◆クリミア危機とウクライナ情勢
ロシア国営放送が15日に放映したクリミア危機クリミア併合一周年番組”クリミア、祖国への道”において、ロシア軍はクリミア危機に際し、核兵器の準備を行っていたことをプーチン大統領が発言しました。

クリミア危機はウクライナにおける親ロシア派のヤヌコーヴィッチ大統領が民主化暴動により首都を追われ、親欧米派による臨時政権が樹立したことを契機としたロシア黒海艦隊基地の位置するウクライナ領クリミア半島へのロシアによる編入に際し、クリミア半島へロシア軍部隊を派遣したことを認めたうえで、核兵器使用の準備を行っていた事を認めたかたちです。

核攻撃は実行されなかったためその標的などは明らかにされていませんが、ロシア軍の核兵器は、クリミア半島の武力併合に際しNATO軍等が展開した場合へ策源地への限定核攻撃を行うことが想定されていたのでしょう。根拠として、NATOは1980年代より空中機動部隊と機甲部隊をデータリンクにより密接に協同し高速で機動するエアランドバトルを前提とした改編をおこなっているため、拠点となる策源地や空軍基地を叩く事でしか大規模戦闘に対応できない可能性があるためです。

国営放送の”クリミア、祖国への道”では、欧米のウクライナ危機においてロシア軍が実際に行動したクリミア地域へ欧米が攻撃をお粉可能性は認識しており、世界的な規模での核兵器を全面的に使用する必要はないとの予測は行われていたものの、必要に応じ警戒態勢を即応体制に引き上げ核兵器使用準備を行える体制を構築するための必要性は認識しており、警戒態勢を段階強化したとのことです。

核兵器が使用される状況を予測しますと、世界的な紛争へ展開することを避ける言及でしたのでドイツ本土などNATO加盟国領内への核攻撃は避け、使用する場合でも水爆等の戦略核兵器ではなく広島型原爆程度乃至それ以下の戦術核、使用される状況もクリミア半島へ展開したロシア軍部隊に対しNATO軍が大規模な攻撃を実施した場合の黒海海上へ支援展開するNATO海軍部隊か、ウクライナ領内における親ロシア派住民地域へ影響が限られる範囲内でのウクライナ領内へ進出したNATO軍部隊への使用、という方式が考えられたというところ。

ロシア大統領が核攻撃の可能性を考えていた点に言及した点は、大きな意味があります。ウクライナ危機に際して核兵器の使用準備を行った点に言及すれば、核攻撃を前提として核恫喝を行ったことになりました、これは慎重にさけ、一年前のクリミア危機に際して核兵器使用の準備を行っていたという表現を採っていることは非常に大きな意味でして、核恫喝を現在進行形の事態に対し行うならば、安保理決議の対象となり、ロシアは常任理事国ではあるものの当事者として安保理での主導権を失う可能性がありました、しかし、懐古の形ならば核恫喝には直接的には当たりません。

実際に核攻撃の準備を行っていたのか、これは兆候を示さなかった点で使用は思考の枠組みには入っていたものの、現実性は当時ほぼなかったのではないと考えます。こういますのも、核兵器は戦術核戦域核戦略核問わず政治的なものであり、運用を示唆することは非常に慎重に行わねばなりません、核兵器運用の最大の要とは実戦における高威力の爆弾というものでは決してなく、核抑止力の均衡が国際公序となっており平時における世界大戦規模の全面戦争を通常兵器に限定するものを含め抑止することと核兵器運用を示唆する事で核抑止均衡を国際公序としている以上使用させないという均衡を国際公序維持を言う観点から最大の共通利益とし、相手に最大限の譲歩を引き出す手段になるのですから。

これは、核兵器を使用する以上、核兵器でなければ対応できない標的が存在しており、核兵器を使用することで失う国際関係における損益を核攻撃しないことで失う利益が上回亭る前提があります。そして譲歩を引き出す際には、核兵器の使用準備を行ていることを誇示することで、相手からの譲歩へ繋げる重要な要素となりますが、今回はこれが示されませんでした。反論に、クリミア危機へNATO軍が大規模部隊を派遣しなかったことはロシア軍の核兵器使用兆候を受けてのものであったのではないか、という視点ですが、そもそもNATO理事会がNATO加盟国でもなくNATO域外にあたるウクライナ領内へ部隊を派遣する方針を定めていませんでしたので、後日談として示した方にこそ意味があるのでしょう。

