◆勝手に防衛力を考えた雑想備忘録
本日は自衛隊記念日ですので、自衛隊の必要な防衛力について考えてみましょう。
もっとも、普段からWeblog北大路機関で欠いている事を単純に一か所でまとめただけ、というものなのですが。加えて、如何に自衛隊がしっかりとしていても、政治がアレでしかも、気力も知識も努力も無いという状況を改める必要があるのでしょうが、それは皆さん、次の総選挙を期待しましょう。
日本の防衛力ですが、防衛対象とする任務と想定される脅威及び任務について念頭に置く必要があります。おおまかな脅威としては、近年両用戦力を大幅に増強し、渡洋作戦能力を高めている中国により、南西諸島や九州島への師団規模の着上陸が想定される事となりました。一方でロシア太平洋艦隊の再建は本格化しており、キーロフ級原子力ミサイル巡洋艦の復旧改修とフランスからの強襲揚陸艦導入等の点を踏まえれば北方の防衛体制を維持する必要もあります。
第一波の着上陸を24時間以内に排除出来なければ、海岸堡を拠点に輸送艦が接岸可能な港湾部への進出や内陸への浸透へと移行しますので、24時間以内に着上陸地点を包囲できるよう編成する必要があります。師団規模の侵攻は北方と南西・西方、中部東部には複数中隊規模のコマンドーによる侵攻が想定される、というところでしょうか。
陸上自衛隊ですが、北方の機甲師団は別として、師団や旅団では機甲部隊を重視した編成とするのか、自動車化と空中機動による普通科部隊を重視した編成とするのか、まず議論とするべきです。機甲部隊、これは装甲機動部隊の略が語源ですから、戦車部隊、というだけではなく装甲化された普通科部隊や特科部隊も含む概念になります。
まず、第7師団の戦車連隊戦闘団と、第2師団の連隊戦闘団の訓練では攻撃前進の速度が根本的に違う、と言われます。理由は、戦車か降車した普通科部隊か、どちらに速度を合わせるのか、という点に起因します、当然戦車の方が速い、第七師団と他の機械化が進んでいるという北部方面隊の師団でも全く違うとのこと。
専守防衛を採るわが国では、開戦即ち本土決戦、国富と国民が集まる国土が戦場ですので、速い状況展開を行う機甲部隊を主幹とした任務運用か、一点一戦線を長期にわたり戦闘継続し、粘り強く対処する自動車化部隊や空中機動部隊による軽歩兵による戦闘を行うのか、国土国民への戦時の負担は人命財産を含め後者の方が大きいですが、前者は平時の整備に多くの予算を必要とします、議論が必要でしょう。
機甲部隊を主力とした編成であれば、師団を装甲化された普通科部隊や戦車隊とともに旅団を編成して、三個旅団基幹の師団五個程度で沖縄県以外の日本を防衛することが出来るでしょう。師団は、装甲化されることで、経空脅威状況下での機動展開がある程度可能となりますから、機動運用、つまり張り付けの警備管区を超えて迅速に展開可能です。
他方で、現状の自動車化に重点を置く編成の場合、旅団の配置されている地域は着上陸へ大きな脆弱性を抱えていますので、脅威の減退を理由に師団を旅団に縮小した以上、旅団は脅威が増大しているのですから師団に戻す必要があります。この点、人員増よりは大型師団と装備密度の向上は検討する意義が大きいと思うのですが。
もっとも、大型師団を軸に編成した場合、米軍が機械化歩兵師団を編成した場合200両以上の戦車を運用しているのですが、戦車定数は1200程度必要となり、装甲戦闘車も連隊規模で必要になって、維持費は大きくなりますが、13万名程度で平時の防衛警備が可能となるかもしれません。
現在、陸上自衛隊定数を増強する計画を構想していますが、人件費という批判もさることながら、機甲部隊の充実と併せた少数精鋭、という選択肢もあり得るかもしれません、現段階で少数精鋭と言うほかない程国土面積に比較して人員は少ないのですけれども、ね。有事の際の国民への負担は、機甲部隊の方が低い、と思うのですがね。
空中機動部隊ですが、警備管区に縛られない運用を念頭に、方面航空隊を軸に空中機動混成団を編成するべきでしょう。方面航空隊には、対戦車ヘリコプター隊を合わせれば40~50機のヘリコプターが配備されていまして、たとえば西部方面隊では直轄として西部方面普通科連隊を編成しています。
