■第13旅団、広島から北海道へ!
陸上自衛隊は22日より中部方面隊実施の協同転地演習を開始しました。広島など山陽山陰地方から北海道へ部隊が展開します。

師団等協同転地演習として、今年度は広島の海田市に司令部を置く第13旅団が訓練実施部隊となり、陸海空の機動を以て北部方面隊管区へ展開を開始しました。協同転地演習は、有事の際に陸上自衛隊の全国規模の緊急展開を想定した能力を演練するもので、かつては北海道への侵攻へ本土師団を展開させる北方機動演習と呼ばれていたものです。

山下総監が訓練統裁官としてあたり、協同転地演習は第13旅団を基幹として、人員2000名、車両600両、航空機10機が参加し展開され、車両には戦車8両と榴弾砲10門が含まれると共に、航空機にはCH-47,AH-1S,UH-1が参加、方面隊直轄部隊等が参加していることを示します。人員2000名といえば旅団の半分以上、戦車は第13旅団には一個中隊のみとなっていますし特科隊も三個中隊基幹ですので半数以上の規模です。

演習は、22日から来月2日にかけ、陸路機動展開や海上輸送及び空中機動を展開、更に北海道の浜大樹と矢臼別演習場において揚陸と長距離射撃訓練等を実施した上で、復路として来月9日から16日にかけ機動訓練をおこなうもので、長距離機動を演練すると共に併せて北海道の良好な演習場環境を活用するという目的も大きいものでしょう。

中部方面隊管区には中演習場のみで大演習場が無く、特に第13旅団管内には4両の戦車小隊射撃を行う演習場がありませんので、大規模な部隊機動を行うという意味もあります。北海道の矢臼別演習場はFH-70榴弾砲の14km遠距離射撃が可能です、FH-70はBB特殊装薬を運用する事で35km以上の遠距離射撃が可能ですが、例えば大演習場である東富士演習場でも3kmの射撃まで、北海道の演習場環境は本州ではなかなか整備できません。

北方機動演習を協同転地演習と改称した点は文字通り、北海道へ本州九州から展開するという冷戦時代の想定から、現代では九州南西諸島への軍事的圧力の増大という情勢変化を受け、北海道からの部隊展開訓練が実施されます。併せて北海道へ本州九州からの部隊展開を行う背景には、特に機動展開能力を向上させ、本州から北海道に当たる距離を展開させる能力を整備し、西方への有事に対処する機動力を整備する目的もあります。

他方、近年、協同転地演習は中部方面隊と東北方面隊など本州の部隊が主力となっており、九州の西部方面隊隷下部隊は特に北部方面隊からの協同転地演習参加部隊との協同訓練を重視している一方で九州から北海道への師団規模の部隊展開は行われなくなってきました。これは、脅威の西方シフトへ対応し、九州から大部隊を転地させることを避けているようにもみてとれます。

こうして開始された協同転地演習ですが、有事の際に第13旅団も当然第一線へ展開する想定を示したわけです。ただ、ここで忘れてはならないのは本州九州は第1師団と第8師団の一部、合計2個中隊だけが新型の10式戦車で、残りは制式化より40年以上を経た74式戦車を装備しており、緊急展開を想定する以上、相応の装備を広く近代化し普及させる必要はあるでしょう。
北大路機関:はるな くらま
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
陸上自衛隊は22日より中部方面隊実施の協同転地演習を開始しました。広島など山陽山陰地方から北海道へ部隊が展開します。

師団等協同転地演習として、今年度は広島の海田市に司令部を置く第13旅団が訓練実施部隊となり、陸海空の機動を以て北部方面隊管区へ展開を開始しました。協同転地演習は、有事の際に陸上自衛隊の全国規模の緊急展開を想定した能力を演練するもので、かつては北海道への侵攻へ本土師団を展開させる北方機動演習と呼ばれていたものです。

山下総監が訓練統裁官としてあたり、協同転地演習は第13旅団を基幹として、人員2000名、車両600両、航空機10機が参加し展開され、車両には戦車8両と榴弾砲10門が含まれると共に、航空機にはCH-47,AH-1S,UH-1が参加、方面隊直轄部隊等が参加していることを示します。人員2000名といえば旅団の半分以上、戦車は第13旅団には一個中隊のみとなっていますし特科隊も三個中隊基幹ですので半数以上の規模です。

演習は、22日から来月2日にかけ、陸路機動展開や海上輸送及び空中機動を展開、更に北海道の浜大樹と矢臼別演習場において揚陸と長距離射撃訓練等を実施した上で、復路として来月9日から16日にかけ機動訓練をおこなうもので、長距離機動を演練すると共に併せて北海道の良好な演習場環境を活用するという目的も大きいものでしょう。

中部方面隊管区には中演習場のみで大演習場が無く、特に第13旅団管内には4両の戦車小隊射撃を行う演習場がありませんので、大規模な部隊機動を行うという意味もあります。北海道の矢臼別演習場はFH-70榴弾砲の14km遠距離射撃が可能です、FH-70はBB特殊装薬を運用する事で35km以上の遠距離射撃が可能ですが、例えば大演習場である東富士演習場でも3kmの射撃まで、北海道の演習場環境は本州ではなかなか整備できません。

北方機動演習を協同転地演習と改称した点は文字通り、北海道へ本州九州から展開するという冷戦時代の想定から、現代では九州南西諸島への軍事的圧力の増大という情勢変化を受け、北海道からの部隊展開訓練が実施されます。併せて北海道へ本州九州からの部隊展開を行う背景には、特に機動展開能力を向上させ、本州から北海道に当たる距離を展開させる能力を整備し、西方への有事に対処する機動力を整備する目的もあります。

他方、近年、協同転地演習は中部方面隊と東北方面隊など本州の部隊が主力となっており、九州の西部方面隊隷下部隊は特に北部方面隊からの協同転地演習参加部隊との協同訓練を重視している一方で九州から北海道への師団規模の部隊展開は行われなくなってきました。これは、脅威の西方シフトへ対応し、九州から大部隊を転地させることを避けているようにもみてとれます。

こうして開始された協同転地演習ですが、有事の際に第13旅団も当然第一線へ展開する想定を示したわけです。ただ、ここで忘れてはならないのは本州九州は第1師団と第8師団の一部、合計2個中隊だけが新型の10式戦車で、残りは制式化より40年以上を経た74式戦車を装備しており、緊急展開を想定する以上、相応の装備を広く近代化し普及させる必要はあるでしょう。
北大路機関:はるな くらま
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)