■自衛隊の爆撃能力
航空自衛隊の対地攻撃能力について。映画シンゴジラ等で自衛隊の爆撃能力への関心が高まっているとのことで、一つ、短期集中連載にて、航空自衛隊の爆撃能力、というものを紹介してみる事としました。対地攻撃、ミサイルやロケット弾等が挙げられますが今回は爆弾について。
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500ポンド爆弾Mk-82、750ポンド爆弾JM-117、航空自衛隊の空対地攻撃能力は長らくこの二つの爆弾により構成されていました。落とすとそのまま呪力に導かれ地表に激突し爆発する、爆弾と云えばこれでしょう。元々は専守防衛、国土戦を展開するため精密誘導爆弾は必要ないとの政治的要請、勿論、国内で使用するからこそ精密誘導爆弾は重要で実際は民有地や民間試算と同胞の人命へ付随被害を及ぼさないよう命中精度を極限まで高めるべきなのですが、政治の過度な周辺国への配慮により自制されてきました、最近までは。
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精密誘導爆弾、従来の爆弾は自由落下に任せるだけですので、適当に落とすと大変です、ゆえに戦闘機に搭載する爆撃コンピュータ等が目標へ投射するタイミング等を計算し、命中精度を高める、という能力が合った程度でしたが、周辺国の不安をあおる、として1970年代に大量導入されたF-4戦闘機などはわざわざそのコンピュータを取り外し生産した程です。さて、精密誘導爆弾、いろいろあります、2000ポンドGPS誘導爆弾GBU-31,滑空精密誘導爆弾GBU-39,世界で最も信頼されるレーザー誘導爆弾GBU-12ペイブウェイ、精密誘導爆弾の代名詞的な強力装備ですが、数年前までは、自衛隊にもこの種の精密誘導爆弾が必要だ、不可欠だ、と識者により指摘され、防衛当局者も重々承知していた装備ですが、実は遂に昨年と今年に入り導入されました。
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精密誘導爆弾はそれほど最近のものではありません、が、自衛隊は導入まで時間がかかりました。何故今日配備されたのか。自衛隊は近年の島嶼部防衛、弾道ミサイル策源地攻撃等、顕在化する脅威に対処するべく2015年から一挙に導入されています。これまでは、対地攻撃用にはGPS誘導爆弾GBU-38JDAMを今世紀に入り導入され、続いて補助用にレーザー誘導できるGBU-54JDAMが追加された程度ですので、非常に大きく進歩したといえるでしょう。レーザー誘導爆弾、非常に最新装備に思われるものですが、精密誘導爆弾自体は第二次世界大戦中からリモコン式誘導爆弾が開発、ヴェトナム戦争の頃には重要目標攻撃へ利用されていまして、決して古いものではありません。
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GCS-1精密誘導装置、20世紀末までに自衛隊に装備されていたものはこれくらいです。航空自衛隊では主として対艦攻撃が重視され、91式爆弾用誘導装置GCS-1が開発されました。これは艦船の赤外線、より端的にはエンジン排熱等を感知し誘導する爆弾です。北朝鮮ミサイル実験の際には、航空自衛隊の精密誘導爆弾として紹介される事もありましたが、対地攻撃を行うにはミサイル発射装置の排熱を感知する必要があり、近くに他の熱源、別の車両や炊事場などがあれば精密に誘導できない、対艦攻撃用です、が、対艦攻撃用の場合には確実に機関部を照準でき、且つ、爆弾本体を直撃させるため、ミサイルよりも貫徹力が大きい。
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JDAM,航空自衛隊の対地攻撃能力に大きな変革をもたらしたのは2006年度予算において爆弾用精密誘導装置としてJDAMが調達されたことです。GPS電波を利用し地上目標に対する精密攻撃を行う装備で、通常の爆弾にGPS受信装置と誘導翼装置を装着、目標のGPS座標を入力する事でその位置へ精密に誘導され命中させることが出来ます。GPS座標は、目標の位置などを地図上で照合させる方式、第一線部隊からの目標GPS座標通知などが一般的ですが、戦闘機に搭載される照準装置からも目標座標を標定する事が可能です。照準器は、スナイパーシステムの場合、ヘルメットに連動しており、操縦士が目標に視線を送るだけで自動照準、センサーが追尾を開始します、操縦士は瞬時に攻撃する事も、次の目標を捜索し、複数の目標を同時攻撃する事も、可能です。JDAMは基本的に目標の1m圏内に命中する、とのこと。
