北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

日比防衛協力の強化を提唱 日本訪問のフィリピンアキノ大統領が声明

2015-06-07 23:57:40 | 国際・政治
■比国内基地提供も示唆
 我が国を訪問したフィリピンのアキノ大統領は5日、日比間の防衛協力強化を希望する声明を発表しました。

 この中でロイター通信が報じたところでは、自衛隊の艦艇や航空機が運用可能な基地をフィリピン側が提供し、南シナ海の警戒監視活動強化への自衛隊参画を強く求める内容が含まれ、自衛隊の航空機や艦艇が補給のためにフィリピン国内の基地利用に関する日比協定締結の用意がある事も併せて示した、とのこと。

 また、フィリピンへP-3C哨戒機など幾つかの重要な防衛装備の提供を求める要望に関する報道がロイター通信により為されています。近年までフィリピンは北東アジア地域と東南アジア地域において防衛政策への関心度の低さが指摘されてきましたが、ここ数年間の防衛力整備への転換は特筆すべきものがあります。

 フィリピンは1990年代に自国領の島嶼を中国軍により不法占拠され、国際係争状態が四半世紀近く継続しているほか、更なる自国島嶼部への中国政府による領土編入宣言を受け、警戒を強めてきました。また、2010年代に入り、この問題への日本への協力を強く求めるようになり、今回の声明もこの延長線上にあるといえるでしょう。

 自衛隊のフィリピン国内での補給などを恒久的に展開するには自衛官の法的位置づけ等を示す日比地位協定等を締結する必要があり、今回アキノ大統領が示した交渉の用意とはこれらを締結する意図があるのでしょう。併せて、南シナ海での中国軍の活動強化と周辺国島嶼部への軍事圧力の増大は、緊張度に留まるところを見せません。

 現行法では、自衛隊のフィリピンへの恒久的転回と南シナ海での哨戒活動を長期的に推進するには限界がありますが、我が国の重要なシーレーンが通るフィリピン周辺海域と東南アジア地域と北東アジア地域を結ぶ南シナ海での海洋自由原則の維持には、大きな関心が集まるところです。

 加えて、アメリカ政府も、この地域での中国軍による軍事活動強化への監視警戒体制構築をヴェトナムやフィリピンにマレーシアやインドネシア及びブルネイなどの政府より求められており、日米のこの海域での連携を模索する動きもあります。ほんの十年前には考えられない緊張度ではありますが、今後の展開を注視したいところです。


北大路機関:はるな
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