北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

第4師団創設58周年 福岡駐屯地創設62周年記念行事詳報⑩ 決着をつける普通科の突撃

2013-06-12 23:53:10 | 陸上自衛隊 駐屯地祭

◆土地の奪取奪還、変わり得ぬ戦闘の本質と決着

 戦闘の本質とは何か、それは土地の収奪を介してのあらゆる戦闘及び政治要求への帰結に他なりません。

Fimg_6456_1 福岡駐屯地祭、訓練展示模擬戦。情報収集に始まり特科部隊の火力制圧、戦車部隊による対戦車戦闘を経て、いよいよ戦闘に決着をつける瞬間が近づいてきます、それは奪取された土地の奪還、全ての戦闘行動はこの最終目的のために展開されるといって過言ではないでしょう。

Fimg_6460_1 突撃、軽装甲機動車による普通科部隊の迅速な展開、長い日本列島に続く狭隘で起伏に富み、都市部と農村に高山地帯が入り乱れる国土を縦横無尽に走り回るべく導入された小型装甲車がMINIMI分隊機銃を目標に定め装甲を盾としつつ俊足で前進してゆく。

Fimg_6681 普通科と機甲科の協同、我が方が陣地より展開するこの瞬間が最も危険な瞬間で、我が方の普通科部隊の突撃に対し敵部隊の突撃破砕射撃を警戒し、74式戦車は、その高度な光学監視装置を活かし脅威を先んじて監視し、発見すれば直接照準により即座な排除を行うべく鋭い監視の目を緩めない。

Fimg_6464_1 軽装甲機動車にて敵前へ展開した普通科部隊は時機を見定め降車戦闘へと移行します。軽装甲機動車は操縦手を含め降車戦闘へ展開するため、この直後から機動力は徒歩に限定されてしまう。車上からはMINIMI分隊機銃手が降車隊員を掩護するために残り、射撃を加えてゆきます。

Fimg_6676 戦車発砲、大気を引っ叩く様な衝撃と共に刹那遅れ轟音が這い寄る、戦車が射撃するとの放送が為されたはずだが、降車戦闘を集中して追う視線の先に中々気づかない。これは降車戦闘を行うべく軽装甲機動車が足を止めた瞬間に乗じた敵の反撃への兆候を確認し、機敏に105mm砲の射撃を加えたもの。

Fimg_6469_1 併せて普通科隊員も降車するや否や即座に89式小銃にて軽装甲機動車の扉を盾に油断なく脅威を排除してゆく。軽装甲機動車は7.62mm小銃弾などへの耐弾性能を有しているため、重火器さえ先制し封じてしまえば心強い盾となってくれる。

Fimg_6423_1 戦車の連続射撃は続きます、105mm砲はイギリスL-7系ライフル砲で、射程などの面で現用戦車砲よりも大きな威力を発揮、現用の120mm砲第四次中東戦争では湾岸戦争やイラク戦争で4km前後の目標に対し米軍が使用し効果を上げていますが、7km先の敵戦車をイスラエル軍が撃破した事例があります。

Fimg_6468_1 軽装甲機動車からの89式小銃とMINIMI分隊機銃の射撃も続きます。軽装甲機動車はMINIMI分隊機銃を搭載するほか、01式軽対戦車誘導弾を機動運用する車両としても活躍しますが、今回の訓練展示には人員輸送用として専ら使用されていました。

Fimg_6404 特科部隊のFH-70榴弾砲が次々攻撃準備射撃を行います。二門の火砲は短時間の効力射能力に優れたFH-70の能力を最大限発揮、155mm砲弾が敵陣地の防御機能を叩き潰し、我が方の行動を有利とします。最終弾落下が、突撃の時機、こののちは我が方の突撃を阻害するため射撃できません。