しかし、この発言に意味が無かったのかと問われれば全くそうではありません、真逆です。前述の通り、核兵器を使用しないという国際公序があり、核兵器の使用兆候を示唆することで相手に最大限の譲歩を引き出すのが核抑止の均衡です、そしてロシアのプーチン大統領は、必要ならば当時核兵器を使う可能性があったことを示し、必然的に今後必要な状況があるならばロシアは核兵器を使用する、と明示したことに他なりませんので、今後のウクライナ情勢、ロシアとしては東部ウクライナ情勢を注視し、ソビエト連邦時代の国内に当たり衛星国であったウクライナが欧米よりの路線を展開しつづけ、ロシア南部へ新しいNATO加盟国を構築するような動きがあれば、軍事行動は辞さないし、その際に妨害を受けた場合には核兵器の使用を選択肢に含むのだ、と発言したわけでもある、というかたち。

核兵器は使うことを示唆させることで最大限の譲歩を、とは、クリミア危機において核兵器を使う可能性の有無は別として使う可能性があると示したことで、必然的に現在ロシアが中止している東部ウクライナ情勢へもNATOの対応如何によっては核兵器を、と使用を示唆することで抑制する、つまり東部ウクライナ情勢を念頭にクリミア危機時にしようを検討していたとの発言を以て、NATOへの抑制を強いたといえるでしょう。一方で、これは形而的に受け取れば、ロシアは全面戦争以外の限定戦争に際しても核兵器使用を念頭とした運用体系を採っていることを示唆したわけでもあり、ロシアが隣国に当たる我が国としても将来的に核恫喝を受ける可能性を間接的に示唆されたともいえるもの。

我が国北方には大きな脅威が再度出現しつつある兆候であり、北方の隣国に対して非常に慎重な立場と外交を継続し続けなければならない事を今回の発言は示唆しています。他方、一種の核恫喝ではありますが、これによりNATOを中心とした欧米諸国が次に発生するであろう危機、現在も継続中である東部ウクライナ情勢への対応を誤らぬよう、必要な措置を継続する事、更に必要ならば軍事力の投射を覚悟し、核恫喝への備えと抑止力の均衡維持へ注力することが求められます。
北大路機関:はるな
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ロシア国営放送が15日に放映したクリミア危機クリミア併合一周年番組”クリミア、祖国への道”において、ロシア軍はクリミア危機に際し、核兵器の準備を行っていたことをプーチン大統領が発言しました。

クリミア危機はウクライナにおける親ロシア派のヤヌコーヴィッチ大統領が民主化暴動により首都を追われ、親欧米派による臨時政権が樹立したことを契機としたロシア黒海艦隊基地の位置するウクライナ領クリミア半島へのロシアによる編入に際し、クリミア半島へロシア軍部隊を派遣したことを認めたうえで、核兵器使用の準備を行っていた事を認めたかたちです。

核攻撃は実行されなかったためその標的などは明らかにされていませんが、ロシア軍の核兵器は、クリミア半島の武力併合に際しNATO軍等が展開した場合へ策源地への限定核攻撃を行うことが想定されていたのでしょう。根拠として、NATOは1980年代より空中機動部隊と機甲部隊をデータリンクにより密接に協同し高速で機動するエアランドバトルを前提とした改編をおこなっているため、拠点となる策源地や空軍基地を叩く事でしか大規模戦闘に対応できない可能性があるためです。

国営放送の”クリミア、祖国への道”では、欧米のウクライナ危機においてロシア軍が実際に行動したクリミア地域へ欧米が攻撃をお粉可能性は認識しており、世界的な規模での核兵器を全面的に使用する必要はないとの予測は行われていたものの、必要に応じ警戒態勢を即応体制に引き上げ核兵器使用準備を行える体制を構築するための必要性は認識しており、警戒態勢を段階強化したとのことです。

核兵器が使用される状況を予測しますと、世界的な紛争へ展開することを避ける言及でしたのでドイツ本土などNATO加盟国領内への核攻撃は避け、使用する場合でも水爆等の戦略核兵器ではなく広島型原爆程度乃至それ以下の戦術核、使用される状況もクリミア半島へ展開したロシア軍部隊に対しNATO軍が大規模な攻撃を実施した場合の黒海海上へ支援展開するNATO海軍部隊か、ウクライナ領内における親ロシア派住民地域へ影響が限られる範囲内でのウクライナ領内へ進出したNATO軍部隊への使用、という方式が考えられたというところ。