二個飛行隊基幹のヘリコプター隊と縮小編成の普通科連隊、対戦車中隊と重迫撃砲中隊を混成団として完結させれば、方面隊の数と同じ五個の空中機動混成団が編成可能です。五個師団、一個機甲師団、五個空中機動混成団、中央即応集団を基幹部隊とする提案。
方面隊ですが、この場合、方面隊の位置づけが、例えば教育訓練と管区内での後方支援に重点を置き、師団・旅団の後方支援に徹する、海上自衛隊でいえば自衛艦隊と地方隊のような方式で五個方面隊体制を維持する事が一つの選択肢となるでしょう、実戦部隊と軍管区の切り離しはフランス軍なんかでも例があります。
教育訓練には予備自衛官の教育も含まれますので、予備自衛官による駐屯地警備隊や弾薬整備中隊は方面直轄となりますし、これらの部隊と新隊員教育を行う方面混成団も直轄になってきます管区の交通統制等も方面隊の任務ですので保安中隊も直轄です、こうやって数えれば方面施設部隊もあり、けっこう多いのですね。
他方、方面特科部隊のMLRSや地対艦ミサイル連隊ですが、持っている方面隊と持っていない方面隊がありますので、北部の第一特科団のように、第二特科団、第三特科団を集約して編成、方面隊の枠を超えた機動運用を考えるべきやもしれません。こうした部隊の運用についてその延長上に陸上総隊のような中央の司令部、ということも検討されてしかるべきです。
海上自衛隊ですが、任務は南シナ海、東シナ海を含めたシーレーン防衛により交易を支える海上交通を維持し、海洋の一国による私物化を阻止する事が第一。第二にわが国への着上陸を図る脅威に対しての対処でしょう。中国海軍の外洋での行動が増大するにつれて、好むと好まざるとに関わらず、海上自衛隊の護衛艦隊についてその上空掩護を考える必要が出てきます。
イージス艦の増勢による艦隊防空は、結局のところ洋上の策源地に対する主体的な行動、早い話が射程が増大する爆撃機からの対艦ミサイル攻撃への対処や航空母艦を相手とした場合への継続的な攻撃に対処できないという点から限界があります、イージス艦は盾で、盾だけでは限界があるという事です。
海上自衛隊が行動する範囲内、フィリピンとタイかヴェトナムに航空自衛隊の航空団を展開させる恒久的な航空基地を建設するという方法も無いとは言いませんが、イラク戦争における米軍の外国基地使用への制約を考えた場合、同盟国でもない国に対してこうした事は期待できません。
八八艦隊。ヘリコプター搭載護衛艦8隻と、イージス艦8隻。この編成は、何度か北大路機関で提案しているのですが、結局のところDDHにAV-8かF-35Bを搭載するというのが、艦隊防空を含め海上自衛隊の能力を最大限発揮するために望ましい選択肢として強く推したいです。
これは、現在、護衛艦隊を構成する四個護衛隊群が二個護衛隊から編成されており、DDHとDDGにDD,DDの四隻から成るDDHグループ、DDGとDDとDDとDDから成るDDGグループに分けられている現状を、全てDDHグループに統一しては、という一見単純な案です。
DDHグループにも弾道ミサイル防衛に対応するイージス艦を配備し、同一編成の護衛隊八個を基幹として護衛艦隊を編成するという提案。護衛艦隊にはDDHが8隻、DDGが8隻、DDが16隻必要となります。DDHが4隻増勢の必要が出てきますが、DDは、むらさめ型9隻、たかなみ型5隻、あきづき型4隻で18隻となりますから、数に余裕が出てきます。
DDH,固定翼機を搭載するべきです。例え5機でも、固定翼機を運用できるというのは大きな長所ですし、軽空母として運用するのですから相手は無視できず、ポテンシャルは相応にあります。F/A-18は無理でしょうが、F-35BやAV-8.それにAEW型のEH-101を搭載すれば能力は大きく広がります。
日本には航空母艦の運用は不可能、という論調はあるのですがこれは米海軍のニミッツ級を想定しているものが多く、ひゅうが型や22DDHであれば、8隻の保有は必ずしも非現実的とは言い切れません。むしろ、従来型の洋上戦闘を想定する以上、損耗により修理が必要となる事も想定すれば大型艦を2~3隻持つよりも、もっと多くの艦が必要となり、DDHこそが必要な艦、といえましょう。
