北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

対領空侵犯措置任務と増大する緊急発進へ、量的強化の必要性Ⅲ 欧州機の持つ新しい能力

2015-03-16 21:47:54 | 防衛・安全保障
◆JAS-39戦闘機
 F-16の利点と欠点を提示しましたが、今回からは数回に分けJAS-39について、航空自衛隊のF-15の写真と共に。

 JAS-39の利点について、JAS-39はスウェーデン空軍が自国向けに開発した軽量戦闘機で、制空攻撃偵察の各任務に対応する機能を有することから戦闘機は従来Jと記載していた機種をJAS,としましたものです。限られた兵站支援で運用可能で戦闘行動半径や搭載能力は機体規模が小型である通り大きくはありませんが、比較的安価だ、というもの。

 JAS-39は原型のJAS-39A/B,そして電子装置を改良しA型から回収が可能なJAS-39C,開発中でブラジル空軍が採用することを検討しつつ開発国のスウェーデン空軍では採用されない方針なのですがJAS-39E/F,所謂グリペンNGというものがあります、最新型に当たる機体で現在国際市場に提示中です。

 本稿はJAS-39E/FとJAS-39C、このあたりは項目ごとに分ける事としましょう。リースなどの選択肢がありますが、この場合最新型のグリペンNGとJAS-39のC型等は費用が変わってきますし、長期的に運用するのか、応急的に採用するのか、このあたりで変わってきますから、ね。

 JAS-39の運用は、主要空軍基地を基点とした航空戦闘が主要空軍基地の弾道ミサイル攻撃や爆撃により無力化される可能性が付きまとう中で、2~6機程度に分散して運用し、一か所に固まる事で一挙に撃破される可能性を抑えた点が特色です。弾道ミサイル15発で基地機能は喪失するといいますから、分散の利点は大きい。

 従来運用していたJ-37戦闘機もこの点を重視し400m級の高速道路を臨時飛行場として運用できる特色がありましたが、その分重量が大きくなりすぎたJ-37は補強道路で無ければ運用不能で、JAS-39はこの反省から滑走距離は多少長くなっても通常の道路で運用できるよう軽量化しました。

 ただ、我が国の場合には高速道路での運用は直線高速道路区画であり、高速道路標識や速度監視装置等に加え照明等が離発着に障害となる設備を有せず中央分離帯を可搬式として即座に移動させられるものとするなど条件がありまして、このあたり路面強度面での可否よりも制約要素として大きいかもしれません。

 さて、御承知の通り航空自衛隊のJAS-39に対する視点ですが、元々候補ではありませんでした。しかしこれには日本固有の事情がありまして、従来の航空自衛隊の戦闘機をそのまま1:1で置き換えるものでは無い特性を考えなければならないでしょう。まず航続距離が短いという点、これだけで大きな一つとなります。

 更に航空自衛隊は分散運用を元々考えていないという点、航空自衛隊はそもそも高速道路からの運用を前提としていない点、などなどJAS-39が候補になり得なかった理由は非常に多いのですが、しかし、これを従来の戦闘機の会いたいとしてJAS-39を考える場合と、別物の運用を行う戦闘機と異なる点を理解すべきでしょう。

 候補に挙がらない最たる理由は航空自衛隊の戦闘機数が防衛計画の大綱に上限が盛り込まれているため、軽量安価な航空機を採用したとしても高性能で高価な航空機を採用したとしても機数は変わらず高性能機を整備したほうが同じ機数ならば有利という点から、まったく想定に含まれていません。

 これを踏まえたうえで、今回の当方が示しました視点は、戦闘機が不足する状況が生じているという前提の上で、戦闘機数を増勢するという視点を供していますので、これまでの航空自衛隊戦闘機とは異なった視点から運用する、という幾つかの視点と共に提示しました、次回からはその詳細を列挙することとします。

北大路機関:はるな
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コメント (8)
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