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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

航空防衛作戦部隊論(第四一回):航空防衛力、協力企業との有事協定と戦時入札簡略化

2016-08-28 22:25:25 | 防衛・安全保障
■基地機能復旧という継戦能力
 航空自衛隊の航空基地、要撃飛行隊の拠点飛行場ですが、現実的に現状のまま有事を迎える事態となった場合にはどのように対応すべきなのか、という視点について。

 防衛予算が潤沢に確保されているならば、先に理想の航空基地として予備施設を多数持つ構造に帰結しますし、現状の敷地では基地機能を地下化し施設を強化する事も可能ですが、用地確保から施設建設まで、航空自衛隊は施設関連予算に限界がある事は否定できません。突貫工事により、航空掩体や地下化工事などを実施し、現状の基地から抗堪化を迅速に進める施策を考える必要があります。

 具体的には航空格納庫から、臨時掩体を構築し誘導路付近に航空機を離隔する、臨時掩体にはライナープレート等野戦築城器材と盛り土などを適用し大型爆弾の直撃へは耐えられないものの、破片被害から航空機を防護する応急的措置の実施、応急施設は衛星などの事前情報収集で配置を暴露しないという利点があります。更に、指揮所の地下施設化と予備施設、通信機能の予備など、真剣に検討すべきです。

 また、基地防空資材等も、例えばスティンガー携帯式地対空ミサイルなど、人員は露出し操作する事となりますが、個人掩体を構築すれば航空攻撃からの生存性が高まり、掩蓋施設を構築し冷房その他休息施設を付与すれば防衛戦闘が長期化した杯でも継続的な高度な基地防空能力の紆余が可能でしょう。このほか、陸上自衛隊の砲煙施設部隊坑道中隊が装備する坑道掘削装置を使用すれば、例えば那覇基地や新田原基地のように丘陵地帯に隣接した飛行場に対し、戦闘機を格納可能な坑道を急速構築可能です。

 ただ、法的措置からこの施策を見ますと、基地機能復旧という継戦能力の方が重要で、有事の際の防衛調達と業者選定の迅速化を明確に示す法整備を事前に行う事で、有事の際に超法規的措置を採る以外選択肢を喪失する余地を予め払拭し、超法規措置に頼らない平時からの対策の構築が可能です。この措置とは具体的には有事の際の民間建設業者の業務契約における競争入札方式の簡略化です。この当たり、平時には見落とされがちであり、有事の際にも平時の手続きを維持できるとの錯覚が残る限り、解決できない。

 具体的には自衛隊には道路舗装に関する装備、坑道掘削に関する装備、等は陸上自衛隊が有していますし、航空自衛隊には施設補修能力や滑走路補修能力を持ちます、ただ、破壊されない基地よりも破壊されても即座に復旧できる体制の方が重要で、現代航空戦闘は長期化し、且つ基地攻撃手段も巡航ミサイルや戦域弾道弾など従来の戦闘爆撃機や長距離爆撃機の他に多様化していますので、滑走路補修機材などの不足は当然長期的に払底する可能性を考慮しなければなりません。

 すると、どうしても考えなければならないのは民間業者の協力を、即日という悠長な話ではなく即時決断し工事を依頼するというものです。応急的には自隊補修を実施するのでしょうが、民間の能力は大きい。また、この工事は即時の決断を求めるという事ですから競争入札を行う事は出来ませんし、平時から防衛施設をどの位置へ配置するかについてを明示できない為防衛出動命令に先立って工事の契約を行う事も出来ません。

 ただ、自衛隊の装備体系や人的資材と基地施設等を見ますと、恰も自衛隊単独でその防衛任務を遂行できるのではないか、という視点に陥り、結果的に建設能力や輸送能力と施設建設能力では自衛隊の総力と日本の民間企業が有する総力とでは、どちらが大きいのか、という問題を前に視野狭窄に陥ってしまう、というものがあります。自衛隊の大きさは、民生インフラなどが途絶した場合にあっても自己完結能力が高い、という部分に収斂されていますので、協力を民間企業から得られる場合、こちらに依存しなければ、独力で実施しようとすれば際限なく広がってしまう。

 基地機能復旧という継戦能力、一刻の猶予もありませんが手続きを簡略化しすぎると、これを現行法のまま実施しますと談合等とした批判や強制徴用という批判も免れません、が、民間業者の協力を前提とした長期的な基地機能維持を前提とする場合と、長期的に基地機能を維持するために予備航空自衛官部隊を増強し滑走路の本格復旧から誘導路建設と基地施設補修まで全て自衛隊だけで実施する施策を構築するには、文字通り巨額の予算を必要とします。

 そもそも本論の視座が冒頭に示した通り予算面での限界を以て対応策を呈示しているのですから、民間業者との協力を模索しているものであり、これを自前で行うよう予算で施設機材をそろえるとなると本末転倒です。特に要撃飛行隊基地は、千歳、三沢、百里、小松、築城、新田原、那覇、共に周辺に民間建設業者の協力を得られる市街地に隣接しており、法整備を行い有事の際、急速基地機能強化の施策を執る事は必要でしょう。

北大路機関:はるな くらま
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