ひゅうが型に搭載できる航空機数は限られている、といわれるのですが、これは現在の搭載ヘリコプターに関してはその搭載を格納庫に航空機を全て収容する場合に限ったもので、アメリカ海軍でさえ、空母に厖大な艦載機の全てを収容することは不可能、艦上係留が行われているのです。
ひゅうが型は最大で約10機の各種ヘリコプターを搭載できる、と世界の艦船などでは記されていますので、AV-8かF-35を5機、そしてSH-60Kを3機、AEWH-101を2機搭載することは、ひゅうが型満載排水量19000㌧にも充分可能と考えます。もちろん、災害派遣や機雷掃海任務ではMCH-101や陸自ヘリ搭載によりこの数は変化しましょうが。
航空集団は、P-1哨戒機60機、SH-60K哨戒ヘリコプター70機、AV-8/F-35B艦上哨戒機60機。固定翼哨戒機は80機、哨戒ヘリコプターは概ね90機という規模が維持されているのですが、今回提案するような艦載機を導入する場合、機数を削り、艦上哨戒機に調達費と維持費を充てる必要が出てきます。
これにより、海上自衛隊の対潜哨戒能力は低下してしまいますが、それでも総数としてはかなり大きなものです。加えて経空脅威への対処能力が向上しますから、航空自衛隊の要撃機によるエアカバーの外への展開が可能となりますし、米海軍との協調行動に際しても日本のポテンシャルは増大します。
また、日本周辺海域や南シナ海での米海軍航空母艦に対して、海上自衛隊のDDHが常時直衛に就く事が出来れば、日米の一体的協力を大きく強調出来ます。これは軍事的以外にも政治的にも意義がありますし、対潜哨戒能力も一個護衛隊あたりで計算すればかなり大きなものがあります。
潜水艦ですが、増勢は現在報じられているような内容で真剣に検討するべきでしょう。また、輸送艦と補給艦ですが、海上自衛隊の任務範囲は大きく拡大しているのですから、最低でも輸送隊二個、海上補給隊二個の各6隻は必要と考えます。また潜水艦救難艦もそうですが、潜水艦が増勢されるということは、潜水艦への補給というものも増勢は検討されなくてはなりません。
地方隊ですが、全ての護衛隊を護衛艦隊に編入されているのですけれども、これら二桁護衛隊は今後どうなるのでしょうか。他方で、災害派遣を含めた有事の際に初動となる多目的艦が必要なのではないか、と考えます。デンマーク海軍のアプサロン級や、はるな型のようなものを幾度か提案しているのですが、病院用にも航空機収容にも、車両搭載にも使用できる多目的格納庫を有し、掃海艇等に対する限定的な補給能力、そして、はるな型で可変深度ソナーを将来搭載する位置のようなかたちで機雷敷設能力を有する多目的艦を旗艦として2隻、必要だろうと考えます。
対空レーダーやソナーは必要でしょうが、SAMはRAMで、SSMは不要、代えて5インチ砲2門を打撃力とする艦、そういうのを想定。地方隊には基地機能の維持と教育訓練が挙げられますが、警備管区があるのですから、災害派遣を想定し、小型輸送艦による輸送隊は必要です。
大型護衛艦を運用する護衛艦隊など自衛艦隊での艦隊勤務に耐える高度な人員を錬成するためには、ミサイル艇隊二個、掃海隊が必要でしょう。また、特殊部隊の脅威があるのですから基地警備や港湾警備に当たる輸送能力のある哨戒艇隊も検討されてしかるべきで、合計15隻の艦艇が必要と考えます。
航空自衛隊ですが、現状の航空団の配置、航空団は基本的に二個飛行隊を基幹としていて、第五航空団のみ一個飛行隊ですが、北部航空方面隊に二個航空団、中部航空某面隊に二個航空団、西部航空方面隊に二個航空団という配置は最低限必要です。現在は沖縄にも一個航空隊が展開。
加えて沖縄の南西方面航空混成団の一個飛行隊基幹の航空隊を二個飛行隊基幹の航空団へ増強する必要は幾度か掲載しました。実のところ、南西諸島には沖縄本島以外にも基地が必要なのですが大陸から近すぎ、弾道ミサイル攻撃などの危険性を考えれば救難隊や緊急着陸地以外は難しそうなので、これは検討課題でしょう。
