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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

安倍政権のアジア重視外交、自衛隊統幕長・陸海空幕僚長相次ぎ中国周辺国へ派遣

2013-06-10 01:05:55 | 国際・政治
■中国艦船の領海侵犯と接続水域侵入を前に 
 安倍政権は今年一月から相次いで統合幕僚長や陸海空幕僚長など最上級指揮官のアジア諸国への派遣を行っている、と6月5日付NHK報道にて紹介されました。 
Oimg_4414_1 防衛省HPでは海外出張などを公表していますが、今年一月から、インド、パキスタン、タイ、シンガポール、インドネシア、ヴェトナム、マレーシア、フィリピン、ブルネイ、オーストラリアへ既に派遣しており、一説には中国を牽制する行動となっている、との見方があるようです。
Oimg_1301 インドやヴェトナムは中印国境紛争や中越紛争などで中国軍より陸上侵攻を受けた歴史があり、南沙諸島問題ではヴェトナム海軍警備隊への攻撃やフィリピンの環礁を不法占拠、マレーシアとの係争地域へ一方的に陣地を構築し占領するなど、関係が悪化しています。こうした一連の中国南下政策を、インドネシアやオーストラリアも警戒しており、併せて重要なシーレーンが通る日本としても対岸の火事では済まされません。
Oimg_4388_1 もちろん、今回の一連の幕僚長派遣は、軍事同盟のようなものを企図したものではなく、両国関係の向上の一手段であり、軍事機構間交流や信頼醸成が目的のものではありますが、中国側としては南方へ軍事力を投射しようとする際に、一定の配慮が必要になるなど、その軍事的な冒険を少なからず抑制する効果はあるでしょう。
Oimg_6596 我が国は第二次大戦後、西側に位置しながら平和外交を一貫し続け、逆に憲法九条に依拠した孤立的な防衛政策を展開してきました。これは、防衛について門扉を閉ざし、世界から孤立する防衛上の鎖国を行ってきました。二十年前のカンボジアPKO以前には、イランイラク戦争邦人救出へ自衛隊が出れず、台風に伴う日本漁船大量遭難に際しても自衛隊派遣の是非が問われる時代があったほどですが、時代の要請はこれを転換させるのでしょうか。
Oimg_1127 対して中国は、1949年の新疆ウイグル自治区武力併合、1950年のチベット武力併合、1958年の台湾金門島砲撃、1959年の中印国境紛争、1969年の中ソ国境紛争、1979年の中越紛争、等など一方的に開戦し攻撃を加えており、気づけば周辺国ほぼ全てに侵攻してしまい、政冷経熱の極致というべき状況となっています。他方、中国自身は中国が繰り返し非難する戦前の我が国の拡大政策を全く同じように踏襲している現状に気づいて欲しいところ。
Oimg_2440 この点、我が国も南西諸島へ軍事的圧力を掛けられており、戦後初めての武力紛争への展開へ予断を許さない状況が続いています。中国包囲網、という勇ましいものではなく、中国に侵攻された・侵攻されつつある被害国の会、というような位置づけで、アジア諸国との交流と関係強化を進めてゆくべきでしょう、これまで、所謂進歩的視点から、このままでは日本がアジアから孤立する、と指摘されていますが、憲法上の一国平和主義と専守防衛はまさにその方向にあり、孤立を回避するべく協力関係を広める視点に立つべきと考えます。
Oimg_0030_1 加えて、日本は冷戦時代に緊張関係のあったロシアとの関係も急速に改善しており、ロシア海軍艦艇が定期的に日本を訪問するようになっているほか、イラク派遣やソマリア沖海賊対処任務等などを通じNATOとの関係も強化されているところ、アメリカ一辺倒の関係から、アメリカの友好国や同盟国との関係へ展開していることが分かるでしょう。
Oimg_0567 併せて、5月14日に晴海埠頭を出港した練習艦隊の遠洋練習訓練では、その目的の一つに諸外国への親善訪問があり、本年はインド洋を西回りに航行する経路が選択、自衛隊創設以来初めてミャンマーとフィンランド、クロアチア、ポーランドに寄港します。このなかで、ミャンマーへの寄港も信頼醸成の一手段となると考えられます。
北大路機関:はるな

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コメント (9)
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