北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

現代日本と巡洋艦(第六回):戦力投射任務とアメリカ沿海域戦闘艦計画

2015-05-24 21:45:25 | 防衛・安全保障
■沿海域戦闘艦の戦力投射任務
今回もやや小型の艦艇に関する話題を引き続き。巡洋艦という事で、10000t級の護衛艦を想像された皆様、今しばらくお待ちいただければ、と。

さてLCS計画と前回のスタンフレックス300について。米海軍はLCS計画の際に、一応スタンフレックス300を参考とし、デンマーク海軍への要員派遣なども行っていましたが、米軍の後方支援力の大きさと基本は航空機の積み替えで対応し、57mm砲を中心とした能力で対応する、との視点でLCS計画を進めたようです。57mm砲についてはスウェーデン海軍のステルスコルベットヴィズヴィ級を参考とし、十分な性能を有する、と判断したようです。

しかし、元々LCSは中東アフリカ地域での対テロ戦争全盛期に仕様は研究されたものですから、LCSが十分な数量そろう頃に米海軍が大きな脅威とした北東アジア地域沿岸部での任務へはLCSの装備、57mm砲と個艦防空システムでは対応できない状況が現出します、特に中東アフリカ地域では潜水艦を運用する国は非常に少なく、短期間で無力化できる程度でした、しかし北東アジア地域は甘くありません。

LCS計画の艦艇は多用途性の面では多少利点はあります、艦内に多目的区画を有しており、陸軍のストライカー装甲車を一個中隊程度収容できますし、航空機運用能力ではMH-60を2機搭載可能、無人機の運用能力も重視されています。57mm砲を搭載していますし、掃海任務へも転用することが出来ます、米海軍は佐世保基地へ掃海艦の後継として配備する計画ですが、実際、哨戒任務を含めれば従来の掃海艦とは比較にならないほどの性能を持ちます。

ただ能力不足は大きいところで、実際問題、LCSとして設計されたフォートワースが先日南シナ海を航行中に中国海軍のフリゲイト塩城より威嚇を受け一定時間追尾されました、塩城は江凱II型フリゲイトで満載排水量4000t、フォートワースよりも一回り大型艦であり、LCSと異なり対水上戦闘と対潜戦闘を含む汎用艦として建造されており、フォートワースは速力とステルス性以外で完全に打撃力が劣っているものでした。

LCSへの不満は、57mm砲と個艦防空システム、それ以外に艦対艦ミサイルを運用する場合には57mm砲モジュールを取り外す必要があり、せめて艦砲とミサイルを同時に運用できる能力が必要、LCSはイージスシステムの延長上にある多機能レーダーを搭載するのだからせめてその探知能力に見合うシースパローミサイルが必要、北東アジア地域には多数の潜水艦脅威が存在するため、対潜ヘリコプターだけの搭載では不十分、など。

巡洋艦の定義からはどんどん艦艇の大きさで異なるものですが、海上自衛隊はコンパクト護衛艦、としてLCSに似た印象の護衛艦を建造する計画がありますが、LCSよりは余裕が盛り込まれるようで、計画が示される度に船体規模には余裕が持たれ、基準排水量は3000t前後、3000t級とも呼ばれもう少し大きくなる余裕を残しています。満載排水量で4000tから4500t程度、これならば無理はありません。

北大路機関:はるな
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コメント (1)
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