◆普通科連隊⇒歩兵大隊、特科連隊⇒砲兵大隊
民主党は新防衛大綱の確定に向けた党内案を近く提示するようです。内容では、基盤的防衛力を含め大幅に削減するとともに代替案を盛り込まず防衛力を低下させる一方で、旧軍呼称を復興させ精神的高揚を目指す内容となりそうです。つまり普通科を歩兵に戻すので、連隊を大隊に下げろ、というような内容でしょうか。
陸上自衛隊を日本陸軍、と改めるのかと思いきや、そういう訳ではなさそうで、しかし旧軍呼称としてやる気を高めたい、という意図があるのでしょうか。それならば防衛大綱に示さずとも、防衛計画には影響はないでしょうに・・・、また実際のところどうなんですかね、自衛官という呼称を軍人に改めてもらえれば、今よりも境遇が悪くなっても何とかやっていける、と隊員は思うのでしょうか、あまり身の回りにそういう方がいらっしゃらないので。ただ、対外的に考えれば陸上自衛隊(JAPAN Ground Self Defense Forces)を昔の日本陸軍(JAPAN IMPERIAL ARMY)に改めたらば、対外的に物凄い抑止力になりそうではありますけれども、ね。
◆「歩兵」など旧軍用語復活 新防衛大綱で民主案・・・ 政府が年末に策定する新たな防衛計画大綱に連動し、民主党の外交・安全保障調査会(中川正春会長)が取りまとめた提言案で、専守防衛を趣旨とする憲法に照らして陸上自衛隊が用いている「普通科」の言葉を「歩兵」に変更するなど旧日本軍の用語を復活させるよう求めていることが17日、分かった。同時に、陸海空各自衛隊のトップである幕僚長や統合幕僚長を天皇の認証官ポストにするよう提唱している。 いずれも自衛隊サイドで長年にわたり願望が強いとされる。旧日本軍を想起させる復古的な動きに対して世論の批判は避けられない。政府側でも否定的に受け止められる公算が大きく、新防衛大綱に盛り込まれる見通しは立っていない。
提言案によると、自衛隊内部の呼称のうち、例示として陸自の普通科を「歩兵」、1佐を「大佐」、2佐を「中佐」とそれぞれ変更するなど他国軍と同様に軍隊の用語に統一するよう促している。これに沿えば、現在の陸自の将官は「大将」「中将」などとなり、統合幕僚監部は「統合参謀本部」、運用は「作戦」、自衛隊の警察に相当する警務官は「憲兵」との呼称に変わってしまう。 ただ自衛隊はこれまでいわゆる戦力不保持や交戦権否認を規定する憲法9条との整合性を保つためとして、通常の軍隊で使用されている言葉をあえて避けてきた経緯がある。2010/11/18 02:02 【共同通信】http://www.47news.jp/CN/201011/CN2010111701000921.html◆
冒頭に記載しましたが、何故こういう提案となるのか、理解に苦しみます、そもそも防衛計画の大綱は防衛計画を示すものですから、階級呼称や職種故障、名称を改めることは基本的に含めていません、何故ならば普通科を歩兵と改めても防衛計画には影響が無いからです、名前が変わってやる気が出て徒歩でも車両並に移動出来たり、旧軍の呼称で気合が入ったので小銃でも戦車に対抗できたりするわけではありませんからね。こういう精神主義は余所でやってください、というよりは防衛大綱の外で行うものです、防衛庁が防衛省に格上げとなったのも防衛庁設置法を改正したのであって防衛大綱に明記されたものではないのですし、ね。
旧軍呼称、現在検討中の陸上総隊は総軍ですか。名称、しかし、考えてみるとこれを替えるのもかなり大変です、何と慣れ定着していますからね。ます職種、これもまあ兵科と改めるのですが兵科呼称は、普通科⇒歩兵科、機甲科⇒戦車科・騎兵科、野戦特科⇒砲兵、高射特科⇒防空砲兵、航空科⇒航空兵科/飛行兵科、施設科⇒工兵科、通信科⇒通信兵科、武器科⇒武器科、需品科⇒輜重兵科、輸送科⇒輜重兵科、化学科⇒化学兵科、警務科⇒憲兵、会計科⇒会計兵科、衛生科⇒軍医・衛生兵科、音楽科⇒音楽兵科、とこなります。
