◆ファントム導入40周年は間もなく
航空自衛隊はF-4ファントムの後継機選定を継続しているのですが、この中で有力候補とされるF-35が、例によって開発難航で実用化は数年遅れる、という報道がありました。
航空自衛隊は、次期戦闘機にF-35を掃討真剣に考えているのでしょうか、開発中止が続いているのですし、思い切って別の機体を模索した方がいいのでは、と。そもそもF-2の生産縮小の背景にはF-22導入を期して複数機種同時取得を避けるというものが一部あったようですし、防衛大綱の戦闘機定数縮減を航空自衛隊が受け入れた背景にはF-22導入を前提としたもの、と伝えられています。こうしたことでギクシャクするよりは年末の防衛大綱改訂に戦闘機定数を増強する内容を盛り込み、その分現実的に取得可能な機体を選定して数を揃えては、と幾度かこのWeblog北大路機関に掲載しました。
F35さらに1~3年遅れも 日本の機種選定に難題:2010.11.2 10:30 ・・・ ロイター通信は1日、米国防総省当局者が次世代戦闘機F35の開発計画が現行から1~3年遅れるとの見通しを示したと報じた。開発段階の費用も総額約5千億ドル(約40兆3千億円)から約50億ドル増える見積もりという。 米空軍は今年3月に空軍仕様のF35Aの運用開始時期を2013年から16年に遅らせたばかり。日本が導入を検討するF35Aはさらに1年遅れるとされる。開発計画の遅れが運用開始時期にどこまで影響するか不明だが、事実なら日本政府の機種選定に難題となるのは間違いない。
報道によると、ソフトウエアの不具合などが原因となり、F35Aと海軍仕様のF35Cが1年遅れ、垂直離着陸能力を持つ海兵隊仕様のF35Bは2、3年遅れる。 F35は米国を中心に計9カ国が共同開発。多用途に運用できることやレーダーに感知されないステルス機能が特徴。(共同)http://sankei.jp.msn.com/world/america/101102/amr1011021031004-n1.htm◆
航空自衛隊は現在、F-4EJ改、F-15J,F-2の三機種を要撃機として運用しているのですが、F-4EJについては、日本での導入開始が1971年ですから、来年で導入40周年を迎える機体です。F-15も導入開始は確か1981年でしたか、導入30周年は目前の機体です。F-2支援戦闘機は90年代の機体ですから、まだまだ使える機体なのですが将来戦闘機構想として遠い将来に後継機を開発する構想はあるようです、また遠からずF-15についても現在は近代化改修プログラムを進めているのですが、後継機を検討しなければならないやもしれません。
しかし、その前に考えなければならないのがこのF-4戦闘機。もともと航空自衛隊は米空軍の主力戦闘機を要撃機として採用してきた歴史がありますから、自動的に米空軍が冷戦末期に最強の戦闘機を目指して開発したF-22を導入する、と考えられていたのですけれども、ステルス機であり高性能レーダーに最高水準の火器管制システムを盛り込み、運動性を付与したF-22は悲しいかな機密性が高すぎ、アメリカ以外に供給する事を想定していなかった機体であった事もあって、日本も粘り強く交渉したのですが導入には至りませんでした。
そこで航空自衛隊は、欧州共同開発で世界第二位の空戦能力と戦力投射能力を持つユーロファイタータイフーン、米空軍の戦闘爆撃機であるF-15E、米海軍の主力空母艦載機であるF/A-18Eなんかを候補に選定を進めていたのですが、航空自衛隊としては二位じゃ駄目なんです、ということもないだろうけれども欧州機でステルス性能も限られているタイフーンには難色を示し、F-15Eは戦闘爆撃機としては優れているのだけれども基本設計は古いし自衛隊が欲しいのは航空優勢確保に当たる戦闘機なので難色を示し、F/A-18Eは空母艦載機なのだからそもそも何か違っている、ということでやはり難色。
航空自衛隊が注目したのは、F-22の導入可能性がある頃にはエンジン一基の廉価版ステルスといわれていたF-35,ステルス性が盛り込まれた機体で、もともとデータ中継や情報収集等、航空戦闘や戦力投射以外の任務にも充分な能力を発揮できる航空機だし、ということで急速に注目したのだけれども、悲しいかな、記事の通り開発計画は遅延に遅延を重ねています。防衛省が興味を示しているという記事以外は日本で報じられるF-35の記事は計画遅延、というのがかなりを占めていたりします。
F-35開発遅延の要因は単純で、国際共同開発というかたちをとったからです。開発に多くの国が参加する事で各国が使用や要求水準に主張を行い、意見集約の途上で関係者が異動したりで隔靴掻痒の様相を呈して、そしてどこまで技術を共有するか、どこまで技術を提供するかで合意に時間が掛かるからです。当初は、祭新世代戦闘機の開発にかかる膨大な開発費を多くの国で分担できるので、という利点が強調されていたのですが、開発遅延で開発費も高騰、結局アメリカが単独開発していた方が良かったんじゃないのかな、という状況です。こうした機体に防衛省が現時点で興味を示すのは、少々投機的な部分があるようにも思います。
HARUNA
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