■戦力投射と対水上戦闘
航空機格納庫の用途と巡洋艦の任務について、多用途性能と海外装備等の実例を踏まえて。

甲板から埠頭へは、クレーンを用いて車両を一両一両揚陸させる方法もあるのですが、甲板から車両用スロープを設置もしくは臨時に配置してそのまま乗降させる方法もあります。こちらの方が早く、また構造上も複雑なものではありませんので、例えばアメリカの沿域戦闘艦などは3000t前後の船体ながらこの方法で装甲車一個中隊分を輸送可能です。

輸送に重きを置いた水上戦闘艦といいますと限られてくるのですが、このほかにも一例としましてデンマーク海軍のアブサロン級多目的支援艦などは、一見がミサイルフリゲイトのような形状となっているのですが、艦内に多目的区画を有していまして、必要ならば60t級のレオパルド2A6主力戦車もこの方法で艦内から埠頭へ直接輸送できます。

海上自衛隊の場合、アブサロン級の設計は必ずしも参考となりません、アブサロン級は艦対艦ミサイルハープーンを多数装備し、多機能レーダーに支援された僚艦防空能力を有しますが、速力は水上戦闘艦艇の範疇にあって比較的低速で、両用戦艦の域を出るものではありません、加えて艦内に多機能区画を有しており、機雷敷設艦や指揮中枢艦としての能力を持ちます。

一見高性能にみえるのですが、特定任務時には多くの装備が遊兵化する事が否めず、実際には平時にあって多くの装備を取り外した艦としてソマリア沖海賊対処任務などにあたっています。しかしある種趨勢の一つといえるのかもしれませんが、そういいますのも多くの装備を取り外し平時任務へ臨む例としてはほかにカナダ海軍のハリファクス級フリゲイトなどが挙げられます。

カナダ海軍のハリファクス級は、シースパロー短SAMやハープーン艦対艦ミサイルを搭載可能な大型水上戦闘艦ですが、東京晴海を親善訪問した際にはこれらを取り外しており、57mm単装砲と三連装短魚雷発射管にCIWS高性能機関砲のみを搭載していまして、平時の任務、漁業資源管理と哨戒任務にはこれで十分、という視点のもとでの装備のようでした。

利点としまして装備を取り外す場合は、その分の操作要員が不要となりますので、単純な話として乗員を削減できます、これは一人当たりの艦内容積が増大することを意味し、二人部屋を一人で、二段寝台を一人で占有することができるという意味ですので、長期間の行動でもストレスを感じにくく、平時の長期的な行動には寄与する部分でしょう。

しかし欠点として、これは有事の際に対水上戦闘や対潜水艦および航空機の脅威へ対処するべく、急遽この種の装備品を搭載する場合、もちろん装填だけならば補給所にて搭載するだけで事足りるのですが、乗員をどう確保するのか、また、艦艇としての訓練をどのように行い、高い水準の水上戦闘艦を確保するのか、という部分においては全く対応できません。

すると、どうしても搭載する装備を平時と有事に大きく切り替えない方式で艦艇を整備する必要が出てくるのかもしれません。この部分は、平時任務と有事をどう比率として水上戦闘艦にもとめるかに帰結する部分なのですが、現在の海上自衛隊が置かれている状況は、平時任務が相応に重要ではあるのですが、有事の想定も無視できないのです。
北大路機関:はるな くらま
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航空機格納庫の用途と巡洋艦の任務について、多用途性能と海外装備等の実例を踏まえて。

甲板から埠頭へは、クレーンを用いて車両を一両一両揚陸させる方法もあるのですが、甲板から車両用スロープを設置もしくは臨時に配置してそのまま乗降させる方法もあります。こちらの方が早く、また構造上も複雑なものではありませんので、例えばアメリカの沿域戦闘艦などは3000t前後の船体ながらこの方法で装甲車一個中隊分を輸送可能です。

輸送に重きを置いた水上戦闘艦といいますと限られてくるのですが、このほかにも一例としましてデンマーク海軍のアブサロン級多目的支援艦などは、一見がミサイルフリゲイトのような形状となっているのですが、艦内に多目的区画を有していまして、必要ならば60t級のレオパルド2A6主力戦車もこの方法で艦内から埠頭へ直接輸送できます。

海上自衛隊の場合、アブサロン級の設計は必ずしも参考となりません、アブサロン級は艦対艦ミサイルハープーンを多数装備し、多機能レーダーに支援された僚艦防空能力を有しますが、速力は水上戦闘艦艇の範疇にあって比較的低速で、両用戦艦の域を出るものではありません、加えて艦内に多機能区画を有しており、機雷敷設艦や指揮中枢艦としての能力を持ちます。

一見高性能にみえるのですが、特定任務時には多くの装備が遊兵化する事が否めず、実際には平時にあって多くの装備を取り外した艦としてソマリア沖海賊対処任務などにあたっています。しかしある種趨勢の一つといえるのかもしれませんが、そういいますのも多くの装備を取り外し平時任務へ臨む例としてはほかにカナダ海軍のハリファクス級フリゲイトなどが挙げられます。

カナダ海軍のハリファクス級は、シースパロー短SAMやハープーン艦対艦ミサイルを搭載可能な大型水上戦闘艦ですが、東京晴海を親善訪問した際にはこれらを取り外しており、57mm単装砲と三連装短魚雷発射管にCIWS高性能機関砲のみを搭載していまして、平時の任務、漁業資源管理と哨戒任務にはこれで十分、という視点のもとでの装備のようでした。

利点としまして装備を取り外す場合は、その分の操作要員が不要となりますので、単純な話として乗員を削減できます、これは一人当たりの艦内容積が増大することを意味し、二人部屋を一人で、二段寝台を一人で占有することができるという意味ですので、長期間の行動でもストレスを感じにくく、平時の長期的な行動には寄与する部分でしょう。

しかし欠点として、これは有事の際に対水上戦闘や対潜水艦および航空機の脅威へ対処するべく、急遽この種の装備品を搭載する場合、もちろん装填だけならば補給所にて搭載するだけで事足りるのですが、乗員をどう確保するのか、また、艦艇としての訓練をどのように行い、高い水準の水上戦闘艦を確保するのか、という部分においては全く対応できません。

すると、どうしても搭載する装備を平時と有事に大きく切り替えない方式で艦艇を整備する必要が出てくるのかもしれません。この部分は、平時任務と有事をどう比率として水上戦闘艦にもとめるかに帰結する部分なのですが、現在の海上自衛隊が置かれている状況は、平時任務が相応に重要ではあるのですが、有事の想定も無視できないのです。
北大路機関:はるな くらま
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