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F-2支援戦闘機から運用する場合、例えば従来の近接航空支援や航空阻止戦闘を展開する場合、命中精度を高めるためには低空の極力目標に近い位置まで降下し、爆弾を投下する必要がありました。理由は簡単で敵に近い場所から落とした方が良く当たるからです、外せば近接航空支援では味方の部隊に近接して目標を攻撃しますので味方に当たる誤爆の危険が出てきますし、航空阻止任務では目標をそれるならば周辺地域、住宅や橋梁と道路や勿論人命にも危険が生じます、しかし、JDAMですと、例えば成層圏からでも投下できる。
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高高度から投射し高い命中精度を両立できるという利点はもう一つ、敵の防空部隊により迎撃される可能性を低下させることが可能となる点でしょう。近接航空支援へ低空へ降下する際には、装甲車両などに標準装備されている重機関銃、各中隊に配備されている部隊自衛用の肩に担ぐミサイル即ち個人携帯地対空誘導弾など強烈な対空砲火に突っ込まなければなりません、概ね高度3000m以下まで下りる際にはこの脅威が無視できません、しかし、JDAMを搭載する場合にはその高度まで下りる必要はありません。防空部隊にはこれよりも長射程の対空ミサイルは多数ありますが、管制へレーダーを使う必要があり、個のレーダー波を逆探知し攻撃する防空制圧部隊により対処は可能です。しかし、機関銃や個人携帯地対空誘導弾は使われるまで存在が暴露しない為、脅威度が高い、といえるでしょう。
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航空自衛隊はこのJDAMを入り口に、レーザーJDAMを導入、敵に近づくことなく、しかし味方や国民の生命財産を誤爆の危険に曝すことなく任務を遂行する精密誘導爆撃能力の世界へと端緒につきました。自衛隊は2000ポンドGPS誘導爆弾GBU-31,滑空精密誘導爆弾GBU-39,世界で最も信頼されるレーザー誘導爆弾GBU-12ペイブウェイ、導入装備を順次強化し、照準装置も国産、続いてアメリカのスナイパーシステムなど先進化させ、今日に至ります。
北大路機関:はるな くらま
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航空自衛隊の対地攻撃能力について。映画シンゴジラ等で自衛隊の爆撃能力への関心が高まっているとのことで、一つ、短期集中連載にて、航空自衛隊の爆撃能力、というものを紹介してみる事としました。対地攻撃、ミサイルやロケット弾等が挙げられますが今回は爆弾について。
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500ポンド爆弾Mk-82、750ポンド爆弾JM-117、航空自衛隊の空対地攻撃能力は長らくこの二つの爆弾により構成されていました。落とすとそのまま呪力に導かれ地表に激突し爆発する、爆弾と云えばこれでしょう。元々は専守防衛、国土戦を展開するため精密誘導爆弾は必要ないとの政治的要請、勿論、国内で使用するからこそ精密誘導爆弾は重要で実際は民有地や民間試算と同胞の人命へ付随被害を及ぼさないよう命中精度を極限まで高めるべきなのですが、政治の過度な周辺国への配慮により自制されてきました、最近までは。
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精密誘導爆弾、従来の爆弾は自由落下に任せるだけですので、適当に落とすと大変です、ゆえに戦闘機に搭載する爆撃コンピュータ等が目標へ投射するタイミング等を計算し、命中精度を高める、という能力が合った程度でしたが、周辺国の不安をあおる、として1970年代に大量導入されたF-4戦闘機などはわざわざそのコンピュータを取り外し生産した程です。さて、精密誘導爆弾、いろいろあります、2000ポンドGPS誘導爆弾GBU-31,滑空精密誘導爆弾GBU-39,世界で最も信頼されるレーザー誘導爆弾GBU-12ペイブウェイ、精密誘導爆弾の代名詞的な強力装備ですが、数年前までは、自衛隊にもこの種の精密誘導爆弾が必要だ、不可欠だ、と識者により指摘され、防衛当局者も重々承知していた装備ですが、実は遂に昨年と今年に入り導入されました。
