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北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

八月八日は“八八艦隊”の日!、いずも型/ひゅうが型護衛艦とF-35B艦上固定翼哨戒機

2016-08-08 23:00:25 | 北大路機関特別企画
■この平和を明日へ紡ぐ
 ヘリコプター搭載護衛艦八隻とイージス艦八隻体制の必要性を示す、八八艦隊の日二〇一六について、毎年恒例の掲載の前に、本日は歴史的な一日となりました。

 天皇陛下は本日、これからの我が国における国体の在り方について、お言葉を賜りました。平和憲法の施政下にあって、これからの社会と伝統について真摯なお気持ちを述べられたもので、その姿を転じることにより、終りを始まりに輪の如く廻すという御心を示されたものでした。故に不動の概念とは観方による価値観が育むものであり、日本国の構造についても、社会と伝統と共に歩むものであり進められるものだ、という響きを観ました。

 八八艦隊の日、北大路機関では八月八日を八八艦隊の日と位置づけ、その必要性を毎年提示しています。八八艦隊、海上自衛隊では八八艦隊といえば護衛隊群を護衛艦八隻とヘリコプター八機からなる編成として独立した有力な海上防衛部隊を整備する、という防衛力整備が1981年より本格化しました。海上自衛隊は1974年に新編された第四護衛隊群を以て護衛艦隊を四個護衛隊群基幹としており、八八艦隊が四個揃う事で、実任務・高練度・准高練度・重整備、とローテーションを組み即応体制を維持することができました。

 ヘリコプター搭載護衛艦を増強し、F-35B戦闘機を艦載機に加える、ヘリコプター搭載護衛艦八隻にアメリカの航空母艦一隻分の戦闘機を分散配備し海上防衛を確たるものとする。八八艦隊の日として掲載を始めた日から考えますと、特に中国海軍の航空母艦国産建造が大車輪で進む中、その必要性は年々確かに増大している実情があります。特に海洋交通自由の原則に依存する我が国はシーレーン防衛という防衛上の課題があり、単純に専守防衛といっても日本列島に立てこもるだけではその国家運営を維持できません。

 海上自衛隊はヘリコプター搭載護衛艦、くらま、ひゅうが、いせ、いずも、を運用しており、来年には護衛艦くらま、が新護衛艦かが、へ後退する事となっています。ひゅうが、いせ、いずも、かが、は全通飛行甲板型護衛艦であり、多数の航空機を同時運用する能力を有しています。ただ、海上自衛隊は対潜掃討任務を主軸とした運用をヘリコプター搭載護衛艦へ想定しており、全通飛行甲板型護衛艦の主任務は同時多数の哨戒ヘリコプターを運用するという主眼に依拠しています。

 このヘリコプター搭載護衛艦を八隻まで増勢し、護衛隊群を構成する八個の護衛隊全てにヘリコプター搭載護衛艦を配備する必要がある、八八艦隊の日はこの視点を毎年示すものです。ヘリコプター搭載護衛艦を八隻、これは現在の護衛艦隊を構成する基幹部隊としての四個護衛隊群、この護衛隊群編成が二個護衛隊を基幹として、この二個護衛隊は、ヘリコプター搭載護衛艦を中枢とした対潜掃討部隊、イージス艦を中心とする防空中枢部隊から編制されています、イージス艦は弾道ミサイル防衛にも資する部隊です。

 護衛隊を全通飛行甲板型ヘリコプター搭載護衛艦、イージスシステム搭載ミサイル護衛艦、汎用護衛艦、汎用護衛艦、との編成に統合し、各護衛隊群にはヘリコプター搭載護衛艦2隻とミサイル護衛艦2隻に汎用護衛艦4隻を基幹とし、全通飛行甲板型ヘリコプター搭載護衛艦を主軸とした海上防衛力整備を行う提案で、全通飛行甲板型ヘリコプター搭載護衛艦は、その航空機運能力の大きさを活かし、SH-60J/K哨戒ヘリコプター、MCH-101掃海輸送ヘリコプターに加え、新たな装備としてF-35B戦闘機を搭載し航空打撃戦へ、また導入が開始されるMV-22可動翼機を搭載し戦力投射任務へ、運用する、というもの。