Fimg_6475_1 最終弾落下ッ!、戦機は熟した、一斉に隊員が小銃を手に駈け出してゆきます。戦闘防弾チョッキをはじめ完全装備の普通科隊員はかなりの重量の装備を着込むのですが、どれも生き延び撃破するために不可欠なもの、この瞬間から目的を達するまでの瞬間、瞬発力を維持できるよう強靭な肉体を構築してゆく、とのこと。

Fimg_6691 AH-1S対戦車ヘリコプターが特科部隊の火力支援に続いて上空から支援を行う、特科部隊の攻撃準備射撃終了とともに展開される普通科部隊の突撃に合わせ航空部隊が支援へ展開する、この瞬間の連携が失われれば、それは突撃の失敗や損耗率に跳ね返るため、連携の重要性は死活的と言えるほどに大きい。

Fimg_6380 TOW対戦車ミサイルにより3.75km先の戦車を撃破する対戦車ヘリコプターAH-1Sですが、同時に70mmロケット弾と視線同調式20mm機関砲を搭載し、正確な航空支援を行う事も出来ます。理想は支援戦闘機の近接航空支援を受ける事ですが、航空自衛隊と連携する前線航空統制員が不足しており、やはりヘリコプターという自前の支援に頼る部分が大きい、というわけです。

Fimg_6478_1 普通科部隊が戦闘に決着を点ける、とは、土地を占領した敵部隊に直接銃火を叩き込み、銃剣を突き刺し、徒手で以て泣き叫ぶ敵も両手を挙げた敵も、兎も角敵の生死を問わず陣地から引き摺りだすことによってしか為し得ないものであり、これは戦車にも火砲にも出来ない任務である、ということ。

Fimg_6675 戦車もこの瞬間からは主砲の対戦車戦闘力と同軸の連装銃の薙射の威力を封じられます、そういうもの戦車砲弾で対戦車用の徹甲弾には極超音速を発揮するための被筒を有しており、これが射撃後に分離することから戦車より前の人員へは生命の危険が生じるから。

Fimg_6502_1 戦車はこの為、突撃する普通科隊員とともに並走して進んでゆきます。実際の戦闘であれば、攻撃と同時に相手の陣地前に構築された地雷原や防御用障害物を除去するべく施設科部隊が支援します。今回の想定は、仮設敵が陣地占領と共に防御戦闘を展開したため、相手に堅牢な陣地構築の時間を与えなかった、のでしょう。

Fimg_6389 突撃を支援する96式装輪装甲車の12.7mm重機関銃、装甲車の不足が本土師団の難点であり、戦車大隊や後方支援連隊戦車直接支援隊の車両に協同する普通科隊員が乗車しています。射撃支援、親指ほどの弾薬を連射する12.7mm機銃の威力と射程は大きく、軽装甲車位ならば破壊してしまうほど。

Fimg_6514_1 MINIMI分隊機銃の支援射撃は続く、射手は弾幕が我が方の突撃を阻害しないよう、射撃訓練を積んでいる。なお、この状態で対戦車火器が残れば退避できず、後続の装甲車用の通路を空けて停車しなければならない、少々不便で、遠隔操作銃塔RWSの開発が進んでいます。これは元々軽装甲機動車が乗車戦闘のみを考えていた背系の名残り。

Fimg_6508_1 仮設敵陣地前に展開し、89式小銃による掃射を行う普通科隊員、連射の反動に銃身を持ち上げられ照準に支障を来さないよう下から突き上げるように短い点射や薙射を繰り返します。仮設敵からの反撃は滞り、我が方の突撃は成功したようです。生き残った想定の敵は敗走するか、降伏するか。

Fimg_6510_1 掃討を終えつつも、素早く小銃の弾倉を取り換え、警戒を続けます、状況終了。我が方は陣地を奪還し、訓練展示を完了しました。空包の炸裂音が止み、余韻を残しつつの状況終了、これを以てこの会場での式典と訓練展示はすべて終了しました。こののち、福岡駐屯地祭は装備品展示などへ移ってゆきます。こちらは次回の紹介としましょう。

北大路機関:はるな

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コメント (6)
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