加えて、中国海軍が航空母艦を保有した場合、日本は冷戦時代に想定しなかった太平洋側からの経空脅威に曝される事となるため、小牧基地か浜松基地に一個飛行隊を基幹とする航空隊を、同じく防衛の空白地帯となっている小笠原諸島に対しても硫黄島か父島に一個飛行隊を基幹とする航空隊を置く必要を考えねばなりません。
加えて、航空自衛隊には予備飛行隊がなく、飛行教導隊や第4航空団が考えられる程度なのですけれども、可能ならば総隊司令部飛行隊に要撃任務には当たらず、有事の際の支援に機動運用可能な一個飛行隊を置く事が出来れば望ましいです、もっとも、難しいでしょうから優先度は低いのですが。都合三個飛行隊の増強が必要、というのが作戦機に関する論点です。
こうした点を背景に次期戦闘機F-X選定ですが、機数の増勢を想定し、現実的に取得する、つまりコストを意識した機種選定が必要となります。F-22やF-35を想定して先延ばしを続けてきましたが、F-35はF-15後継機の際に改めて検討するとして、まずは現用機という条件さえ満たせば、数を揃えることが第一です。
E767をはじめ、個々の機体の能力ではなく、部隊として連携して航空作戦を展開すれば、共同交戦能力を最大限発揮する事で性能は底上げ出来ます。米空軍のF-16がその例で、部隊として行動することにより、MiG-29等の脅威に対して確実に勝利を重ねてきました。この点を認識することが重要でしょう。
なお、F-4後継機ばかりが話題となっていますが、T-4練習機やE-2C早期警戒機の選定をそろそろ考えなくてはならない時期になっており、あまり先延ばししますと一度に多種多数の機体を更新する必要に直面してしまうため、あまりうかうかしているのは得策ではありません。特にAPY-2レーダーの生産が終了する前にE-2CはE-767に置き換える決断が必要と考えます。1:1で置き換えずとも、2:1で6機程度のE-767により置き換えられるのではないでしょうか。
空輸能力ですが、現在の国際貢献任務の頻度を考えますと、輸送機は現在、45機程度ですが、輸送航空隊を更に一個増強し、60~80機程度の輸送機を保有してもいいのではないでしょうか。空挺部隊の降下訓練などに当たる支援輸送一つとっても輸送機は不足しています。
民主党は政権交代の際に国連PKO重視を掲げていましたが、平時においては白塗りとして国連の輸送支援に充ててもいいですし、日本有事の際には緊急に引くという運用はあり得ます。XC-2は搭載量もさることながら、巡航速度が大きく国際航空路線での運用が可能です。必要な時に不足しないよう、こうした柔軟な運用は検討されなければなりません。
このほかに、空中給油輸送機は8機程度は最低必要ではないか、戦闘機を改修した電子戦訓練支援機は不要なのか、偵察機は今後有人機と無人機をどう組み合わせるのか、政府専用機は今後補助の767を導入する必要があるのでは、等など議論は尽きませんし、基地警備等も話したいのですが、これはいずれ。
ここまでは有人機の話を中心に考えてきましたが、航空自衛隊はこれから、無人機の導入についてもっと積極的になる必要があります。例えば策源地攻撃一つとっても、有人機では難しい状況への対処が考えられますし、MQ-9のような無人機であれば、戦闘空中哨戒の補完などに寄与するでしょう。
無人機だけの飛行隊、というのは米空軍では創設が始まっているのですが、日本の場合は戦闘任務というよりは例えばながい滞空時間を活かし航空救難団のU-125支援、空対空射撃訓練の標的曳航や標的機の運用、空輸任務におけるSAM監視等の用途で少しづつ導入することが考えられます。
無人機ですが、ここまでに記載した事以上に、現在の日本の航空法との関係があり、これを早い時期に運用可能な法体系とする事が急務です。また、有人機に出来ない運用が可能な機体なのですが、その為には予備機を含め損耗を前提とした装備体系としなければ、運用に自主制約が掛かってしまい、結局最大限運用できず、ということもありえます。今までない装備ですので、それだけ研究と理解の努力が必要と言えましょう。
HARUNA
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