機甲科はそのままでもよさそうですが、装甲機動部隊の略が機甲科なので戦車科とするべきでしょう、騎兵は偵察部隊。会計科は海軍方式の主計科という呼称も考えられますが、難しいですね。方面隊は、陸上自衛隊では軍団ではなく軍、と呼称しているので北部方面隊や東北方面隊、東部方面隊、中部方面隊、西部方面隊といった呼称は北部軍、東北軍、東部軍、中部軍、西部軍と急に強くなったように感じます。方面特科は軍砲兵、1佐は大佐、2佐は中佐、3佐は少佐で、幹部自衛官は将校に、幹部候補生は士官候補生、三曹は伍長になって陸上幕僚監部は陸軍参謀本部に、防衛記念章は勲章に、言葉としては強そうに思えてきますが、今更こういう風に変えなくとも、と。
海上自衛隊は、海上幕僚監部は海軍軍令部、海上幕僚長は海軍軍令部総長、自衛艦隊は連合艦隊、自衛艦隊司令官は連合艦隊司令長官、護衛艦隊は第二艦隊か海上護衛総司令部で航空集団は航空艦隊、インド洋派遣や海賊対処部隊は旧海軍だと支那方面艦隊、護衛隊群は水雷戦隊で護衛隊は駆逐隊、横須賀地方総監部は横須賀鎮守府、護衛艦は艦長が海軍中佐か海軍大佐かで駆逐艦や巡洋艦に分けられ、阪神基地隊や新潟基地等の地方隊隷下の基地は神戸要港部や新潟要港部、地方隊の警備隊は海軍陸戦隊、開発指導隊群なんかは海軍艦政本部、術科学校は海軍機関学校、海軍経理学校とか、幹部候補生学校は久々に建物ごと海軍兵学校。
海上自衛隊については響きが素晴らしい響きなので明日にも実現してほしいですね。とはいうものの、先に記したように今回は呼称を一部旧軍に戻す、という程度なので、海上自衛隊を日本海軍に戻す訳ではありませんし、一部用語を替えるだけ。まさかとはおもうのですが、現在の与党議員が自衛隊の事をまったく勉強しておらず、普通科が歩兵、護衛艦が水上戦闘艦という意味だという事を知らなかったので、防衛の素人議員でも分かるように、用語を替えてやる、という訳ではないのかな、と思ったりもしました。そもそも、やるのならば、まず自衛隊と言う呼称を考えるべきだったのでは、と。
航空自衛隊は、旧軍ではなかった組織なので、どうなるのでしょうか。航空総隊が米軍みたいに戦闘機軍団、という扱いになるのでしょうね、その流れで行きますと航空方面隊は北部空軍、中部空軍、西部空軍、南西空軍。航空支援集団は空軍資材軍団、航空教育集団は空軍教育訓練軍団、・・・、完全に言葉遊びになってしまいましたが、今回の改正案では自衛隊の呼称は旧軍に戻さないようなので、何やら中途半端になってしまう印象。民主党が何を考えているのか、理解するのは難しいのですが、本当に何を考えているのでしょうか。選挙対策、離間工作、いろいろまともではない事が思いつくのですが、・・・。
それならば、衆議院で多数を担っている民主党が思い切って自民党と大連立を行い、憲法九条を改正して正式に自衛隊を防衛軍か帝国軍に格上げしては、と。そういいますのも、普通の公務員と自衛官の最大の違いは職務に危険を伴うだけではなく“死んでこい”という命令が含まれる事、死ぬ気で頑張る、死ぬ覚悟で、ではなく明らかに危険な状況に危険を顧みず職務の遂行を求めるのが他の公務員とは異なるところで、この覚悟を認めてほしい、というのが聞こえてくる声です。例えば自衛隊では堅固な陣地攻略に伴う普通科隊員の損耗率を確か10~12%と見積もっているようですが、防衛出動の際にこの数字だけの犠牲を払う、これが他の公務員とは異なる点です。
南西海域防衛、陸自・潜水艦の増強案 民主、中国念頭に2010年11月18日15時9分 ・・・民主党は、近年の中国海軍の活発化を念頭に、南西海域の防衛を重視し、九州・沖縄の陸上自衛隊や潜水艦戦力を増強する考えをまとめた。菅政権が年末に策定する「防衛計画の大綱」に対する提言案に盛り込まれた。党内論議をへて近く政権側に示す。 同党の外交・安全保障調査会(会長・中川正春衆院議員)の提言案では、中国艦隊の10隻が今春、沖縄近海で大規模な訓練をしたことなどを例に挙げ、「中国海軍の動きは活発化してきた」と強調。陸自部隊が沖縄本島より西に配備されていないことや、警戒監視レーダーが宮古島より西に存在していないことを挙げ、「沖縄を含む南西方面の我が国の防衛力は依然として手薄」と分析している。
