北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

対領空侵犯措置任務と増大する緊急発進へ、量的強化の必要性Ⅵ 戦闘機作戦支援機能

2015-03-25 21:55:00 | 防衛・安全保障
◆戦闘機を支援する機能 
 島嶼部防衛に有利というJAS-39の特性を前回紹介しましたが、JAS-39は、整備車両群を、例えば輸送艦おおすみ型で輸送する場合、航空自衛隊の既存航空機よりも柔軟に対応可能です。

 おおすみ型輸送艦では、トラックと警備車両の搭載能力から4個飛行班分、最大で5個飛行班分の車両を弾薬や燃料と警備車両と共に輸送可能で、エアクッション揚陸艇LCACをのべ3隻の往復で揚陸することが可能です。輸送艦には2隻搭載されていますので、一時間半程度で揚陸完了、というところ

 実際には、上記空港を持つ島嶼部へまず輸送艦以外のヘリコプター部隊により空港警備部隊、陸上自衛隊の警備支援部隊とともに空輸し、飛行場と港湾を確保、続いて輸送艦からトラックを揚陸することで、一隻の輸送艦は4カ所から5カ所の飛行場を基地とする必要な資材を輸送できます。

 輸送ヘリコプターによって分散運用することも可能ですから、南西諸島での運用の場合、九州の春日ヘリコプター空輸隊か沖縄の那覇ヘリコプター空輸隊のCH-47輸送ヘリコプター、場合によっては第15旅団のヘリコプター隊を動員すれば、短期間の運用に必要な機材も輸送でき、南西諸島20の飛行場を潜在的に基地化できる、ということ。

 利点満載に見えるJAS-39ですが、実は大きな問題を有しています。スウェーデン空軍向けの機体として開発されたJAS-39は200機以上が生産されましたが、スウェーデン空軍の戦闘機定数が削減へ転じており、新規製造よりはスウェーデン空軍の余剰機をリースとして運用する体制が新造機の大きなライバルとなってきました。

 そして輸出はJAS-39,以前のJ-37と比較し健闘していまして、スウェーデン空軍に加え、南アフリカ空軍とタイ空軍が導入、ブラジル空軍が導入を決定、リースではハンガリー空軍とチェコ空軍が借り受け、スイス空軍が検討中となっています。かなりの健闘ですが、リース以外の輸出実績は約40機、輸出決定が36機、検討中が制約となった場合此処に22機が加わるのみで、絶対数としては大きくありません。

 ここにスウェーデン空軍の戦闘機数削減が加わりますので、近代化改修は機数で費用を割る場合、その改修費用を開発費で分割した場合かなり割高となってしまう可能性があるのです。そしてスウェーデン空軍は現在のところ戦闘機部隊の増強は検討していません、この点に近代化改修の度合いや運用基盤の微妙な不確定要素が存在する、ともいえるでしょう。

北大路機関:はるな
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コメント (1)
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