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精密誘導爆弾はそれほど最近のものではありません、が、自衛隊は導入まで時間がかかりました。何故今日配備されたのか。自衛隊は近年の島嶼部防衛、弾道ミサイル策源地攻撃等、顕在化する脅威に対処するべく2015年から一挙に導入されています。これまでは、対地攻撃用にはGPS誘導爆弾GBU-38JDAMを今世紀に入り導入され、続いて補助用にレーザー誘導できるGBU-54JDAMが追加された程度ですので、非常に大きく進歩したといえるでしょう。レーザー誘導爆弾、非常に最新装備に思われるものですが、精密誘導爆弾自体は第二次世界大戦中からリモコン式誘導爆弾が開発、ヴェトナム戦争の頃には重要目標攻撃へ利用されていまして、決して古いものではありません。
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GCS-1精密誘導装置、20世紀末までに自衛隊に装備されていたものはこれくらいです。航空自衛隊では主として対艦攻撃が重視され、91式爆弾用誘導装置GCS-1が開発されました。これは艦船の赤外線、より端的にはエンジン排熱等を感知し誘導する爆弾です。北朝鮮ミサイル実験の際には、航空自衛隊の精密誘導爆弾として紹介される事もありましたが、対地攻撃を行うにはミサイル発射装置の排熱を感知する必要があり、近くに他の熱源、別の車両や炊事場などがあれば精密に誘導できない、対艦攻撃用です、が、対艦攻撃用の場合には確実に機関部を照準でき、且つ、爆弾本体を直撃させるため、ミサイルよりも貫徹力が大きい。
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JDAM,航空自衛隊の対地攻撃能力に大きな変革をもたらしたのは2006年度予算において爆弾用精密誘導装置としてJDAMが調達されたことです。GPS電波を利用し地上目標に対する精密攻撃を行う装備で、通常の爆弾にGPS受信装置と誘導翼装置を装着、目標のGPS座標を入力する事でその位置へ精密に誘導され命中させることが出来ます。GPS座標は、目標の位置などを地図上で照合させる方式、第一線部隊からの目標GPS座標通知などが一般的ですが、戦闘機に搭載される照準装置からも目標座標を標定する事が可能です。照準器は、スナイパーシステムの場合、ヘルメットに連動しており、操縦士が目標に視線を送るだけで自動照準、センサーが追尾を開始します、操縦士は瞬時に攻撃する事も、次の目標を捜索し、複数の目標を同時攻撃する事も、可能です。JDAMは基本的に目標の1m圏内に命中する、とのこと。
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F-2支援戦闘機から運用する場合、例えば従来の近接航空支援や航空阻止戦闘を展開する場合、命中精度を高めるためには低空の極力目標に近い位置まで降下し、爆弾を投下する必要がありました。理由は簡単で敵に近い場所から落とした方が良く当たるからです、外せば近接航空支援では味方の部隊に近接して目標を攻撃しますので味方に当たる誤爆の危険が出てきますし、航空阻止任務では目標をそれるならば周辺地域、住宅や橋梁と道路や勿論人命にも危険が生じます、しかし、JDAMですと、例えば成層圏からでも投下できる。
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高高度から投射し高い命中精度を両立できるという利点はもう一つ、敵の防空部隊により迎撃される可能性を低下させることが可能となる点でしょう。近接航空支援へ低空へ降下する際には、装甲車両などに標準装備されている重機関銃、各中隊に配備されている部隊自衛用の肩に担ぐミサイル即ち個人携帯地対空誘導弾など強烈な対空砲火に突っ込まなければなりません、概ね高度3000m以下まで下りる際にはこの脅威が無視できません、しかし、JDAMを搭載する場合にはその高度まで下りる必要はありません。防空部隊にはこれよりも長射程の対空ミサイルは多数ありますが、管制へレーダーを使う必要があり、個のレーダー波を逆探知し攻撃する防空制圧部隊により対処は可能です。しかし、機関銃や個人携帯地対空誘導弾は使われるまで存在が暴露しない為、脅威度が高い、といえるでしょう。
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航空自衛隊はこのJDAMを入り口に、レーザーJDAMを導入、敵に近づくことなく、しかし味方や国民の生命財産を誤爆の危険に曝すことなく任務を遂行する精密誘導爆撃能力の世界へと端緒につきました。自衛隊は2000ポンドGPS誘導爆弾GBU-31,滑空精密誘導爆弾GBU-39,世界で最も信頼されるレーザー誘導爆弾GBU-12ペイブウェイ、導入装備を順次強化し、照準装置も国産、続いてアメリカのスナイパーシステムなど先進化させ、今日に至ります。
北大路機関:はるな くらま
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