一方で「冷戦型ともいうべき重装備部隊がいまだに北海道に多数残存している」として、特定地域に大規模な部隊を配備する従来型の「静的抑止力」の考え方とは「明確に決別」すべきだ、との考えを提示。中国の動きをにらみ、自衛隊のパトロールや統合実動演習などによる牽制(けんせい)、危機の際の即応・機動力に重点を置く「動的抑止力」の充実を求めている。 具体的には、旧式装備の象徴ともいうべき戦車や火砲は大幅に削減する▽九州・沖縄の陸自部隊の第一線部隊を増強し、他の地域の陸自部隊は効率化する▽潜水艦戦力の増強などによる海空自衛隊の抑止力や警戒監視能力を強化する――ことなどを提言。日米共同訓練の拡充や、九州・沖縄の米軍基地の共同使用の拡大も求めた。(河口健太郎)http://www.asahi.com/politics/update/1118/TKY201011180215.html◆
北海道の戦車は必要です。冷戦後、ヨーロッパでは欧州通常戦力削減条約が結ばれ、ウラル山脈よりも西方のロシア軍重装備が厳しく削減対象となりました。しかし、ウラル山脈よりも東方に移動させてロシア軍はその規模の存続を図りました。日本周辺では、確かにロシア軍は冷戦時代のソ連極東軍45個師団と比べれば削減されたのですが、中ロ国境や朝鮮半島問題もあって、一定の能力を有していますし、フランスから20000㌧クラスの強襲揚陸艦三隻を導入し太平洋艦隊へ配備する計画もあります。空挺軍と海軍歩兵が共同すれば、ロシア軍は一個師団規模の部隊を同時着上陸させる能力を今なお維持しているのです、一個師団着上陸され、港湾施設を確保されれば後続の師団が輸送船で次々と上陸します。冷戦型の重装備部隊が北海道に残っているのは、極東には冷戦型の重装備が日本へ向けられているからだという事を忘れてはなりません。
今年行われた玄武2010演習をみても、自衛隊における戦車の重要性は改めて語るまでもありません、玄武2010演習では第二師団が普通科連隊戦闘団により構成した防御線に対して機甲師団である第七師団が超越攻撃を行い、機動打撃で制圧しました。この防御線を構築する時間の間に後続の敵師団が上陸してきますし、何よりも人口密集地がやたら多い日本の国土では普通科部隊を主体とした防御戦闘は余りにも民生被害が大きすぎます、長時間市街地で戦闘を繰り広げた場合の悲惨さは幾らでも報道されているでしょう、しかし普通科部隊と異なり、戦車部隊の早い戦闘進捗度ならばこれを抑止できる、自国民への被害を局限化できるのです。従って、第二師団が充分な機甲部隊、来年には半減する第二戦車連隊を維持し、恵庭の第一戦車群による支援を受ければ、第七師団の到着以前に戦闘を決着させることが可能で、第七師団は道南や道東地区への警戒にも戦略予備として当たれる訳です、そうすれば戦線が拡大せずに済み、国民も千科に曝される危険からのがれることが可能です。
第一、菅首相のあまりに酷い外交手腕により先日報じられたように1956年の日ソ共同宣言が一部撤回されてしまいました、北方領土問題は現在も日ロ間の問題として残っていますが、これを民主党政権の時代に入ってから領土問題への譲歩と蒸し返しにより再燃させてしまい、日ロ間の関係は良好ではありません、こうしたなかでロシア軍が再興しており、揚陸艦の増強などが行われている中で、その圧力を一番における北海道の戦車部隊を旧式装備と決めつけて削減する、理解できません、着上陸があった場合にどうやって対処するのでしょうか。
