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将来航空自衛隊練習機体系への一考察(第八回):南西諸島への経空脅威はSu-27級が基本

2015-06-22 23:27:12 | 防衛・安全保障
■M-346vsSu-27
軽攻撃機としての練習機の限界について、今回も触れてみます。

南西諸島へ脅威対象が展開できる航空機は主として航続距離の大きなSu-27戦闘機及びそのライセンス生産機、少なくとも大陸から南西諸島を戦闘行動半径に含める戦闘機は例外なく中射程の空対空ミサイルを運用する能力を備えている、とみなければなりません。中射程の空対空ミサイルを搭載しないものには爆撃機や攻撃機と、例外がありますが、戦闘機の援護は基本です。

すると、M-346でSu-27に対抗できるのか、という非常に難易度の高い命題がのしかかってくるのです。仮に短射程空対空ミサイルに含まれつつ比較的射程の大きい国産のAAM-5を搭載したとして射程は50kmですが、中射程空対空ミサイルは70kmから100kmの射程を以て攻撃してきますので、完全にアウトレンジ攻撃を受けてしまうでしょう。

もちろん、支援戦闘機の補助、軽攻撃機としての運用をF-15等の戦闘機掩護を前提とした限定したものに限れば、用途は、つまりSu-27へはF-15があたる、という方式で対応するという構図は有り得るかもしれませんが、現用戦闘機は低空飛行する航空機をレーダーにて発見するルックダウン機能が高く、1970年代のように低空飛行で地上からの乱反射に紛れて接近する事は出来ません、特に南西諸島を念頭とした場合は乱反射が限られる海上が舞台となる訳ですから。

基本的にMー346はSu-27に対抗することを考えていません。もちろん、Su-27の行動圏外において例えば非常に設計が古い旧ソ連製Tu-16爆撃機のライセンス生産型などを隣国は主力爆撃機としていますので、巡航ミサイル発射母機として運用される爆撃機へ、こちらを例えば九州北部や本州西部の防空戦闘の支援に限定して用いることならばできるかもしれませんが。

ただ、T-4練習機を念頭に置きますと、爆撃機への対応、仮に空対空ミサイルを搭載できたとして補助戦闘機に使用できるかは難しいところです。例えばT-4練習機はジェット機ですので錯覚しがちですが、巡航速度ではTu-95、所謂ベアと比較し、実は速度で下まわっています。要撃管制の支援下、ミサイルキャリアーとして運用する他なさそう、というところ。

それでもM-346程度の軽攻撃機を防空戦闘へ投入するよりは、性能面ではペトリオットミサイルのような地対空ミサイルのほうが即応性に優れています。巡航ミサイル発射母機として運用されるこれら爆撃機の迎撃は洋上を離れた場所から運用されますので、戦闘空中哨戒を行うなど過酷な運用を強いられます、ここまで過酷な状況は軽攻撃機の任務に本来含まれません。

北大路機関:はるなくらま
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