北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

現代日本と巡洋艦(第八回):戦力投射能力を左右する格納庫の位置づけ

2015-06-06 22:49:51 | 防衛・安全保障
■航空機格納庫の用途
日本に必要な新しい巡洋艦、前回に引き続き。

イタリア海軍のヘリコプター巡洋艦ヴィットリオヴェネトは、新空母カブールと交代する形で除籍されましたが、基準排水量7500t、満載排水量9500t、艦の排水量は護衛艦こんごう型と同規模ですが、76mm単装砲を8門搭載し、スタンダードミサイルの運用能力を持つ防空艦でした、最大の特色はヘリコプター6機を収容する格納庫を飛行甲板下に配置した事です。

全通飛行甲板という選択肢は、最少の規模としまして基準排水量5000t程度でも実現は可能です、イタリア海軍のサンジョルジョ級揚陸艦は基準排水量5000t、満載排水量7500tと小型ながら全通飛行甲板を採用しました、流石に小型すぎたようで後継艦は一挙に大型化していますが。

すると、この格納庫をどのように用いるのか、という視点が必要となってきます。格納庫は航空機を収容する区画ですが、同時に多目的区画として、邦人保護の場合には救出した邦人を収容する場合に用いることができます。例えば、準備期間があるならば、航空機搭載を1機縮小し、その区画に二層式の居住コンテナを配置することで数十名の収容能力補強も可能でしょう。

一方、全通飛行甲板方式を採用しますと、緊急時には航空機格納庫を全て多目的区画として避難民や保護邦人に開放し、航空機は全て甲板係留するという非常手段を用いることができます、波浪の飛沫と海水の塩分で航空機に多少の影響があることは否めませんが、機材よりも人命優先という非常手段として用いる選択肢の一つにほかなりません。

もちろん、格納庫に収容せずとも最初から多目的区画を配置する、という選択肢はあります。ただ、余裕のある設計は重要なのですが余裕を持たせすぎてしまいますとかえって問題が生じます。幾つか事例があるのですが、旧海軍の高雄型重巡洋艦などは、艦橋に多くの区画の余裕を持たせすぎた為復元力に問題が生じた事例がありました、留意点の大きな一つといえるでしょう。

国際平和維持活動支援、次の視点について。任務に艦艇があげられるのは車両輸送能力です。国際平和維持活動では多数の車両が必要となりますので、重要な要素のひとつ。これは車両甲板を輸送艦のように専用区画として整備せずとも、航空機格納庫を転用することで対応可能です。また、飛行甲板も車両輸送に補助的に用いることは可能です。

飛行甲板に車両を並べると航空機の発着はほぼ不可能となりますが、例えばフランス海軍の航空母艦は湾岸戦争において陸軍車両支援にもちいられていますし、主任務が輸送の場合は意外と多く用いられる手法、平時には一例としましてアメリカ海軍の航空母艦が乗員ごと母港を移籍するさいに乗員用の自動車などを甲板に積載し輸送することもあるほど。

北大路機関:はるな
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コメント (2)
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