■護衛艦の能力と巡視船の能力
前回までに線の日本の巡洋艦構想、研究課題となり実現しなかった艦艇の計画などを示してみました。
ヘリコプター巡洋艦構想はそのままヘリコプター搭載護衛艦はるな型に収まり、その後の巡洋艦隊構想や全通飛行甲板型護衛艦構想は一旦ヘリコプター搭載護衛艦しらね型として完成し、ハリアー等の艦載機導入計画も幾度か検討されたようですが、イージスシステムの導入、イージスシステムはハリアー一個航空隊波の費用を要しますが、代替されたかたち。
ただ、全通飛行甲板型の艦艇は長くその有用性などが研究され、はるな型護衛艦を置き換えた平成16年度計画護衛艦、いわゆる16DDH、現在の護衛艦ひゅうが型は全通飛行甲板型護衛艦として完成、続く護衛艦いずも型は飛行甲板をさらに大型化させた設計となっており、上記ヘリコプター搭載護衛艦に関する全通飛行甲板研究が反映されているといえるでしょう。
一方、北大路機関では毎年八月八日を八八艦隊の日、としまして、現在の護衛艦隊機動運用部隊である四個護衛隊群の四個護衛隊に各一隻の全通飛行甲板型護衛艦と弾道ミサイル防衛任務対応イージス艦の配備を、8隻のヘリコプター搭載護衛艦と8隻のイージス艦からなる8個の均一編成の護衛隊編成を提唱してきましたが、示す巡洋艦の方向はこれとはことなるもの。
将来必要な艦艇、勿論ヘリコプター搭載護衛艦の能力であれば航続距離も大きく多様な航空機を搭載して長期間の運用に対応できるものですが、ヘリコプター搭載護衛艦の数が限られている為、あまり稼動艦を遠隔地に常時遊弋させ、任務へ対応させることは望ましくなく、むしろ本土周辺での対潜戦闘や戦力投射任務等へ備える運用が望ましいでしょう。
一方、重武装が不要であるならば護衛艦ではなく海上保安庁が運用する巡視船においてこの種の任務は対応できないか、との視点はあり得るでしょう。実際問題、自衛隊のアフリカ沖での海賊対処任務が開始された際、海賊対処法規の成立まで海上警備行動命令の拡大解釈を行い任務を推進して参りましたが、この点へ国会にて一部政党から海上保安庁を充てるべき、との反論がありました。
結論から先に述べますと、現在の海上保安庁巡視船は、しきしま型の巡視船しきしま、あきつしま、を含め海賊対処任務へ対応することはいくつかの点で難しいといわざるを得ません。一つは、海賊対処が多国間統合任務として実施されているためです、即ち巡視船は護衛艦に搭載されるリンク16に代表されるデータリンク能力を持たないため、多国間の海賊対処へ、円滑に対応するだけの能力をもちません。
もう一つは、航空機との協同で、海上保安庁の航空機は警備救難情報の独自方式を採用しており、連接し運用できません、航空機を搭載し運用する能力を有していても、水上戦闘艦艇には航空機は艦載装備の延長線上、マストに置くか機上におくかとの違いしかないのに対し、海上保安庁の警備救難船の艦載機は航空機が独立し、いわば陸上飛行場から運用するか、船舶から運用するかの発着場の相違でしかないのです。
しかし、巡視船しきしま型はOPS-16レーダーなど護衛艦と同等の装備を一部に搭載し、35mm連装機銃か40mm機関砲を2門と20mm多銃身機銃2門など装備が一定水準あり、特殊部隊運用能力と大型ヘリコプター2機を搭載しております。テロリストの攻撃に備えダメージコントロール能力を設計に盛り込むなど巡視船としては破格の高性能といえるものではあります。
北大路機関:はるな
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
前回までに線の日本の巡洋艦構想、研究課題となり実現しなかった艦艇の計画などを示してみました。
ヘリコプター巡洋艦構想はそのままヘリコプター搭載護衛艦はるな型に収まり、その後の巡洋艦隊構想や全通飛行甲板型護衛艦構想は一旦ヘリコプター搭載護衛艦しらね型として完成し、ハリアー等の艦載機導入計画も幾度か検討されたようですが、イージスシステムの導入、イージスシステムはハリアー一個航空隊波の費用を要しますが、代替されたかたち。
ただ、全通飛行甲板型の艦艇は長くその有用性などが研究され、はるな型護衛艦を置き換えた平成16年度計画護衛艦、いわゆる16DDH、現在の護衛艦ひゅうが型は全通飛行甲板型護衛艦として完成、続く護衛艦いずも型は飛行甲板をさらに大型化させた設計となっており、上記ヘリコプター搭載護衛艦に関する全通飛行甲板研究が反映されているといえるでしょう。
一方、北大路機関では毎年八月八日を八八艦隊の日、としまして、現在の護衛艦隊機動運用部隊である四個護衛隊群の四個護衛隊に各一隻の全通飛行甲板型護衛艦と弾道ミサイル防衛任務対応イージス艦の配備を、8隻のヘリコプター搭載護衛艦と8隻のイージス艦からなる8個の均一編成の護衛隊編成を提唱してきましたが、示す巡洋艦の方向はこれとはことなるもの。
将来必要な艦艇、勿論ヘリコプター搭載護衛艦の能力であれば航続距離も大きく多様な航空機を搭載して長期間の運用に対応できるものですが、ヘリコプター搭載護衛艦の数が限られている為、あまり稼動艦を遠隔地に常時遊弋させ、任務へ対応させることは望ましくなく、むしろ本土周辺での対潜戦闘や戦力投射任務等へ備える運用が望ましいでしょう。
一方、重武装が不要であるならば護衛艦ではなく海上保安庁が運用する巡視船においてこの種の任務は対応できないか、との視点はあり得るでしょう。実際問題、自衛隊のアフリカ沖での海賊対処任務が開始された際、海賊対処法規の成立まで海上警備行動命令の拡大解釈を行い任務を推進して参りましたが、この点へ国会にて一部政党から海上保安庁を充てるべき、との反論がありました。
結論から先に述べますと、現在の海上保安庁巡視船は、しきしま型の巡視船しきしま、あきつしま、を含め海賊対処任務へ対応することはいくつかの点で難しいといわざるを得ません。一つは、海賊対処が多国間統合任務として実施されているためです、即ち巡視船は護衛艦に搭載されるリンク16に代表されるデータリンク能力を持たないため、多国間の海賊対処へ、円滑に対応するだけの能力をもちません。
もう一つは、航空機との協同で、海上保安庁の航空機は警備救難情報の独自方式を採用しており、連接し運用できません、航空機を搭載し運用する能力を有していても、水上戦闘艦艇には航空機は艦載装備の延長線上、マストに置くか機上におくかとの違いしかないのに対し、海上保安庁の警備救難船の艦載機は航空機が独立し、いわば陸上飛行場から運用するか、船舶から運用するかの発着場の相違でしかないのです。
しかし、巡視船しきしま型はOPS-16レーダーなど護衛艦と同等の装備を一部に搭載し、35mm連装機銃か40mm機関砲を2門と20mm多銃身機銃2門など装備が一定水準あり、特殊部隊運用能力と大型ヘリコプター2機を搭載しております。テロリストの攻撃に備えダメージコントロール能力を設計に盛り込むなど巡視船としては破格の高性能といえるものではあります。
北大路機関:はるな
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