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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

自衛隊アフガニスタン派遣は防衛省設置法の海外出張扱い

2010-11-22 22:37:24 | 国際・政治

■派遣規模数名、ISAF指揮下には入らず

 自衛隊のアフガニスタン派遣は、先日の横浜での日米首脳会談において菅直人首相と小浜大統領との間の国際公約となりました。

Img_4265  アメリカは普天間基地移設問題での日本側の一方的な日米合意の不履行と違反、尖閣諸島問題における中国に対するアメリカの日本支持の表明と部隊行動、インド洋給油支援の日本側の一方的打ち切り。これらの一連の行動に対して、日本が行動で示す、そういう機会となるわけです。そもそもアフガニスタンへの自衛隊派遣は昨年の衆議院総選挙における民主党の国際貢献公約の目玉でしたし、アフガニスタン情勢の悪化を鑑みればものすごい危険と犠牲の覚悟を必要とするものでして、アメリカ側もこうしたなかで、あの物量を誇る米軍でさえも不足気味であるヘリコプター部隊の派遣を求めてきていました。

Img_6433_1  しかし、蓋を開けてみれば、自衛隊の派遣は医官を中心に数名規模を派遣するだけ、しかも派遣に関して、民主党は野党時代から自民党の派遣ごとの特措法制定を批判して、恒久法制定を提唱していたのですが実態はなんと防衛省設置法に基づく海外出張扱いでアフガニスタンに部隊を派遣する、という信じがたい方法をとるようです。この関係と集団的自衛権の問題に抵触しないように、アフガニスタンの治安任務を担当する国際治安部隊ISAFの指揮下には入らず、防衛大臣直轄部隊として任務に向かうようです。これならば、日米合意を反故にして行かないほうがいいのではないでしょうか。

Img_3652  自民党はインド洋対テロ海上阻止行動給油支援の再開を提案しています。給油を行う補給艦の数には、海上自衛隊に余裕はありません。とわだ型補給艦は老朽化が進んでいて、後継艦が必要なのですが、その予算がねん出できないため延命改修を行うことが決定しています。また、昨日掲載したようにソマリア沖海賊対処任務も継続して実施されています。かんせんによゆうがないことは百も承知なのですけれども、しかし、鳴り物入りで行うアフガニスタン派遣が、実際にはアフガニスタン出張、というのでは日米関係に亀裂が入ります。

Img_1761  現にものすごい戦死者が出ているのです。それはもちろん、一人でも多くの医官は必要でしょう。しかし、移動総合病院というべき規模の医療旅団を持つ米軍にたいして、文字通り一人二人、と数人の規模で派遣する、というのは、派遣される立場になって考えてみてください。また、こういう状況では意図が疑われ、派遣される隊員が苦労する、ということはゴラン高原PKOをはじめ、過去の任務で証明されているわけで、それよりは給油支援の再開と海賊対処任務の継続と拡大を行い、インド洋・アラビア海・アデン湾は日本に任せろ!、という姿勢を見せたほうが、どれだけ上策か。

Img_2937  アフガニスタン情勢は非常に緊迫しています。米軍は2014年までにカルザイ政権のアフガニスタン政府軍に全権を委譲するべく軍事行動を実施しているのですが、これはオバマ大統領が2014年に撤退、という公約を実現するべく行われているもので、結果的にアフガニスタンの反政府武装勢力タリバーンには2014年まで粘れば大丈夫、ということを示すことになってしまっています。山間部に展開する武装勢力に対して日々多くの犠牲者を出しながらISAFに部隊を派遣する各国は戦闘を展開させており、米軍は掃討任務を強化するべくM-1A2戦車の派遣を決定しました。

Img_8832  そんな激戦が続くアフガニスタンへ、求められているのは近接航空支援を行うF-2飛行隊や輸送支援を行うべく不足が主張されているCH-47JA輸送ヘリコプター、戦闘負傷者や急患輸送に求められるUH-60JA多用途ヘリコプター、誤爆を防ぐために精度の高い火力支援が可能な99式自走榴弾砲、山間部でも運用が可能な軽量で火力の大きな90式戦車、いろいろ考えられるのですが、こうしたなかで日本の提示は数名の医官、しかもISAFの指揮下に入らない。これでは現地で軋轢を生みますし、我が国の同盟国への姿勢が疑われます。

Img_9118  また、完全な戦闘地域であるアフガニスタンへ出張扱い、というのも非常にふざけた話です。恒久法を制定するとしていたのにもかかわらず、防衛省設置法に基づく派遣、それが通るならば、もうどんな地域へも出張できてしまいます。朝鮮半島有事に第七師団を出張させたり、台湾海峡有事に護衛艦隊を出張させたり、弾道ミサイル危機にF-2飛行隊を出張させたり、可能でしょう。しかし、これでは任務範囲が際限なく拡大してしまいます。恒久法が間に合わないのであれば特措法を提示するべきです。後顧の憂いを断つためにも、アフガニスタン自衛隊出張、という欺瞞は許されるべきではない、そう考える次第です。

HARUNA

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コメント (14)
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