◆3.11から四年
まもなく、3.11東北地方太平洋沖地震/東日本大震災より四年が経ちます。
我が国は多くの地震災害が発生するという常識に依拠しましても、先進国で数時間のうちに一万以上の人命が失われ、それ以上の人命が生死の分水嶺を彷徨うという非常時、第二次世界大戦後としては非常に稀有な事例であり、此処までの異常事態は当方としては記憶にありません。
実際、当方も仕事場がかなりの距離を隔てているにもかかわらずゆっくりとした揺れに襲われ、数日後に足を運んだ横浜は市街地が電力不足により非常に暗く、首都圏では静岡県を震源とする更に震度五弱の地震も発生、日本全土が非日常、という文字通り有事であったように記憶するところ。
しかしながら、あの東日本大震災を契機として全国の歴史地震という科学測定以前の伝承や古文書に残る地震被害や地質調査により判明した巨大地震への調査が再検討され、所謂大規模地震対策特別措置法に盛り込まれた東海地震のみの警戒であった我が国地震防災の体制も切り替えられる歴史の分岐点となりました。
有事、当方が学部生だったころに有事法制反対の署名等を強くせまられたことや様々な論争がありましたが、東日本大震災の状況はまさに有事であり、危機管理体制が不完全で、特に政治が必要な機能を喪失した状況では、事態拡大阻止へ支障を来す事も大きな教訓の一つ。
改めて平時からの準備、大規模な交通統制と物資集約に関しては機能したものの、原子力事故拡大阻止への政府支援、計画停電など産業基盤インフラ維持に関する政府の無策、復旧の復興転換へのイニシアチヴに関する政府の無策、非常時に立法権限を有しているのは政治なのですが、其処へ行政府として必要な措置を採り政策とすることに後れを取れば、復興はここまで遅れる、とも痛感したものです。
一方で、被災地の混乱した航空管制へ早期警戒管制機が活躍し、イージス艦とヘリコプター搭載護衛艦の指揮集約機能が、後日にお話を伺えばうかがうほど、実際に想定した以上の機能を果たしていたものと知り、有事へは平時の経験と物資に機材の備えの蓄積が左右する、とこちらも痛感しましたしだい。
こうした上で今後我が国を襲うであろう南海トラフ地震については、その被害範囲や経済的損失に人的被害の全ての面について、東日本大震災以上の規模の被害が想定されるとの、歴史地震の分析と地学的調査の合致を見たことは、憂鬱と成らざるを得ない一方、何が備えられるか、真剣に考えなければならないと突き付けました。
被災について、第一次的には地域の防災基盤と公的機関、二次的に全般支援として自己完結能力を有する軍事機構としての自衛隊や同盟国軍隊の機能、三次的に非常時における立法府と行政府の一種超法規的な判断を含めての対応が必要になり、当方は二次的な部分に重点を置き、本ブログにおいて議論の提起を行ってきましたが。
やはり考えさせられるのは、全般支援に当たる自己完結能力を活かした自衛隊の能力、地域防災力は住民が参画する以上、参加人員規模では最大の規模と即応性を有するものの、得てしてその基盤は平時の社会インフラの機能を前提とした平時感覚を完全に脱せられるものではありません。
以上踏まえ自衛隊への期待は大きいものの、自衛隊の本来任務は国土防衛で、災害からの国土防衛も含まれるものの、主たる任務は他に代替する手段が無い外敵からの防衛、流石に民間主体の国土防衛は、特に戦闘という部分でゲリラ戦などを展開するわけにはいきませんという意味で、主幹は防衛、蔑ろには出来ないというものです。
こうした限られた状況において、我が国土を襲う今後の大規模地震などの被害へ、どういった対応を初動において展開することが多くの人命の保護と共に復旧復興に展開させ、日常を回復できるのか、極端に示すならば防衛と防災の両立できる装備体系など、模索しなければならないでしょう。
これは主として戦略機動と兵站強化に情報収集情報共有など、防衛に応用できる能力、自己完結能力を有する自衛隊の一部分を強化することで得られる、防衛防災双方に資する分野であり今後の強化が双方に資する分野があり、特に戦略機動と情報共有は南西諸島有事にも応用できる分野、より深く強化が必要だと考えるところ。
併せて、あの東日本大震災においても災害派遣に一名も人員を割くことが出来なかった部隊が幾つか聞くのですが、通信量増大等、軍事行動直前の兆候が見られた事例が実際にあり、我が国が次の震災により苦境に陥る状況を周辺国で好機として受け止めかねない勢力が、東日本大震災により存在することが分かっています。
言い換えれば、防災と防衛の二方面作戦を強いられるリスクが今回突き詰められたわけで、突発的な災害へは我が国も周辺国もその発生を正確に予測する事は出来ないのですが、防災に比重を置き過ぎた場合に周辺国の悪意によりもう一方の足を救われる可能性が生じた事、忘れてはなりません。
僥倖にも、東日本大震災に際しては早期に同盟国であるアメリカが我が国を全面的に支援する姿勢と行動の実行で示したことで、緊張は杞憂に終わりましたが、国家危機、有事、東日本大震災以前には別の世界の視点のように実感がなかった状況、これを繰り返さぬように次に備えるにはどうするべきか、広い議論が必要でしょう。
北大路機関:はるな
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
