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富士重工、戦闘ヘリコプター調達中断で生じた損害の賠償を求め防衛省を提訴

2010-01-22 23:06:40 | 防衛・安全保障

◆350億円の損失補てんを求める

 陸上自衛隊のAH-64D戦闘ヘリコプター調達中止問題で、富士重工側が訴訟に出たようです。本日はこの話題について。

Img_0448  陸上自衛隊は新型戦闘ヘリコプターAH-64Dを、現用のAH-1S対戦車ヘリコプターの後継として60機を導入する計画を立てていたのですが、当初の計画よりもAH-64Dが高価であったこと、そして一部ではAH-64D戦闘ヘリコプターの搭載するレーダーが日本の入り組んだ地形や木立の中では、当初いわれていたような戦域情報収集能力が、これは主に中東の砂漠地帯や中央アジアの岩肌の出た高山部での運用により導き出された性能なのですが、発揮できないということがわかり、加えて現在調達中のAH-64Dが一部仕様変更になったことも加え、60機を調達予定のところを、急きょ約50機分、キャンセルしたため、アメリカボーイング社とライセンス生産を行うべく部品購入を行った富士重工が防衛省の調達打ち切りに対して訴訟に出た、ということです。

Img_7401_1  富士重工、国に350億円求め提訴 ヘリ調達中止で :富士重工業は15日、防衛省が当初予定していた戦闘ヘリコプターの調達を途中で打ち切った問題で、国を民事提訴した。防衛省が同社に発注予定だったヘリの費用未回収分として約350億円の支払いを求める。顧客が事実上、国に限られる防衛産業では異例の展開。 支払いを求めるのは戦闘ヘリ「AH―64D」(通称アパッチ・ロングボウ)生産の初期費用の未払い分(初度費)で、ライセンス費用や生産設備、部品の購入費用など。(13:21)
http://<wbr></wbr>www.nik<wbr></wbr>kei.co.<wbr></wbr>jp/news<wbr></wbr>/sangyo<wbr></wbr>/201001<wbr></wbr>15ATDD1<wbr></wbr>500X150<wbr></wbr>12010.h<wbr></wbr>tml
Img_7285_1  結局のところ、60機を調達する、ということで防衛省が富士重工にライセンス生産を依頼したのですよね。直輸入よりもライセンス生産のほうが高くつくのですが、第一に日本国内の工場でライセンス生産した方が、定期整備でわざわざアメリカに持ってゆく必要がなくなるということ、そして、直輸入の場合は、整備サービスをこの場合ボーイング社に求め、整備支援要員の派遣などをうけるのですが、こういうサービスは、AH-64Dが本当に必要になる際、つまり防衛出動で危険がせまると中断することがあるのですよね。実際、NATO加盟国でもイラク戦争やアフガン攻撃で同様のことがありました。そこで、富士重工にライセンス生産、という運びになったのですが、製造ライセンスをAH-64Dの製造メーカーであるボーイング社から富士重工が得たものの、全ての部品を日本で位置から生産する訳には行けない、ということで、防衛省が調達するとした60機分を購入していたのですよね。

Img_1628  訴訟までは、防衛省と富士重工の間で、それなりに長い道のりがありました。防衛省が調達中止を決定したのだけれども、調達再開を発表すればそのまま丸く収まる事もありえましたからね。それに、防衛省は60機を調達予定であるけれども、調達するとは言っていない、という発言も過去に出しています。それはもう、350億円、当初は500億円ともいわれたのですが、損害賠償で支払うには大きすぎますからね。しかし、それは無理です。部品を毎年2~3機分づつアメリカに発注すれば、その方が高くつきますし、部品の仕様は変更されてしまうかもしれない。そこで60機分、購入した訳です。莫大な損害が生じたので、これはもう何とかしてもらうしかないというのが富士重工の普通の感想でしょう。普通に考えれば、60機、AH-64Dを購入する、というかたちで示談にすればいいとも思うのですけれども、ね。なんとなれ、今使っているAH-1Sの後継機は必要になるわけですし、この点、防衛省はちょっと再考の余地があるように思う次第。この件はいずれ詳しくみてみたいですね。

HARUNA

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コメント (4)
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