また、火力が時代遅れと言いますが、陸上自衛隊は火砲が600、戦車600、もともと削れるだけの機甲部隊も特科火砲も残っていません、旧陸軍がどれだけ戦車の不足や火力不足に苦しめられたのか、歴史を紐解くまでもありません。もちろん、米軍のように無人機を大量導入し、火力の効率的行使や戦域情報優勢獲得、戦力投射能力の強化、人員不足を無人兵器で補い、陸上戦闘隊形の抜本改革を行う、というのならば、陸上自衛隊の戦車や火砲を時代遅れ、というのも分からないではありません。イラク戦争、アフガニスタン治安作戦では戦車部隊の価値が再認識されているのですが、ある程度無人機などの新世代装備により代替し得るかもしれません、しかしながらこれについて、防衛大綱に明記されるという話は出てきません、米軍は今後近い将来までに2000機程度の各種無人機を増勢する計画のようですが、日本側ではまだ第一歩を歩んだばかり、まだ従来型の火力を置き換える、とは考えられない段階と言えます。
西方と南西諸島の防衛を固める必要性については否定しません。場合によっては西部方面隊に戦車群を新編する必要もあるのでは、と考えるほどです。しかしながら、日本に島は6800あり、まんべんなく配置する、というのは不可能です、第一線への配備よりは、ヘリコプター部隊を抜本的に充実させ、各方面隊から迅速に支援展開が可能な規模を整備するとともに、運用体系を構築することの方が先決でしょう。太平洋戦争では個々の島々に展開した部隊は各個撃破されています、まんべんなく配置するという発想、戦車や火砲の能力を低く見積もる考え方こそが旧式の象徴であり、これは打破しなくてはなりません。
西方や南西諸島を防衛警備するには空中機動力です。だた、空中機動力の確保、とは言ってもAH-64D戦闘ヘリコプターは70億円、一個小隊や車両を空輸可能なCH-47JA輸送ヘリコプターは50億円、機動性と生存性に優れたUH-60JA多用途ヘリコプターは35億円と量産したとして、数十機や百機単位で揃えるにはかなりの予算を必要とします、緊縮財政下では厳しいでしょう。ですが、日本列島という長大な面積を有する国土を国民から負託された政府は何とか捻出しなければなりません、なに、出来なければ総辞職すればいいだけの事です。
南西諸島ですが、中国海軍は現在6~7隻の航空母艦を整備する計画を進めています、既にロシア製Su-33のコピーが飛行を開始していますし、違法コピーに端を発してエンジン関係でロシアとの間に問題が生じていますが、遠からず何らかの手段で洋上に航空母艦を展開させてくるでしょう。ロシアからの中古艦は整備が進められ、中国国産の空母も建造が開始されました。これに対して、海上自衛隊の能力をどう維持させるか、空母は外交手段として使えますので、撃沈する以外に対処が出来ない潜水艦では純粋に軍事的な対応しか行う事は出来ません、海上自衛隊としては、ひゅうが型を始めとしたヘリコプター搭載護衛艦により対処する事とするのでしょうが、この具体策や護衛艦定数について、防衛大綱では同記載されるのでしょうか。F-35の導入、とは期待しませんが護衛艦定数を再度2000年代初頭の水準に戻すくらいの事は、任務が増大し今やアフリカ沖でも行動する海上自衛隊には必要と考えます。
そして戦闘機定数。F-4後継機問題は完全に暗礁に乗りかかり、F-2支援戦闘機の生産終了により日本国内の防衛産業とともに部品を航空自衛隊に供給していた運用基盤も順次消滅します。これは稼働率に跳ね返るのですが、中国空軍の次世代戦闘機の開発は進められており、先日も珠海国際航空宇宙展でMiG-21クラスの旧式機を置き換える新型機“梟竜”が発表されたばかりです。数の上でも質の上でも脅威が増大する中、一方で北方からはロシア空軍機が日本周辺に出現しています。現在の戦闘機定数で充分なのか、飛行隊を増強する必要はないのか、この緊迫した状況をどのように防衛大綱に反映されているのか、関心を持って待ちたいと思います。
HARUNA
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