◆そうりゅう型四番艦
11月15日1120時より川崎重工神戸工場において平成19年度潜水艦は命名式、進水式を迎えます。
平成19年度潜水艦は8119号艦、SS-504で、AIP方式潜水艦である、そうりゅう型の四番艦にあたります。進水式には執行者として呉地方総監泉三省海将があたり、命名式につづき進水式が行われます。基準排水量2950㌧、水中排水量は4200㌧で通常動力潜水艦としてはかなりの大型艦、長大な行動半径を有しています。そうりゅう型潜水艦は、一番艦そうりゅう、二番艦うんりゅう、が既に就役しており、三番艦はくりゅう、が現在建造中となっています。AIP方式とは、従来の通常動力潜水艦がシュノーケルにより空気を取り入れてディーゼル発電機により電池に蓄電、その電力を元に行動していたのに対して、液体酸素の燃焼によりヘリウムガスを膨張させ動力を得るスターリング機関を搭載、大気に依存せず行動することが可能となりました。
そうりゅう型潜水艦は、AIP機関のほかにX字舵の採用やジョイスティック式操舵装置、非貫通式潜望鏡の採用などでこれまでの海上自衛隊潜水艦と比較し先進的な部分があります。X字舵の採用は潜水艦の水中運動性を大きく向上させ、コンピュータ制御と連動したジョイスティック式操舵装置との連動により繊細な操作に即応して応える運動性とこれまでの海上自衛隊潜水艦では考えられなかった小回りを実現しました。また、非貫通式潜望鏡1型としてタレスUK社製CM010を三菱電機がライセンス生産したものが搭載されています。電動機には永久磁石型のものが採用されるなど、AIP方式の採用以外に細部を見ても潜水艦としての性能はこれまでの、おやしお型や、はるしお型と比べ強化されていると言える訳です。
現在の海上自衛隊潜水艦隊には、おやしお型潜水艦11隻と、はるしお型潜水艦3隻、そうりゅう型潜水艦2隻が配備されています。東西冷戦時代には、海上自衛隊潜水艦はその秘匿性の高さからソ連太平洋艦隊に対する大きな脅威として認識されていました。ロシア側が発表した潜水艦静粛性一覧表などをみますと、もっとも騒音の大きな部類に、海上自衛隊の、うずしお型潜水艦が分類されており、一部では海上自衛隊の潜水艦の静粛性は低いものと考えられているようですが、確かに、うずしお型は、当時ガタピシ音が問題となっていました。その後改善されたとのことですが、うずしお型は1971年から就役が始まり、最終艦の特務艦やえしお、も1996年に除籍されています。言い換えれば1970年代の潜水艦と90年代の潜水艦を比較していた訳で、その後の、ゆうしお型、はるしお型の騒音が問題となっていない事に留意するべきでしょう。
8119号艦は、進水式ののちに建造が進み、順調に行けば来年夏ごろに公試を開始、2012年3月に就役することとなります。防衛省では、毎年一隻の潜水艦を建造しており、防衛大綱に明記された潜水艦定数が16隻であることから毎年就役する潜水艦に対して代替され16年で練習潜水艦に種別変更し、更に2年で除籍されてきました。これではまだ使える潜水艦を除籍させている、という事になっていました。昨今の報道では増大する中国海軍の脅威に対処するべく潜水艦の運用期間を延長、建造ペースを増大させず潜水艦勢力を22隻に拡大する計画を新防衛大綱に盛り込む計画です。中国海軍では、1971年から就役した明級潜水艦も現役ですので、能力的には90年代以降の潜水艦で構成される現在の潜水艦隊は充分対処できるといえますので、将来にわたる抑止力、日本と世界の平和と安全への貢献に期待したいです。
HARUNA
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