北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

防衛産業、我が国防衛力を構成する重要要素の将来展望? 国際協力の法整備波及効果

2013-06-21 23:07:47 | 国際・政治

◆情報漏洩防止と防衛装備多国間国際分業

 内需を超える国際共同開発に続き、技術革新への対応、という視点から前回特集しましたが、今回はもう一つ別の視点から。

Diimg_1679 技術革新、我が国だけの運用体系では将来戦闘というものを全て想定することは出来ず、特に演習環境や演習場を越えての実戦状況の再現を念頭に置いた戦域優位の確保と戦略優位の獲得への情報収集一点についても、やはり我が国単独では限界があることは否めません。

Diimg_3059 実戦環境を我が国が想定する最大規模で再現する、といいましても、仮設敵の装備を想定する脅威へ師団や航空団に艦隊規模で再現し、日本列島全域を以て住民避難と関係機関の協力を以て実弾演習を行えれば可能なのかもしれませんが、世界中でそんなことをやった国もやれる国も一つもありませんし、今後も出てくるわけがありません。

Diimg_2755 このため、実戦経験のある国と、特に戦域優勢の確保への追及を続けているアメリカを筆頭とするNATO諸国との研究や演習等を通じてすすめるほかない、これが技術革新への対応には一国ではなく、多国間での連携による新しい戦術や戦略の模索を行う必要、として提示したわけです。

Diimg_3725 他方、今回示したい多国間協力は、多国間国際分業や国際共同開発の推進を経て、主たる目的である有効な装備品の効率的な開発と運用整備基盤の恒久的な維持という難題の達成とともに、もう一つの問題である国内法の整備という分野への波及があるのではないか、ということ。

Diimg_4288_1 これは過去の記事で、防衛装備品の無いjでは十分でない分野を補う手法として防衛装備品の対外供与という仕組みを考える中で、例えば我が国係に潜水艦を輸出する場合、報道公開では入り口のハッチの厚さから秘密としているのに、輸出してこの秘密を維持できるのか、というように、我が国では国産装備品のブラックボックス化や、技術供与と情報流出阻止の両立という視点が確立されていない、という点を問題として提示しています。

Diimg_3505 しかし、これは同時に、我が国への防衛装備品を供与する際にも、必要な情報管理の仕組みが求められているわけであり、例えばアメリカが日本へ装備品を輸出する際に、その輸出と装備品の運用体系が構築されることで、日本からアメリカの脅威となる国へ情報が漏洩しないか、危惧することはある意味当然と言えるでしょう。

Diimg_9021 日本が輸出する場合、我が国の重要な秘密が漏れるのではないか、と危惧をすると同時に、実はすでに日本へ輸出した国でもこうした危惧があるわけで、このための日米協定が締結され、必要な情報は防衛機密により守られています。護衛艦などを見学された方は、様々な場所に日米合意に基づく秘密保全区域であり立ち入り禁止、という掲示をご覧になられたことでしょう。

Diimg_8526 実はかつて、航空自衛隊が次期戦闘機としてF-22の導入を模索した際、同時期にイージス艦からどの程度かは不明ですが情報漏洩事件が発生、このほかに不測の業務用PCを補う私物PCからのウィルス感染による情報漏洩事案もあり、これらはアメリカ側でも問題とされ、議会にも報告されF-22の導入に対しても少なくない影響が生じる事となりました。

Diimg_0583 この点で、航空自衛隊は新しい戦闘機としてF-35を導入を決定した際、併せて日本国内での最終組み立てが行われ、実際に他の開発参加国が了承するのか、という水準での情報開示が行われる方向で調整されており、実現すれば、これぞ交渉術、という我が国への波及効果をもたらすと共に、非常に大きな情報保全への世界への責任が生じる事となります。

Diimg_0779 特にF-35は開発中の情報が元来情報保全について先進的であると信じられたアメリカからも様々なサイバー攻撃やヒューミント事案により削り取られるように個々の情報が標的となっており、情報に接近する機会が生じる我が国も今後大きな攻撃に曝されることは言うまでもありません。

Diimg_2838 それならば、もっと使い物にならない戦闘機を揃えよう、という選択肢はあり得ないわけで、これは外圧により、併せてスパイ天国と揶揄された、実のところ実態からかい離した中傷とも思うのですが、その我が国において、特に防衛上もリスクがあった状況を改善する、一つの波及効果となるのではないでしょうか。

Diimg_7957 この点で、防衛産業に係る国際協力は、日本が中々持ちえなかった情報保全といった防衛法の整備面で、一つの今まで為しえなかった波及効果を生み出す、という視点があるわけです。こうした枠組みは、一見数量化された防衛力とは無縁ですが、重要性は非常に大きい。

Nimg_8382 多額の予算を投じて開発した新装備であっても、対抗手段を講じられた時点で陳腐化することとなります。如何に努力した場合でも、運用からどうしても露呈する部分はあり、それまでに新装備へ代替する必要があるのですが、情報保全はこの装備のこうした意味での耐用年数を伸ばす、ということ。

Gimg_8315 これまでは、中で止める、という方式により情報保全を試みていたわけですが、防衛装備品は防衛産業により維持されている、という実情を鑑みれば、どうしても防衛省だけが努力して防ぐことは出来るものではありません、これは国産装備も海外装備も共通するもの。

Gimg_6610 防衛産業からの情報漏洩を阻止する、こうした視点も必要になり、そのためには防衛省の内規や防衛省の努力だけではなく、我が国全体での情報漏洩に対する法整備が必要となるのです。多国間国際分業や国際共同生産という試みは、これを進める重要な要素ともなるのではないでしょうか。

北大路機関:はるな

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コメント (4)
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