◆脱国際協調路線、代案無き一方的終了
タリバンはアフガニスタンでの支持を失いつつあり、一方、アルカイダはその活動拠点をアフガニスタン、パキスタンからイエメンなどアフリカ大陸へ移しつつある状況だ。
そうした中、時限立法として制定されたテロ対策特別措置法が明日2010年1月15日に失効する。海上自衛隊の対テロ海上阻止行動給油支援任務は、アフガニスタン、パキスタンからアフリカ方面、イラクを含む中東へのテロリストや関連物資の移動を阻止する水上戦闘艦部隊への支援である。アフリカへ拠点が移動しつつある状況で、いきなり給油支援を打ち切るという行為は、テロリズムの暴力を排し、安定を構築しようという国際協調を脱するものと国際社会は理解するだろう。
もちろん、アルカイダは、テロ組織であり、軍隊のような命令系統と秩序に依拠した威力行使というものは行わず、思想と信念に依拠していることから近年、アメリカ国内で過激思想に影響され、テロ行為を行う可能性さえ指摘されているなか、海上阻止行動の事業評価は必ずしも簡単ではない。
しかし、これまで軍事行動を伴う国際協調への参加に消極的であると考えられた日本にとり、給油支援というかたちでの補給艦、護衛艦の派遣は一つの象徴的な行動であり、常に補給艦を日本本土から大きく離れた海域へ展開させる、という活動は単なる給油支援以上の意義はあった訳だ。加えて、対テロ国際協調に参加するということでの、テロリズム関連の参加国間情報共有は、日本国内のテロ対策でも大きな意義があったことも忘れてはならない。
給油支援がアフガニスタンの復興に直接的な寄与をしない、ということで現在の鳩山政権は特措法延長を行わなかった訳であるが、これはアフガニスタンでの地上支援、民間NGOや自衛隊による支援により、より直接的な支援を行う、という観点からの発想であった筈だ。しかし、党のアフガニスタンが米軍三万人の派遣を行わなければならないほど危険な状況と分かれば、掌を返すように資金援助だけを提示した。
安易な資金援助はアフガニスタン現政権の汚職の原因となり、汚職がアフガニスタン国民をかつて、厳格な宗教倫理に基づき行動するタリバンへの支持へ繋がったことを忘れてはならない。加えて、海軍の無いアフガニスタンの政府に海上阻止行動給油支援を必要とするかを尋ねることも誤っている。海上阻止行動により武装勢力の移動を抑制することがアフガニスタン復興に寄与するかを問うべきであった。
シーレーン防衛や洋上護衛任務のように、被害無しを以て成果とする事例もあるため、安易に給油支援も成果なし、と判断するのはあまりに乱暴であると考える次第である。加えて、前述のように派遣していることで得られる様々な恩恵、情報、信頼醸成というものも評価しない、というのは如何なものだろうか。
海上自衛隊による給油支援は、補給艦が、とわだ型3隻、ましゅう型2隻という5隻体制では、決して楽なものではなかった。しかし、この種の艦船は、水上戦闘艦の装備と比べ後回しとされがちなもので、5隻という体制は決して少なくない、それでも各国補給艦と交代交代にアラビア海を遊弋するのではなく、日本が常時一隻を展開させるのである。ローテーションには相応の負担はあっただろう。
補給支援は、明日を以て終了か、通常国会にて民主党か自民党が新法を提出し、再開されるのかは定かではないが、アフガニスタンに陸上自衛隊を展開させるよりは、人命のリスクは少ない。もちろん、ヘルマンド州へヘリコプターを派遣しての輸送支援などを行えば、その覚悟に各国は一定の評価を出すだろう、とは思うのだが、何となれ、給油支援は明日ひと段落、そして代案としての任務は実施されず、テロとの戦いから日本政府は手を引く、一時的か恒久的かは定かではないかが、この事だけは確かなようである。
HARUNA
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