することに様々な方面からの疑問が寄せられていたものの、P-Xは初飛行を果たし、海上自衛隊へ引き渡し、現在はP-1哨戒機として現在試験中である。

Img_2058  C-X、これについて、中日新聞に新しい動きが報じられていたので、本日はこの記事を紹介したい。空自次期輸送機CX、今月にも初飛行・・・2010年1月8日 09時10分: 防衛省が導入を目指す航空自衛隊の次期輸送機(CX)開発計画で、同省やメーカーが今月中にも、岐阜県各務原市の空自岐阜基地で試作機の初飛行を実施する方向で調整していることが分かった。複数の関係者が明らかにした。初飛行が成功し、安全性が確認されれば納品される。CXは緊急援助や平和協力など海外での活動も想定し、防衛省が国産のC1輸送機の後継として2001年度から開発に着手。川崎重工業を中心に、岐阜基地隣の同社岐阜工場で開発している。当初は07年9月に初飛行が予定されたが、機体の組み立てに必要な鋲(びょう)や胴体フレームの強度不足などの不具合が相次いで判明。開発スケジュールが大幅にずれ込んでいた。CXは全長、全幅とも44メートルでC1の1・5倍。エンジンは米国製で日本が自主開発する機体としては最大規模となる。航続距離や輸送量はC1の4倍でイラクに派遣された米国製のC130輸送機の性能も上回る。CXは既に完成した海自の次期固定翼哨戒機(XP1)と同時開発。将来的な民間転用も検討されており、量産化されれば東海地方の航空機産業への波及効果が期待される。(中日新聞)http://<wbr></wbr>www.chu<wbr></wbr>nichi.c<wbr></wbr>o.jp/s/<wbr></wbr>article<wbr></wbr>/201001<wbr></wbr>0890091<wbr></wbr>001.htm<wbr></wbr>l

Img_2070  次期輸送機C-Xは、防衛省により26㌧を搭載しての航続距離が発表されていたのだが、同時に川崎重工が発表した民間型の最大搭載量は37㌧、という数字が載せられており、現状のC-1輸送機が有する輸送能力、8㌧を大きく上回るものとなる。それだけに、長い航続距離と高い輸送能力を持つ新型機の完成は待たれていたのである一方、機体強度と一部の構造設計にミスがあり、初飛行が遅れていたものである。幸い、エンジンは信頼性の高い米国製を採用しており、設計重量の超過などの他の大きな問題は無く、現在解決にあたっている構造強度の問題さえ目途がつけば初飛行にこぎつける位置にある。この種の輸送機としては、C-17も開発当時は強度不足が指摘され、補強材などの配置が行われてことであるし、他方、昨年末に初飛行を果たしたエアバスA-400のように、構造重量の大幅な超過やエンジン出力の問題、という深刻な問題点は生じていない。特にA-400は、C-Xよりもはるか前から発動した開発計画であることから、開発出資者である独仏政府から、2009年内に何らかの技術的進展を求めた、という話もあり、今後A-400は所要の性能を満たすためには幾つかの障壁を乗り越える必要がある。

Img_1852_2  初飛行は今月中に行われたとして、即引き渡し、量産開始、第一線配備、運用開始、というようにはいかず、一年程度技術研究本部により各種飛行試験が繰り返されたのち、航空自衛隊に引き渡される。航空自衛隊では運用試験を飛行開発実験団により実施し、実用に耐える、と判断された時点で本格的な生産が開始されることとなる。現時点で、入間基地、美保基地に配備されることが予想されるが、主契約企業である川崎重工は、民間型の生産販売も計画しており、C-130H輸送機に代わる貨物機として、また、場合によっては、つまり武器輸出三原則に柔軟運用の解釈が行われるのであれば、政府用輸送機として各国に販売される可能性もあるわけだ。C-1輸送機もそうした構想はあったものの、実現には至らなかったのだが、C-Xは可能性として輸出があり得るのか、興味がもたtれる。さて、C-1輸送機は、横田基地日米友好祭などで、米空軍の戦域輸送機C-17と対面に並べられると、そのコンパクトさが目立ってしまう。この点、C-Xは、C-17ほどではないが、相応の大きさを誇っており、並んだ姿も様になるのではないだろうか。C-X,いやXC-2と間もなく名前を改めるであろう新型機には、より幅広い活躍を期待したい。もっとも、飛ぶらしい、ということが報じられただけであり、まだ実際に飛行したのではないのではあるけれども。

HARUNA

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コメント (8)
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