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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

新しい不安定の弧【前篇】 欧州とアジアの境界点、トルコ騒擾の長期化とクリミア情勢の蠢動

2016-08-18 21:25:34 | 国際・政治
■新しい不安定の弧の広がり
中東から中央アジアを経て北東アジアに掛け、“不安定の弧”が広がっている、2001年に時のブッシュ米大統領が地域紛争多発地域と潜在的紛争地域の広域化へ警鐘を鳴らせたものです。しかし現在、新しい不安定の弧、というものが広がっています。そこで短期集中としてこの問題を考えてみましょう。

新しい不安定の弧は、クリミア半島、トルコ、中東、北アフリカ、中央アフリカ、へと分布します。トルコクーデター危機を受けての大規模な粛清は、世界からの懸念を集めていますが、トルコ政府は子の粛清への圧力を加えるEU欧州連合に対し、EUとの難民協定を破棄する示唆を行っています。アフリカと中東からのEUへの難民をトルコ政府は管理する見返りに経済協力の強化や、EU加盟交渉での繁栄を要求していますが、クーデター未遂後の粛清や死刑制度再開などの示唆はEUとの関係を難しいものとしていました。

トルコ政府は難民管理放棄を一つの交渉材料とする示唆を行い、今後も溝は深まりそうです。トルコを突き放せばロシアと接近する可能性があり、問題は単純ではありません。トルコでは核兵器の問題もあります、トルコの核兵器と云えば、その撤去が課題となった1962年のキューバ危機を思い出させるものですが、トルコ国内のインジルリク空軍基地、アメリカ空軍が展開しますが、核兵器が事前配備されている可能性が高いとのこと。

トルコクーデター危機、未遂に終わりましたがトルコ国内で進むクーデター関係者とその知人や団体に関係した人物、人口の一割以上に対する粛清が新たな危機を及ぼしていまして、インジルリク空軍基地トルコ部隊司令官が逮捕されたことで警備が手薄となっておりここらテロリストに襲撃された場合、インジルリク空軍基地内の米軍核兵器が危険に曝されるのではないか、というものです、粛清による社会不安の長期化は、こうした新しい問題を出してしまいました。トルコの弱体化、現時点で既に杞憂ではありません。

黒海沿岸、トルコ北方でも危機が再燃しています。クリミア半島、ウクライナ領からロシアにより事実上割譲されましたが、この情勢が最近再度緊迫化していまして、ムーディーズが格付けに影響があるとの見解を示しています、市場は敏感に反応しました。今月に入り、ロシア法施行機関職員とウクライナ法執行機関か陸軍部隊との銃撃戦が発生したとの報道があり、この地域はいまだ半島とウクライナ本国との間で緊張状態にある事を世界に示しましたが、市場の反応は、報じられている以上に懸念要素がある事を示しました。

クリミア情勢の主導権を握るのはロシアです。このロシアは、建国以来不凍港の確保を政策の重点としてきたことは世界史に記されているところですが、現代では中東地域への航路維持、そしてもう一つ、冷戦初期からアメリカの同盟国であり、モスクワへの匕首を突き付けたトルコの米軍基地を排する機会へ繋げようとする視点、若しくは、トルコクーデターを契機として、欧米が距離を置こうとする情勢に乗じて自陣営への編入、影響力の拡大を理想として接近する可能性はあるでしょう。

北大路機関:はるな くらま
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