ロシア大統領が核攻撃の可能性を考えていた点に言及した点は、大きな意味があります。ウクライナ危機に際して核兵器の使用準備を行った点に言及すれば、核攻撃を前提として核恫喝を行ったことになりました、これは慎重にさけ、一年前のクリミア危機に際して核兵器使用の準備を行っていたという表現を採っていることは非常に大きな意味でして、核恫喝を現在進行形の事態に対し行うならば、安保理決議の対象となり、ロシアは常任理事国ではあるものの当事者として安保理での主導権を失う可能性がありました、しかし、懐古の形ならば核恫喝には直接的には当たりません。

実際に核攻撃の準備を行っていたのか、これは兆候を示さなかった点で使用は思考の枠組みには入っていたものの、現実性は当時ほぼなかったのではないと考えます。こういますのも、核兵器は戦術核戦域核戦略核問わず政治的なものであり、運用を示唆することは非常に慎重に行わねばなりません、核兵器運用の最大の要とは実戦における高威力の爆弾というものでは決してなく、核抑止力の均衡が国際公序となっており平時における世界大戦規模の全面戦争を通常兵器に限定するものを含め抑止することと核兵器運用を示唆する事で核抑止均衡を国際公序としている以上使用させないという均衡を国際公序維持を言う観点から最大の共通利益とし、相手に最大限の譲歩を引き出す手段になるのですから。

これは、核兵器を使用する以上、核兵器でなければ対応できない標的が存在しており、核兵器を使用することで失う国際関係における損益を核攻撃しないことで失う利益が上回亭る前提があります。そして譲歩を引き出す際には、核兵器の使用準備を行ていることを誇示することで、相手からの譲歩へ繋げる重要な要素となりますが、今回はこれが示されませんでした。反論に、クリミア危機へNATO軍が大規模部隊を派遣しなかったことはロシア軍の核兵器使用兆候を受けてのものであったのではないか、という視点ですが、そもそもNATO理事会がNATO加盟国でもなくNATO域外にあたるウクライナ領内へ部隊を派遣する方針を定めていませんでしたので、後日談として示した方にこそ意味があるのでしょう。

しかし、この発言に意味が無かったのかと問われれば全くそうではありません、真逆です。前述の通り、核兵器を使用しないという国際公序があり、核兵器の使用兆候を示唆することで相手に最大限の譲歩を引き出すのが核抑止の均衡です、そしてロシアのプーチン大統領は、必要ならば当時核兵器を使う可能性があったことを示し、必然的に今後必要な状況があるならばロシアは核兵器を使用する、と明示したことに他なりませんので、今後のウクライナ情勢、ロシアとしては東部ウクライナ情勢を注視し、ソビエト連邦時代の国内に当たり衛星国であったウクライナが欧米よりの路線を展開しつづけ、ロシア南部へ新しいNATO加盟国を構築するような動きがあれば、軍事行動は辞さないし、その際に妨害を受けた場合には核兵器の使用を選択肢に含むのだ、と発言したわけでもある、というかたち。

核兵器は使うことを示唆させることで最大限の譲歩を、とは、クリミア危機において核兵器を使う可能性の有無は別として使う可能性があると示したことで、必然的に現在ロシアが中止している東部ウクライナ情勢へもNATOの対応如何によっては核兵器を、と使用を示唆することで抑制する、つまり東部ウクライナ情勢を念頭にクリミア危機時にしようを検討していたとの発言を以て、NATOへの抑制を強いたといえるでしょう。一方で、これは形而的に受け取れば、ロシアは全面戦争以外の限定戦争に際しても核兵器使用を念頭とした運用体系を採っていることを示唆したわけでもあり、ロシアが隣国に当たる我が国としても将来的に核恫喝を受ける可能性を間接的に示唆されたともいえるもの。

我が国北方には大きな脅威が再度出現しつつある兆候であり、北方の隣国に対して非常に慎重な立場と外交を継続し続けなければならない事を今回の発言は示唆しています。他方、一種の核恫喝ではありますが、これによりNATOを中心とした欧米諸国が次に発生するであろう危機、現在も継続中である東部ウクライナ情勢への対応を誤らぬよう、必要な措置を継続する事、更に必要ならば軍事力の投射を覚悟し、核恫喝への備えと抑止力の均衡維持へ注力することが求められます。
北大路機関:はるな
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