北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

対領空侵犯措置任務と増大する緊急発進へ、量的強化の必要性

2015-03-08 23:23:55 | 航空自衛隊 装備名鑑
◆戦闘機、量的充実と質的充実
 南西方面の緊急発進状況増大へ鑑み、備忘録的に。

 我が国の防空は創設以来、広大な国土防空に鑑み相当な質的強化を念頭に推移してきました、これは室に代えて数量の充実を図らなかった、図る事が政治的に難しかった、という面も踏まえて怠惰ではなく政治的帰結にその要因の全てではなくとも一端を見出す事になるのですが。

 戦後の自衛隊は、特に周辺国へ脅威を及ぼさないという念頭での運用体系の構築、前提に強大な在日米軍の存在があり、我が国への武力攻撃は少なくとも自衛隊草創期の運用体系構築の時点では、限定戦争以外は生起しないという念頭で、最小限の防空能力というものを構想しました。

 航空自衛隊は高性能の戦闘機を導入する志向がありますが、この背景には広大な国土、日本列島を欧州に当てはめれば稚内の位置に北欧ヘルシンキと与那国島の位置に地中海を超えて北アフリカのチュニスが来る、という広大な国土を防空するには航続距離の大きな航空機を整備するほかなかったわけではありますが、結果、数を揃えるのではなく精鋭化を目指した、というかたち。

 ただ、この前提は戦闘機の航続距離が自衛隊草創期には限られており、爆撃機からの本土防空を念頭に置いていた、という強い影響があり、現在のように戦闘機が我が国土の大半を戦闘行動半径に含める程に性能が向上し、加えて冷戦終結後に緊急発進の実施件数が増大する、という状況は想像できていません。

 現状の状況に鑑み、戦闘機の質的充実はある程度必要なのですが、ハイローミックスと陸海空の共同や協同運用というものを真剣に検討し、特に質的な最低限度、敵空中警戒能力や重要航空機排除等の能力を保持しつつ、量的充実に関わる二機種の戦闘機を取得する検討を行わなければならないのでゃないでしょうか。

 併せて基地の不足も深刻な問題となりつつあり、南西諸島では那覇基地のみの現状から、嘉手納基地や普天間基地等米軍基地の日米共同運用、近年中国機の接近が欧題する奄美大島への陸上自衛隊新駐屯地建設に合わせた、戦闘機部隊の常駐しない補助飛行場、南九州の鹿屋航空基地での海空自衛隊や高遊原分屯地の陸空共同運用も真剣に検討すべきと考えるところ。

 こうした視点を示しますと、海空重視偏重の視点を持つ方から更に陸上自衛隊を縮小して軽量化し予算を捻出すべき、という視点もでてくるかもしれませんが、現状の特科火力縮小状況は航空自衛隊に近接航空支援能力と航空阻止能力という対地攻撃能力強化の需要を高めるものであり、結局減らした陸上防衛力は陸上防衛力の必要性が変わらない以上、海空の負担となるわけです。陸上防衛は負担であり害悪という視点を突き付けられた方も居ますが、それは独立国であることが負担であるという視点と同義で、そういう方はさっさと第三国への移住を検討すべきかもしれません。

 他方で、米海兵隊のように陸上自衛隊へ特科部隊の全般支援火力や機甲部隊の対機甲破砕能力の一部を代替すべく、戦術戦闘機を、航空自衛隊のように電子戦機器を常時最新とすることは予算上限界がありますし、空対空戦闘の比重も必然的に低下するでしょうが、陸上自衛隊へ戦闘機を配備させ統合運用させる、という視点、長期的に考える必要は、指摘できるでしょう。

 もう一つは、海上自衛隊航空、勿論イージス艦の艦対空ミサイルを含め本土防空へ、実際には平時にイージス艦が艦対空ミサイルを投射すれば戦争になりますので、対領空侵犯措置任務の一部を代替するならば戦闘機に追随出来る機動性を有し警告を行える航空機が不可欠なのですが、こうした装備に必要性も検討すべきです。

 以上の視点、要諦は戦時に勝利するだけの実戦力を整備し、戦時を迎えるという選択肢であなく、抑止力を発揮し戦時という状況に陥る事を阻止する必要があります。この為には対領空侵犯措置任務は防空と制空権維持への誇示する抑止力の先端にあり、ここが飽和してしまえば、相手国が軍事的冒険を選択肢に含める障壁を低める事にもなる、ということ。

 軍事機構の任務は戦争の抑止であり戦争を待って勝つことではありません。対領空侵犯措置任務と増大する緊急発進へ、飽和状態に陥っては抑止力全般が破綻する可能性があり、戦時に勝つだけではなく戦時という状況の成立を回避するために質的強化に可能な限り両立する量的強化の必要性を考える次第です。

北大路機関:はるな
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コメント (15)
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