 八八艦隊、このはじまりは、旧帝国海軍の八八艦隊、戦艦八隻と巡洋戦艦八隻、強力な水上打撃部隊を海上に建設する海軍戦略に基づくものでした。戦艦は打撃力と防御力及び機動力の面で当時あらゆる兵器体系の頂点に立ち、今日の戦略核兵器に匹敵する主力兵器であり、大艦巨砲こそが究極の海上権力行使手段であった訳です。海軍は、戦艦長門、戦艦陸奥を建造、続いて戦艦天城等を整備し、国家予算の限界点について分水嶺寸前の水準で整備を進めていた訳です。

 旧海軍の八八艦隊建造ですが、しかし、国家の経済力から考えた場合は工業力と通商能力を強化し、その枠内での海洋交通と海洋自由原則の堅持を手段として相乗し整備させるべきでしたが、手段と目的の乖離により、その負担は経済力の限界を超える危惧があった訳です。同時期、世界では第一次世界大戦後の軍縮機運の高まりと共にワシントン海軍軍縮条約が各国間で合意に至り、長門、陸奥、のみが完成、しかしその後の主力艦建造は条約期間内停止されることとなりました。

 巨大戦艦群の建造、そのまま継続すれば、軍拡競争となり結果的に日米間の緊張は経済力差を突き付けられ、結果的に世界大戦を回避できた可能性、そのまま軍事力の均衡と不均衡への転換を契機として早い時期に大戦勃発に至った可能性、考えさせられる命題ですが、経済力の限界を超えていた可能性がある事は確かです。一方、今日の我が国経済力からは、新しい八八艦隊建造について、現在ではGDP1%枠内の防衛力を整備しており、NATO加盟国などがGDP2.8%を国防費に充てるよう求めている視点からは、まだ、GDP1%には長期的な余裕があるとも言えるでしょう。

 F-35B戦闘機、安易には装備できない航空機ですが、第五世代戦闘機としてステルス性と多用途戦闘機としての能力を有し、全通飛行甲板型ヘリコプター搭載護衛艦からの短距離および垂直離着陸が可能です。長大化する対艦ミサイルの射程に対し、ステルス機の複合光学機器による情報優位の獲得、敵戦闘機の平時の威嚇に対する実弾射撃以外の対処、陸上航空基地の補完的位置づけ、艦載機としてのF-35Bの能力は従来の装備とは比較にならないほど大きい物です。

 ひゅうが型であれば、F-35B戦闘機5機とSH-60J/K哨戒ヘリコプター3機、いずも型であればF-35B戦闘機7機とSH-60J/K哨戒ヘリコプター4機、各護衛隊群に19000tと27000tの護衛艦を各1隻配備し、護衛隊群ではF-35B戦闘機12機の航空隊を隷下に置く、これで四個護衛隊群では48機のF-35B戦闘機を運用する事となり、規模としてはアメリカ海軍の一個空母航空団に匹敵する規模となります。もちろん、予備機を含めれば70機程度のF-35Bを調達する必要があり、防衛費を大きく圧迫し、増額を真剣に考えなければなりません。

 F-35B,厚木航空基地と岩国航空基地あたりに各2個航空隊を基幹とする航空群を置き運用する事となるでしょうが、教育航空集団隷下にジェット練習機を配備し航空自衛隊と同規模の戦闘機要員教育体制を構築する、航空自衛隊と統合航空要員教育体制を組み併せて艦載固定翼哨戒機要員として海上自衛隊による教育を実施する、米海軍への留学体制を構築する、選択肢はありますが、その労力は非常に大きなものがある、一方、この困難を実現させなければならない規模の脅威が具現化しつつある、忘れてはならないでしょう。

北大路機関:はるな くらま
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コメント (7)
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