まもなく、3.11東北地方太平洋沖地震/東日本大震災より四年が経ちます。
我が国は多くの地震災害が発生するという常識に依拠しましても、先進国で数時間のうちに一万以上の人命が失われ、それ以上の人命が生死の分水嶺を彷徨うという非常時、第二次世界大戦後としては非常に稀有な事例であり、此処までの異常事態は当方としては記憶にありません。
実際、当方も仕事場がかなりの距離を隔てているにもかかわらずゆっくりとした揺れに襲われ、数日後に足を運んだ横浜は市街地が電力不足により非常に暗く、首都圏では静岡県を震源とする更に震度五弱の地震も発生、日本全土が非日常、という文字通り有事であったように記憶するところ。
しかしながら、あの東日本大震災を契機として全国の歴史地震という科学測定以前の伝承や古文書に残る地震被害や地質調査により判明した巨大地震への調査が再検討され、所謂大規模地震対策特別措置法に盛り込まれた東海地震のみの警戒であった我が国地震防災の体制も切り替えられる歴史の分岐点となりました。
有事、当方が学部生だったころに有事法制反対の署名等を強くせまられたことや様々な論争がありましたが、東日本大震災の状況はまさに有事であり、危機管理体制が不完全で、特に政治が必要な機能を喪失した状況では、事態拡大阻止へ支障を来す事も大きな教訓の一つ。
改めて平時からの準備、大規模な交通統制と物資集約に関しては機能したものの、原子力事故拡大阻止への政府支援、計画停電など産業基盤インフラ維持に関する政府の無策、復旧の復興転換へのイニシアチヴに関する政府の無策、非常時に立法権限を有しているのは政治なのですが、其処へ行政府として必要な措置を採り政策とすることに後れを取れば、復興はここまで遅れる、とも痛感したものです。
一方で、被災地の混乱した航空管制へ早期警戒管制機が活躍し、イージス艦とヘリコプター搭載護衛艦の指揮集約機能が、後日にお話を伺えばうかがうほど、実際に想定した以上の機能を果たしていたものと知り、有事へは平時の経験と物資に機材の備えの蓄積が左右する、とこちらも痛感しましたしだい。
こうした上で今後我が国を襲うであろう南海トラフ地震については、その被害範囲や経済的損失に人的被害の全ての面について、東日本大震災以上の規模の被害が想定されるとの、歴史地震の分析と地学的調査の合致を見たことは、憂鬱と成らざるを得ない一方、何が備えられるか、真剣に考えなければならないと突き付けました。
被災について、第一次的には地域の防災基盤と公的機関、二次的に全般支援として自己完結能力を有する軍事機構としての自衛隊や同盟国軍隊の機能、三次的に非常時における立法府と行政府の一種超法規的な判断を含めての対応が必要になり、当方は二次的な部分に重点を置き、本ブログにおいて議論の提起を行ってきましたが。
やはり考えさせられるのは、全般支援に当たる自己完結能力を活かした自衛隊の能力、地域防災力は住民が参画する以上、参加人員規模では最大の規模と即応性を有するものの、得てしてその基盤は平時の社会インフラの機能を前提とした平時感覚を完全に脱せられるものではありません。
以上踏まえ自衛隊への期待は大きいものの、自衛隊の本来任務は国土防衛で、災害からの国土防衛も含まれるものの、主たる任務は他に代替する手段が無い外敵からの防衛、流石に民間主体の国土防衛は、特に戦闘という部分でゲリラ戦などを展開するわけにはいきませんという意味で、主幹は防衛、蔑ろには出来ないというものです。
こうした限られた状況において、我が国土を襲う今後の大規模地震などの被害へ、どういった対応を初動において展開することが多くの人命の保護と共に復旧復興に展開させ、日常を回復できるのか、極端に示すならば防衛と防災の両立できる装備体系など、模索しなければならないでしょう。
これは主として戦略機動と兵站強化に情報収集情報共有など、防衛に応用できる能力、自己完結能力を有する自衛隊の一部分を強化することで得られる、防衛防災双方に資する分野であり今後の強化が双方に資する分野があり、特に戦略機動と情報共有は南西諸島有事にも応用できる分野、より深く強化が必要だと考えるところ。
併せて、あの東日本大震災においても災害派遣に一名も人員を割くことが出来なかった部隊が幾つか聞くのですが、通信量増大等、軍事行動直前の兆候が見られた事例が実際にあり、我が国が次の震災により苦境に陥る状況を周辺国で好機として受け止めかねない勢力が、東日本大震災により存在することが分かっています。
言い換えれば、防災と防衛の二方面作戦を強いられるリスクが今回突き詰められたわけで、突発的な災害へは我が国も周辺国もその発生を正確に予測する事は出来ないのですが、防災に比重を置き過ぎた場合に周辺国の悪意によりもう一方の足を救われる可能性が生じた事、忘れてはなりません。
僥倖にも、東日本大震災に際しては早期に同盟国であるアメリカが我が国を全面的に支援する姿勢と行動の実行で示したことで、緊張は杞憂に終わりましたが、国家危機、有事、東日本大震災以前には別の世界の視点のように実感がなかった状況、これを繰り返さぬように次に備えるにはどうするべきか、広い議論が必要でしょう。
北大路機関:はるな
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