北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

防衛装備庁創設を検討、陸海空自衛隊装備品調達の一元化と効率化を目指す

2013-06-16 23:54:26 | 防衛・安全保障

◆統幕の外局とした方が理想ではないか?

 毎日新聞の報道によれば、防衛省は防衛装備品の調達を一元化する観点から、防衛省に防衛装備庁を独立させる構想がある、とのこと。

Uimg_3576 これは、防衛装備品の調達を行う二兆円規模の予算を一括して扱い、現状の陸海空自衛隊が独自に要求した装備品を防衛省内局が予算として編成し、この予算に基づいて大臣装備施設本部が防衛産業との間で契約を行う形を装備品の共通化や施設の統合化という方向へ改める、というかたち。

Yimg_5348 記事では具体的な例として通信システム等について、通信という同じ分野でありながら、陸海空別々のシステムを有している点など、自衛隊の統合運用を行う上で支障となっている部分を払拭する意味でも重要性がある、と説明されていました。

Simg_7354 ただ、例として挙げられている通信システムについては、そもそも師団通信システムや海幕情報システムなどを挙げれば活動範囲が根本から異なり、求められる運用体系から短波か超短波かなど通信の前提部分も任務により異なるため、一概に通信システムを一元化していいものなのか、根本の部分で統合化しても、末端部分は別個のものになり、相互互換性には限界がある、とおもいます。

Timg_9770_2 一方で、これは例えば回転翼機用エンジンなどで共通化を行えば、装備調達を合理化でき、機体価格を下げることで限られた予算にて最大限の装備を調達できる、という利点があります。共通化できる部分を少しでも増やすことで、同時に最小限の予算でも維持できる防衛産業の規模も大きくなるかもしれない。

Timg_2816 ただし、これも両刃の剣で、無理に共通化できない部分を共通化しようとすれば帯に短し襷に長しという装備となってしまう可能性があります。即ち、共通化したつもりが、かえって大袈裟な装備となってしまい、予算面で圧迫してしまうかもしれない。

Pimg_6519 共通化は必要ならば自然に成立するものです。例えば航空機で、かつてV-107ヘリコプターなどは陸上自衛隊に輸送用と海上自衛隊に掃海用と航空自衛隊が救難用に使用していますしUH-60なども陸海空自衛隊で共通しています、必要ならば共通化される、ということ。

Uimg_4714 一長一短あるもの、目的と手段の相違を考えれば結果として共通化できるものは基本共通化しているのですから、別個に行う、という事で独立した省庁を防衛省の下に創設するよりは、陸海空自衛隊での装備調達を統幕会議の外局として統合化する方法を模索してはどうか、とも。

Timg_9279 一方で、防衛産業と防衛装備調達を考えた場合、生産ライン維持を真剣に考え、併せて予算を確実に確保し、契約を確実に履行する仕組みの方が、効率化と言いつつも防衛産業そのものの体力というものが持続できず、破綻してしまう可能性がありますので、こちらを忘れてはなりません。

Jimg_1026 こうなりますと、契約の履行という面では予算の面で防衛省と財務省という今の構図を、アメリカ政府が確定し国防総省へ命令し財務省が履行する根拠となる国防権限法のような政府が防衛権限法のような法律を画定しこれを元に防衛省が予算を選定し財務省に要求する、という、まさに政治主導の手法で、政府と財務省、政府と防衛省、が必要なのではないでしょうか。

Simg_9696 防衛装備品を一括して調達する場合には、前述の通り防衛予算の二兆円を防衛装備庁が一括して行う事となるのですから、一軒合理的に見えるのですが、装備品を必要としているのは防衛装備庁ではなく陸海空自衛隊であることに変わりはないわけで、必要順位の選定を行う部分も財務省と折衝する以前に内部での折衝が必要となってしまう。

Simg_9983 それよりも、防衛権限法にあたるような政治決定として内閣と国防会議が了承した防衛計画の大綱、これに定められた主要部隊や装備定数の別表を元に、耐用年数で必要数を割った調達数を装備することが、必要となるはずであり、これは防衛計画の大綱に基づく装備数を政治決定として政治が防衛省へ整備を命じる構図とすれば、装備庁の創設は必要ないのではないように考えるところ。

Img_45118 即ち、我が国は文民統制を行う民主国家であり、自衛隊に任務を付与するのは政治です、そして政治が任務を増加させ、必要となる部隊と装備が増大するのですから、これを実現させる装備調達の要請は財務省が応えるのではなく政治の責任において行われるべきです。こうした態勢が構築される前提で、装備調達の効率化はあり得るわけで、それ以前に無理を押し通す方便として装備庁を求めるのならば、結果は望まれない方向に進むのではないでしょうか。

北大路機関:はるな

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コメント (5)
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