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F-35統合打撃戦闘機、アメリカ国防省が調達計画の見直しを発表

2010-01-09 18:32:22 | 防衛・安全保障

◆日本に開発参加を求める背景には資金難も

 イギリスがF-35Bの調達価格が1億ポンドを超えそうな状況で、F-35Bを搭載し今後英海軍半世紀の体系を創ろうと考えたクイーンエリザベス級空母が暗礁に乗り掛けているという状況。

Img_1939  F-35はステルス性を備えた超音速次世代多用途戦闘機として開発がすすめられ、F-22よりも低価格で、高い航空打撃力を発揮出来る機体としてアメリカを中心に国際共同開発が行われている機体である。しかしながら、前述のように、計画は開発プロセスが国際共同開発という、各国の関係者が各国の航空戦力整備計画を技術者とともに送りこむという、複雑化しやすい構図の中で行われているため、機体重量超過、エンジン推力不足など2008年には生産が開始される、と90年代に出された計画は遅れに遅れている。

Img_2035  その中で、もうひとつ動きがあったので、共同通信配信記事を一つ引用したい・・・米、F35の調達計画見直し 日本のFX選定に影響か:【ワシントン共同】米メディアは8日までに、ゲーツ米国防長官が航空自衛隊の次期主力戦闘機(FX)の候補になっている次世代戦闘機F35戦闘機について、国防総省の調達計画を見直すよう命じたと報じた。見直しは、開発の遅れを予測する声があることが理由とみられる。F35は老朽化が進む空自F4戦闘機の後継機を決めなければならない日本に対してゲーツ長官が推奨している機種だが、開発中のため日本が調達可能になる時期が見通せないのが難点。実際に開発に遅れが生じれば、日本のFX選定作業に影響を与える可能性がある。同省は2015年までに計483機を調達する計画だったが、ゲーツ長官は昨年12月23日、このうちの約25%に当たる122機の調達を控えるよう担当者に指示。皮切りとして11会計年度(10年10月~11年9月)分は当初予定よりも10機削減する。調達予算のうち28億ドル(約2615億円)以上を開発や性能評価試験などの費用に充てるという。国防総省は34年までに計2456機を調達する方針。同省の予算資料は、この全体計画を縮小するかどうかについては言及していない。 (2010/01/08 16:45 【共同通信】)http://<wbr></wbr>www.47n<wbr></wbr>ews.jp/<wbr></wbr>CN/2010<wbr></wbr>01/CN20<wbr></wbr>1001080<wbr></wbr>1000532<wbr></wbr>.html

Img_1945  1994年の段階で、JSF計画では、各国空軍に配備されるアメリカ空軍向けA型が単価2800万㌦程度、アメリカ海兵隊・イギリス海軍向けの垂直離着陸が可能なB型が3000~3500万㌦、アメリカ海軍空母艦載機のステルス性が最も高いC型が3000~3800万㌦と計画されていた。この価格に開発に関与しない国が購入する場合、様々な費用が重なるし、F-35は、ボーイングのX-32か、ロッキードのX-35か、試験機を開発中の段階であったのだが、当時のF-16Cが2000万㌦、と言われていた時代、確かに高いものの、C型でもF-22の半額以下ということもあり、注目を集めた。

Img_2127  アメリカ海軍、空軍と海兵隊が約2400機、イギリス海軍が138機、イタリア空軍と海軍が131機、オーストラリア空軍が100機、トルコ空軍も100機、オランダ空軍でも100機を、カナダ空軍は80機、イスラエル空軍が75機、ノルウェー空軍が56機、デンマーク空軍は48機、それぞれ導入するべく、開発計画に参加、もしくは関与し、シンガポール空軍や韓国空軍も興味を示している、とされる。今回のアメリカが示した装備計画の見直しは、最終的な調達計画下方修正へ繋がるかは未定、との見方が示されているものの、量産開始時の量産計画が下方修正されるということは、初期の機体の単価が上昇、という結果に繋がるため、開発難航に伴う単価上昇に、調達計画下方修正に伴う量産効果悪化が要因となる次の単価上昇、それが各国の調達計画に影響するという悪循環へ展開することは容易に予想できる。

Img_1922  そこで、航空自衛隊次期戦闘機選定で、F/A-18EやF-15FXとともに、F-22のようなステルス機を導入する必要性が高く認識されていることに注目が集まったわけだ。ゲーツ国防長官が、12月末になり、日本に開発計画への参加や共同生産を持ちかけてきた次第。F-35の国際共同開発に際しては、開発計画コストへの出資度合により、開発計画への関与度合いが決められることとなっており、出資度合10%では開発性能に決定的な関与が認められイギリスが、出資度合5%で開発性能への限定的な関与が認められ、イタリア、オランダが、出資度合1%前後では開発資料の閲覧が認められオーストラリア、トルコ、カナダ、ノルウェー、デンマークが、5000万㌦を支払えば優先顧客として開発に参加せずとも購入が認められ、イスラエル、シンガポールが該当する。

Img_1826  開発費が高騰し、不具合を是正することがなかなか出来ない状況下、新エンジンを開発して出力不足を補うという提案がオバマ大統領により却下され、暗礁から離れることは難しくなってきている状況、さりとて今更計画を中止することも出来ず、新しい出資者を求めているという状況に際して、アメリカは参加を求めてきたわけだ。日本に開発参加を求めることは、ゲーツ国防長官によれば、開発計画へ参加することにより、計画とは無関係な状態よりも早期に調達することができる、という利点を強調されていたが、もう少し慎重に考えなければならない。開発に参加するだけでかなりの費用を必要とするのだが、一方で、開発がいつ完了するかは別の問題であり、F-4戦闘機後継機として航空自衛隊が求めた場合、納期が未定、という最大の問題が立ちはだかる。F-35は、日本でライセンス生産が認められるか、現時点では、アメリカが参加を求めてきた以上、足元を観ることができる状態に入りつつあるのかもしれないが、リスクが大きすぎる。他方で、日本の航空産業、特に防衛省用航空機の生産基盤はF-2生産終了で次の発注が無ければ、危機にさらされていると、繰り返し問題となっており、F-35の参加はもう一つのリスクを抱えることになる。さて、航空自衛隊F-X選定は、どう進むのだろうか。

HARUNA

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