◆人員2300名・戦車28両含む車両800両が参加
防衛省によれば、陸上自衛隊は7月2日から8月4日にかけ、連隊等協同転地演習を実施するとのことです。
訓練は陸上自衛隊が有事の際に組織される統合任務部隊等に対し、遠隔地の部隊が戦闘態勢を維持しつつ迅速に長距離を展開することが目的とされ、車両による陸路機動や艦船を含む船舶による海上機動や航空機による空中機動を行うことを念頭に、部隊移動の能力を練成するもの。
従来は北方機動演習として、ソ連に最も近接する北海道に対し、その軍事的圧力が加えられたことを想定し、本土の師団を北海道へ増援する演習として継続されており、冷戦後には北方への機動に加え、北海道の重装備部隊を西方などに展開させる演習としての性格を有し、演習名称も協同転地演習と改め今に至ります。
今回の連隊等協同転地演習は中部方面総監河村仁陸将が演習担当官として訓練に臨み、名古屋の第10師団を中心とした基幹部隊が派遣、参加部隊規模は人員2300名、車両など800両、航空機9機が参加します。車両800両のうち28両は第10戦車大隊の戦車が派遣され、航空機はCH-47Jが6機、UH-1が2機、OH-6が1機参加するもよう。
人員規模から連隊戦闘団を編成しての派遣のようですが、戦車28両の参加は、第10戦車大隊の半分に当たり、これは派遣される一個普通科連隊に対して二個戦車中隊を配置した増強型連隊戦闘団の編成を採り、北海道へ展開することとなります。
ヘリコプターのうち、CH-47輸送ヘリコプター6機は第10師団には配備されていないため、第1ヘリコプター団等の装備を一時師団の隷下に置き運用することが考えられ、これが第10師団等を、という演習参加部隊の第10師団以外の参加部隊ということなのでしょう。
協同転地演習は、長距離機動訓練と揚陸訓練に実弾射撃訓練という三分野から構成されています。長距離機動訓練は7月2日から14日にかけ車両や船舶及び航空機による機動を実施します。主力は海上輸送となり、海上自衛隊の輸送艦と民間船舶がその輸送の主力となるでしょう。
海上輸送は、海上自衛隊輸送艦の場合、人員最大1000名、完全武装340名を輸送できるとされていますが、近年の装甲化され車両化された部隊を輸送するには数十両程度が輸送できる程度で、普通科中隊に戦車小隊と特科戦砲隊と輸送車両を搭載すれば一杯というところ。
対して、例えば太平洋フェリーが運用するフェリーいしかり、は総トン数15762t、旅客定員777名とトラック184両に乗用車級車両100両を輸送可能となっていて、これは港湾設備を有さない海岸線への揚陸を置くなうための輸送艦と民間フェリーの輸送力の違いを端的に示しているといえるやもしれません。
揚陸訓練は、北海道の浜大樹訓練場において輸送艦からのLCAC揚陸艇を用いての訓練となります。この揚陸訓練は7月8日から9日にかけて行われ、実際に港湾設備の無い海岸へ部隊を海上から直接揚陸させます。併せて民間船舶を用いて揚陸した部隊と共に矢臼別演習場における実弾射撃訓練が行われます。
矢臼別演習場では、行動と実弾射撃訓練が行われます。まず、第一に行進や集結地での行動訓練や攻撃を含めた一連の訓練を実施、続いて重迫撃砲を含む各種装備の実弾射撃訓練の実施及び爆破訓練を行う、とされ、北海道の広大な演習場を用いての効果的な訓練が行えるもの。
大部隊の迅速な展開能力は、東日本大震災における全国からの部隊展開を円滑に実現したことからもその能力の高さは垣間見えますが、併せて今後の想定される有事に際しても、迅速に着上陸が想定される周辺地域へ部隊を展開させることで軍事行動を相手に思いとどまらせることが出来、これが抑止力というものとなります。
訓練は実弾訓練を終了後、7月24日から8月4日まで復路を機動し、駐屯地へと戻ります。復路においても車両による長距離機動や艦船を含む船舶による海上機動と航空機による空中機動を実施し、これも長距離機動の訓練となります。
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)